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  • ロイター
  • 2021年05月08日 09:25 (配信日時 05月08日 09:21)

アングル:乾燥化進むブラジル、「貯水の森」再生目指す女性たち


Fabio Zuker

[サンパウロ 23日 トムソン・ロイター財団] - テレビ局の撮影クルーがブラジル北東部にあるデニス・カルドゾさん(31)の農場を訪れたとき、カルドゾさんと彼女の祖父は、ウンブ(ブラジル・プラム)の木の節くれ立った根を切り開き、干ばつの時期でもどれだけの水がそこに蓄えられているか見せようとした。

4年前のその日、「カーティンガ」の半乾燥気候のもとでも、ウンブの樹はその「貯水力」のお陰で確実に生き延びているはずだった。「カーティンガ」はブラジル領土の10%以上を占める生物群系を指す言葉だ。

だが、根を切り開いてみた2人はショックを受けた。

「中まで完全に乾いていた」

バヒア州の小都市ウアウアの自宅で電話による取材に応じたカルドゾさんはそう語った。彼女も祖父も、そのような状態を見たことはなかった。

「恐怖を覚えた」と、カルドゾさんは話した。

カルドゾさんは、「コーペルクック」という協同組合に所属している。ウンブなど固有種の植物を栽培し、その果実を販売する組織だ。

根の内側が干からびているのを目にしたカルドゾさんは、当時その地方で生じていた干ばつと気温上昇が原因だろうと考え、自身の協同組合でも農業の方法を考え直さなければならないと悟った。新たな目標は、森林再生だ。

「そこから、計画作りが始まった。持続可能性について、以前よりもっと考えるようになった。何しろ、これから何が起きるか分からないから」と、カルドゾさん。

現在この地域には、樹木の数を増やしつつ地元住民の生計手段を提供することをめざす女性主導の協同組合が複数ある。コーペルクックもその1つだ。

気候学者のフランシス・ラセルダ氏によれば、気温上昇と砂漠の拡大はウアウアに限った話ではないという。

カーティンガ全体にすでに変化が生じており、そのペースは、モデルが示唆するよりもはるかに急速だ、とラセルダ氏は言う。同氏は州政府が運営するペルナブコ農業研究所の研究者だ。

国立気候変動科学技術研究所のメンバーでもあるラセルダ氏は、「過去の大干ばつは3年、あるいは3年半続いた。だがいまの干ばつは7年も継続中だ」と言う。

アラゴアス連邦大学が2019年に行った調査によれば、バイア州に限っても、面積の16%が砂漠化の影響を受けている。

ブラジル北東部の半乾燥地帯における気候変動を研究しているラセルダ氏は、降水量が急減するとともに、干ばつの日数が増え、最高気温が上昇している状況を目にしている。

場所によっては、降水パターンもいっそう不安定になりつつある、と同氏は言う。以前ならば年間3カ月は雨季があった地域が、1年中雨が降らなかったり、あるいは短期間に激しい豪雨が集中することがあるという。

ラセルダ氏によれば、カーティンガが広がるセルタオ・ド・アラリペ地域では、農業と畜産の拡大により森林が急速に失われており、過去50年間に摂氏5度近い気温上昇が見られる。

この地域の1日の蒸発量は平均33ミリだった。「だが今では、少なくともその2倍だと言える」とラセルダ氏。

「半乾燥地帯から乾燥地帯になりつつある。ここで農業ができなくなる日も迫っている」

<森の果実>

ラセルダ氏は、水を蓄えるために貯水池を作るといった従来の工学的な解決策には懐疑的で、あっというまに蒸発してしまうだろうと見ている。

ラセルダ氏は、森林再生こそ解決策だと言う。それも、同氏が「水の工場」と呼ぶウンブなど現地の固有種が中心だ。

ウンブの木は、地下に水を蓄えることにより、乾燥化と土壌浸蝕の防止に役立つ、とラセルダ氏は説明する。

これを知ったコーペルクックをはじめとする国内北東地域の協同組合は、果実生産と森林再生を結びつけるようになった。

カルドゾさんの説明によれば、2004年に設立されたコーペルクックのメンバーは、互いに境界を接する裏庭でウンブやその他の果樹を有機栽培している。それぞれ1-2ヘクタールの面積を有する10カ所以上の小規模な共同農場が生まれている。

2019年からは、「アグロカーティンガ」と名付けて、農場の脇や中間に植林を行う独自のやり方での混農林業の実験を進めている。

カルドゾさんによれば、コーペルクックでは果樹を植えるだけでなく、カーティンガ固有種のサボテンや、アンジコと呼ばれる樹を織り交ぜているという。

カルドゾさんの試算によれば、森林再生地域ではすでにパッションフルーツ、グアバ、カシューナッツ、マンゴーといった食用作物が年間約10トンも生産されているという。これに加えて、果肉をそのまま、あるいはジャムにして食べるウンブが最大40トンだ。

バイア州ピンタダスの「コープセルタオ」は、環境シンクタンクの世界資源研究所の支援を得つつ活動している協同組合だ。組合員のギルレーン・アルメイダオリベイラさんによれば、コープセルタオでは年間30トンのウンブを栽培・加工しているという。

アルメイダオリベイラさんは、10年前のブラジルではウンブの木は何の価値も認められず、牧草地にするために日常的に伐採されていたと語る。

「果実が商品になる、つまり市場価値があると分かって、森林再生への関心が高まった」と彼女は言う。

「今では、ウンブが再び生えてきてもそのままにしている」と彼女は言い、かつて牧畜のために開墾された土地が今や「ほとんど森林のようになっている」場所もある、と付け加えた。

<新型コロナ禍>

地域的なグループによる取組みがあるとはいえ、ブラジル全土で急速に進む森林破壊を反映して、カーティンガでも森林の減少は続いている。

ブラジル気候観測所の取組みである「マップ・バイオマス」のデータによれば、2019年の時点でカーティンガの58%は自然林に覆われているが、その比率は15年前に比べて2%低下している。

今年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、カーティンガにおける森林再生の取組みは深刻な影響を受けた。カルドゾさんの試算では、コーペルクックの収入はロックダウンに伴う制限により70%低下した。

アルメイダオリベイラさんによれば、コープセルタオの場合は学校の休校による影響が大きかったという。コープセルタオの主要顧客の1つが政府だからだ。

「2020年には、これまで販売していた量の10%も売れなかった」とアルメイダオリベイラさん。

それでも、女性たちは取組みを続けていくつもりだ。

カルドゾさんの家族のなかで、大学まで進んだのは彼女が初めてだ。今では行政学の学位を持っているが、学費はウンブなどの固有種の栽培で得た収入で賄った。

協同組合は「私たち女性の生活を変えつつある」と彼女は言う。別の利点もあると強調する。

1人の農業従事者として彼女は、「もう夫や息子が稼いでくるのを待っている必要はない。この仕事から得られる金銭収入は、女性の自己肯定感を高めてくれる。今の私は、自分のものだと言えるものを持っている」と話した。

(翻訳:エァクレーレン)

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