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住友重機の機関銃生産撤退と火器メーカーの将来

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MINIMIしても採用から30年近く経っているが更新が終わっていない。普通の国ならば7~8年で更新されている。今度の新型機銃はMINIMIの調達期間が長すぎで、陳腐化しているためでもある。つまり調達が完了しなかったということだ。これは防衛省、自衛隊の調達当事者意識と能力の欠如によるものだ。

自衛隊の小火器調達は必要な戦力のためではなく、国内メーカーからの調達が目的化しているといってよい。

そもそも各幕僚監部、特に陸幕は装備を開発したり、調達したりする当事者能力が欠如している。

機関拳銃、06式小銃擲弾などの時代遅れで他国ではとうに廃った火器を開発させて採用するなど、頭が半世紀以上遅れている。機関拳銃、短機関銃は1950年代で廃れている。小銃擲弾も同じだ。諸外国が40ミリのグレネードランチャーを導入しているのに、なにゆえ時代遅れの小銃擲弾を21世紀になって採用したのか理解に苦しむ。何より20式小銃用のグレネードランチャーを採用するというのはその証左だ。

▲写真 時代遅れの06式小銃擲弾 出典:陸自第1普通科連帯ホームページ

また96式自動擲弾銃は作動不良が多く事実上調達が中止された。また諸外国で採用されているNATO規格の40x53ミリ弾と互換性がない。このため同盟国である米軍とも弾薬は共用ができない。恐らくは国内弾薬メーカーを保護するためにわざわざ違う規格を採用したのだろう。軍事的な合理性から見れば愚かな判断としか言いようがない。だから先述のAAV7用のMk19ランチャー用の弾薬も外国製であるラインメタル社の弾薬を使用している。

MINIMIにしても他国のように分隊支援火器ではなく、7.62ミリ機銃の後継として採用したが、下車歩兵用の7.62ミリ機銃を廃止した軍隊は陸自以外存在しない。陸幕広報は「交戦距離が短い我が国固有の環境」と説明したが国土が狭い台湾やシンガポールでも7.62ミリ機銃を廃止していない。それに交戦距離が短いのであれば戦車などの同軸機銃も7.62ミリの74式機銃である必要はないはずだ。

▲写真 陸上自衛隊広報センターに展示されている74式車載7.62mm機関銃(下)と5.56mm機関銃MINIMI(上) 出典:nattou/wikimediacommons

7.62ミリ機銃は射手と保弾手の二人が要るが、MINIMIであれば一人で済む。また調達価格も7.62ミリ機銃より安い。陸自は隊員不足でカネもないという内向きの理由に併せてMNIMIを採用したと考えられる。だが実戦になれば相手はそんな事情を忖度してはくれない。

また陸自は12.7ミリM2機銃をヘリのドアガンに使っているが、M2は俯角を掛けて撃つと作動不良を起こしやすい、また発射速度も低いのでドアガンには不向きだ。通常は航空用にはM3など別な12.7ミリ機銃を使用している。筆者の知る限りM2をヘリのドアガンに採用しているのは世界で陸自だけだ。

▲写真 12.7ミリM2機銃 出典:陸自第6師団ホームページ

率直に申し上げて「自衛隊の常識は軍隊の非常識」である。これを「我が国固有の環境」とか「我が国固有の運用」と言えるのだろうか。このようにまさに自衛隊、特に陸自は当事者能力や合理的な思考が欠如しており、それが装備調達にも反映している。それは防衛省全体にもいえることだ。

生産性の向上と生産基盤の維持を図るのであれば、本来防衛省や経産省が音頭を取って火器メーカーの再編を指導すべきだった。一社に拳銃から火砲まで任せれば、生産性が上がり、コストが低減でき、また開発の機会も増えたはずだった。それを怠ってきために、装備の調達数が減ると、メーカーの事業として維持できるレベルを割ってしまう。それに目をつぶって今日まで放置してきたのだ。そのつけが、今回の住友重機の機銃生産からの撤退である。

輸出ができないのであれば、生産基盤を維持するべく、挙国体制で臨むべきだった。例えば拳銃ならば3自衛隊、警察、海上保安庁などユーザーの需要をまとめて生産計画をつくるなどをすべきだった。実際21世紀になって拳銃の開発生産を始めたアラブ首長国連邦ではカラカル社の開発したカラカル拳銃を軍警察共用ピストルとして採用している。実際にこのような実例もあるのだ。

▲写真 カラカルF 出典:Vitaly V. Kuzmin/Wikipedia

無論企業側にも問題がある。将来性がなく、いつかは事業として成り立たないまでに売上規模が減り、開発能力向上することもなく、新たな設備投資もできないのにいつまでも防衛産業から撤退できずに、決定を先送りしてきた。そして撤退すれば蓄積してきたノウハウは霧散する。コマツの装甲車が好例だ。これは経営者の資質に問題があるということだ。それは株主の利益にも反する行為だ。

ただ辛うじて期待が持てるのは、日本製鋼所の特機部門の幹部は以前筆者に機銃ビジネス参入に興味があると話していた。だが住友重機械工業の機銃部門を買い取るとなると、費用対効果が悪すぎる、やるなら自前で行うと述べていた。事実そのようにして新型の20ミリ機銃を開発した。今後の同社の動向が注目される。同社が機銃事業に参入すればそれが火器メーカー再編のきっかけになるかもしれない。

戦後、武器生産を始めるに当たって、将来他国と同等の性能、品質、価格を実現する努力をし、実現の可能性があるのであれば、当面は品質が劣り、価格が高くとも未来に対する「投資」であればそれを甘受する必要もあっただろう。

だが21世紀にもなって他国の何倍も高い価格で、低性能、低品質の装備を作りつづけ、それを自衛隊が買う。しかも最後は茹でガエル状態で事業を畳むのであればそれは単なる税金と防衛予算の無駄遣いに過ぎない。

どんなコストがかかっても国内生産を死守すべし、というのは精神論に過ぎない。今や米国ですらも多くの装備やコンポーネントを外国から導入している。小火器にしても英国は、グレネードランチャーはドイツ、拳銃はオーストリア、フランスにしても小銃はドイツの製品を導入している。我が国の「国産装備」にしても多くのコンポーネントを輸入に頼っているのが現実だ。

それに工業ではなくもはや「工芸」生産レベルでは戦時にラインを拡大して何倍も生産を拡大するのは不可能だ。それに輸出ができないので国内メーカーは顧客の厳しい選別や、性能、品質、コストに対する苦情に遭うことはないぬるま湯に浸ってきた。それでマトモな製品が作れるわけもない。それは日本の火器メーカーのこれまでの実績が如実に物語っている。

小火器などは有事に備えて予備を調達しておけばいい。例えば5倍の値段の機銃千丁を30年で調達するより、五分の一の値段で2千丁買って千丁を予備として保管しておくほうが余程有事に有利だ。何倍も高い値段で延々と30年も掛けて調達している途中に戦争でも起こればどうなるか、子供でも分かる理だ。

小火器に限らず、このまま政府、防衛省の無策が続けば、いたずらに税金を浪費して防衛費を無駄に使って、自衛隊を弱体化させるだけだ。それだけではない。それは日本政府、防衛省自らが軍事的な弱体を招いて仮想敵に対する利敵行為であるとすら言える。

政府、防衛省は輸出戦略も含めて真面目に防衛生産基盤の維持を考えるべきだ。その能力もやる気も無いならそのような防衛産業は潰し、高くて低性能、低品質の国産品を買うカネを、別な分野に投資するほうがよほど国防に寄与する。

▲表 筆者作成

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