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厳しさ増す「尖閣諸島」情勢 不可欠な憲法9条の見直し

日本を中心とした世界地図を見慣れている人にとって、眼前に太平洋が広がる光景はごく普通の風景だ。しかし、中国から見ると、カムチャッカ半島―日本列島―沖縄諸島を経て台湾―フィリピンと続く列島線は、ちょうど太平洋への出口をふさぐ蓋にも見える。中国にとって太平洋への自由な航行は長年の悲願であり、この点が尖閣諸島問題を一層、大きくしている。

1978年に日中平和友好条約の批准書交換のため副首相として来日した鄧小平氏はこの問題について「我々の世代の人間は智恵が足りない。(中略)次の世代は我々よりももっと知恵があろう」と語った。いわゆる棚上げ論である。これに対し日本政府は、遠来の客に対する儀礼からか、何のコメントも発表せず、以後、中国側が「日中両国間に領土問題が存在することを日本政府も認めた」と尖閣諸島で攻勢を掛ける口実に使うようになった。

これに対し日本は、民主党・野田佳彦政権時代の2012年9月、尖閣諸島の国有化に踏み切った。以後、中国の沿岸警備隊に当たる海警局の公船による尖閣海域への侵入が常態化した。今年2月には海警局を準軍事組織と位置付ける中華人民共和国海警法(海警法)も施行され、武器使用も含め海警局の役割は一段と強化された。防衛省の資料によると、海上保安庁が保有する一千トン級以上の巡視船は19年時点で66隻、これに対し同時期に海警局が持つ一千トン級以上の公船は130隻。近年、大型化も目立つ。

付近で操業する日本漁船が追尾される事態も日常化し、我が国が辛うじて実効支配してきた尖閣諸島に海警局公船の乗組員が上陸を試みる事態が何時、起きてもおかしくない状況にある。領土は実効支配している者だけが主権を主張できる。そのような事態は何としても阻止する必要があり、アメリカ政府も尖閣諸島が日本の施政権下にあることを認め、日米安全保障条約第五条の対象になると明言している。しかし、主権(領有権)に関しては、特定の立場をとらない姿勢を堅持している。

安倍晋三前首相が16年8月の第六回アフリカ会議で、中国が南シナ海・南沙諸島で展開する環礁埋め立てなど軍事基地建設に対抗して、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)戦略を提唱した。南シナ海が要塞化され自由航行が阻害されると、インド洋から太平洋に至る航路であるマラッカ・シンガポール海峡が機能不全となり、スエズ運河を経由する船舶やペルシャ湾からの原油輸送が難しくなる。インドネシアのロンボク海峡を迂回すればコストも増える。法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の実現を関係諸国に呼び掛けるのがFOIPの狙いだが、中国もしたたかである。

フィリピンの提訴を受けオランダ・ハーグの仲裁裁判所は16年7月、南シナ海問題で中国が独自に主張する境界線「九段線」に対し、国際法上の根拠がないとする初の司法判断を下したが、中国はこの裁定を「紙くず」と称し無視している。傲岸不遜とも言うべき中国の姿勢を前にすると、法の正義がどこまで通用するか疑わしい。

あらゆる手段を講じて尖閣諸島の実効支配を目指す中国の姿勢は一段と強まろう。そうした事態に海上保安庁だけで対抗するのは無理がある。何よりも必要なのは、自国の領土は自国で守るという明確な国家の意思である。それがない限り日米安全保障条約も機能しない。日本国憲法は前文で「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と記し、第9条2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」としている。近年の中国に「公正と信義」を信頼するのは難しい。かねての持論の繰り返しになるが、9条2項の見直しに向けた憲法改正論議が急務であることを改めて訴えたい。

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