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高齢者の孤独死を防ぐ「多世代シェアハウス」。30年夫婦で住んでみたドイツ元州首相の感想

大阪市内における2020年の孤独死(死後4日以上経って発見された死亡)は年間1,314人にも上り、増加傾向にある。その多くが65歳以上だ*。しかし、「高齢者の孤独」という深刻な社会問題に悩むのは日本だけではない。

上記グラフは2017年の調査結果。高齢者、特に男性の孤独死が多い。

*大阪府/大阪市内の孤独死の現状(大阪府健康医療部の監察医事務所)http://www.pref.osaka.lg.jp/kansatsui/kodokushi/index.html

ドイツ・ブレーメン州の元州首相ヘニング・シェルフが実践してきた取り組みを紹介しよう。彼は、妻のルイーズと8人の友人たちと共に、30年前からコミューン(生活共同体)を築いて、生活しているのだ。

ヘニング・シェルフ
1938年生まれ。法学博士。25歳でドイツ社会民主党に入党。ブレーメン州自治体でさまざまな省代表を務めた後、1995〜2005年までブレーメン州首相。高齢者の孤立対策を熱心に推進した。

ー ブレーメン州首相時代にコミューンを設立されたのですよね。
高齢者の孤独のソリューションとしてですか?

言ってしまえば、シェアハウスのようなものです。高齢者に限らず、ときに若い家族が住むこともありますから。

妻とはずっと前から、他の人たちと一緒に年を重ねる生活をしようと話していました。でも、どこに住むかを決めるのに長い時間がかかりました。ようやく、ブレーメン市内のマーケット広場そばの建物に決め、高齢者でも過ごしやすいよう、大がかりな改装をして、入居者それぞれがキッチン付きの居住空間を持てるようになりました。 ここに住んで30年になります。この選択を後悔している人はいませんね。

ー コミューンの日常生活はどんなですか?

現在の入居者は、80代の夫婦2組と80代の単身者が2人、若い夫婦が1組です。この夫婦には数週間前にかわいい男の子が生まれたばかりです。 ですから、老人ホームというわけじゃないんですよ(笑)

2K Studio/iStockphoto

毎日の生活では、2つだけルールを設けています。 1つは、毎週土曜日は全員で朝食を摂ること。毎回、いろんな人の部屋を使っています。もう1つは、年に1回、皆で近くのアイフェルの丘にピクニックに出掛けることです。 ルールはこれだけですが、お互いに助け合って生活しているので、頻繁にコミュニケーションを取っています。

ー 新しい入居者はどうやって決まるのですか?

コミューンの定員は10人です。部屋に空きが出たら、入居者の知り合いでここに住みたがってる人が、引っ越してくるケースが多いです。 とはいえ、他の人たちに迷惑がかからないよう、慎重に事を進めなければなりません。皆が納得できる結論が出るまで、全員参加でじっくり話し合うようにしています。たんに多数決で決めることはありません。

ー こうしたコミューン生活は、「高齢者の孤独」対策になりますか?

もちろん完璧な答えではありませんが、「コミューンの一員である」という感覚は大きな安心になると思います。 高齢になると、誰かとシェアする感覚は大きな力になります。歳を取ってもいろんなことを学び続けられます。部屋の隅で最期の時を待つのではなくね。

入居者がいろんなことに参加し、人のつながりをつくることが、このコミュニティに新しい息吹を吹き込むのです。5年前になりますが、ナイジェリアからの難民を受け入れたことがあります。2人の子どもを連れた女性でした。その後、住まいを見つけてここを出て行きましたが、一時期でも、彼らを支援できたことを誇りに思っています。今でも連絡を取り合い、休暇を一緒に過ごしたりもしています。子どもたちも今では中学生になりました。このような難民救済の取り組みは、ドイツ国内に4万件近くあります。自分たちが関わるたび、新しい経験をさせてもらっています。

現役の頃から自転車派のヘニング・シェルフ(通勤にも車や運転手の手配を断っていた)。 高齢になっても自転車でブレーメンの旧市街を走り抜ける。 Credit: Büro Scherf


ー コロナ禍の影響はいかがですか?

「コロナ禍と孤独」は実に大きな課題です。パンデミック前は、毎週大きな部屋で読書会を開き、本や詩の朗読をしていたのですが、長い間、中断せざるを得ませんでした。最近になってようやく、マスク着用を徹底し、再開しました。

StockSnapによるPixabayからの画像


以前は当たり前にやっていたことをどう始めていけるか、試行錯誤しているところです。
コミューン内でも対人距離の確保を徹底しています。 朝食会も庭で開催し、買い物は学生たちにお願いし、小さな子どもとの接触にはとても気をつけています。 電話やZoomを使って人と話すようにしています。 定期的に会話の機会を持てるなんて、素晴らしい技術ですよね。

ー この社会で、人が孤独に陥らないためにできることとは?

誰だって年を取るのですから、公的資金を意欲的な対策にあてるべきだと思います。そして、多岐にわたる取り組みを打ち出していく必要があります。教会のボランティアを活用する、高齢者の参加を後押しするネットワーク構築など、いろいろ考えられます。

Interview by Waltraud Günther
Translated from German by Peter Bone
Courtesy of Trott-war / INSP.ngo

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