記事

【読書感想】賢慮(けんりょ)の世界史 国民の知力が国を守る

1/2

賢慮(けんりょ)の世界史 国民の知力が国を守る (PHP新書)
作者:佐藤 優,岡部 伸
発売日: 2021/03/17
メディア: 新書







Kindle版もあります。

賢慮の世界史 国民の知力が国を守る (PHP新書)
作者:佐藤 優,岡部 伸
発売日: 2021/03/17
メディア: Kindle版

国益を懸けた交渉、政策決定の裏にはつねにインテリジェンス(諜報・情報活動)がある。情報と報道のプロフェッショナルはどの点に着目して収集と分析、判断を行なっているのか。ロシアとの北方領土交渉の真相、新型コロナ禍を機に広がる中国の覇権主義への対処。アメリカの分断と混乱、イギリスのブレグジットとEUの展望。日本を守り、強くするための教育。いまこそ世界史の蓄積のなかに英知を求め、21世紀を生き抜くための賢慮(Wisdom)を導き出さなければならない。歴史に鑑みて時事を照らし、教養を実務に生かす極意を二人の知者が明らかにする。


 元外務省勤務で、国際情報局で主任分析官も務めていた佐藤優さんと、産経新聞社でモスクワ支局長だった岡部伸さん。ロシア(ソ連)で情報分析を行ったいた、という共通点をもつ二人の対談本です。

 岡部さんは、佐藤さんとの交流について、こんな話をされています。

岡部伸:私が佐藤さんに初めてお会いしたのは、1996年12月、産経新聞のモスクワ支局長としてロシアに赴任する直前でした。いわゆるロシアンスクール(ロシア語を研修し、対ロ交渉に従事する外交官。ロシアの専門家の意)ではなかった私は、上司の指示で佐藤さんに教えを乞いにいったのです。

 モスクワ赴任中、とりわけ鮮烈に覚えているのは、1997年4月、サンクトペテルブルクでホテルに宿泊した際に遭った出来事です。ルームサービスでボルシチを食べていたら、いつの間にか靴と服を着たまま寝てしまった。翌朝、目覚めてから驚き、パスポートは残っているのに、財布を調べるとドル札だけが抜かれている。ドアにはチェーンロックをかけていたはずで、何が起きたのかと思い、佐藤さんがモスクワに来られた折に相談しました。

 さまざまな情報をもとに調べてもらったところ、FSB(ロシア連邦保安庁、旧KGB)からの私に対する警告だということでした。ボルシチに睡眠薬を混入し、コネクティングルームから室内に侵入して犯行に及んだらしい。思い返してみると、たしかにいい記事を書こうと、何度か取材源に近づきすぎた節があります。あるいは当時、私は先輩の仕事を引き継ぐかたちで「『日露』新潮流 X氏は語る」という企画を産経新聞で担当していました。北方領土交渉に深く関わる本音を日ロ双方の当事者に覆面形式で語らせる内容で、これもロシア側を刺激したかもしれない。特派員とはいかなる存在であるべきか、自分の覚悟を問われている気がしました。

 僕はこれを読んで、「本当かよ……」と思ったんですよね。こんなスパイ小説のワンシーンみたいな出来事が起こるものなのか。

 実際は、僕のそういう感覚こそが「平和ボケ」なのかもしれませんが。

 というか、スパイ小説にも元ネタというか、実際に行われていることを参考にしているのだなあ、と。
 日本では、記者やマスメディアのスタッフは「権力を持っている人たち」というイメージが強いのだけれど、文字通りの「命がけの取材活動」をしなければならない国も少なからずある(あった)のです。

佐藤優:サンクトペテルブルクのホテルで岡部さんが睡眠薬を盛られたのは、何かFSBの気に障ることがあったからでしょう。

 あの人たちも仕事ですから、無駄なことはしない。物取りを装うわかりやすいかたちで警告を与えたのは、おそらく「会ってはいけない人間に会っている」「とってはいけない情報を入手した」「立ち入り禁止の場所に入った」という三つのいずれかに抵触したからでしょう。もし岡部さんが彼らの警告を無視していれば、殺されずとも殴られるなど暴力を受けるか、国外追放になっていたと思われます。

あわせて読みたい

「外交」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    看護師や女子高生の盗撮を15年間続けた医師 撮りためた動画は驚愕の3.63テラバイト

    阿曽山大噴火

    05月11日 08:08

  2. 2

    菅首相はオリンピックファースト?レッテル貼りで責め立てる野党に医師が苦言

    中村ゆきつぐ

    05月11日 08:24

  3. 3

    「人権派弁護士」が牙をむく時。正義感の暴走、池江璃花子選手への中傷は異常だ

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月10日 09:51

  4. 4

    ホテルに缶詰めで、食事はカップ麺…欧州選手団が怒った五輪前大会の低レベル

    PRESIDENT Online

    05月11日 12:26

  5. 5

    山積みの課題を前に「活動停止中」の東京都議会。最大会派は署名集めの前に、臨時議会を開催せよ

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月11日 08:23

  6. 6

    「人と違うことは個性だ」差別と戦い続けたプロサッカー選手・鈴木武蔵が見る日本

    清水駿貴

    05月11日 08:06

  7. 7

    国の反論は「性風俗は不健全」 デリヘル給付金訴訟の原告が法廷で語った思い

    小林ゆうこ

    05月10日 19:56

  8. 8

    コロナ感染者増加の主因は街の「人流」ではなく、PCR検査への「人流」

    自由人

    05月10日 08:22

  9. 9

    日本の音楽シーンは宝の山 70~80年代シティポップが世界でブーム

    NEWSポストセブン

    05月10日 18:15

  10. 10

    五輪開催是非について、口を開き始めたアスリートたち

    諌山裕

    05月10日 15:51

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。