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住友重機の機関銃生産撤退と火器メーカーの将来

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陸上自衛隊員による戦闘射撃訓練 出典:陸上自衛隊 facebook

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

【まとめ】

・自衛隊の小火器は輸入に切り替えへ。国内小火器メーカーは生き残れない。

・政府主導で、火器メーカー再編や、挙国体制の生産計画を。

・政府、防衛省は輸出戦略も含め真剣に防衛生産基盤の維持を考えるべきだ。

自衛隊に機関銃を供給している住友重機械工業(住友重機)が、現在の陸自次期機銃選定の途中で辞退、今後機関銃の生産をやめる。これは筆者が東洋経済オンラインでスクープした。(参照:東洋経済ONLINE『スクープ!住友重機械が機関銃生産から撤退へ』

筆者は本サイトでも以前日本の機関銃の危機的な状況をレポートしたが、そのとおりとなった。またひとつ防衛ビジネスから撤退する企業が出た。(参照:『自滅する国産機関銃 輸入へ切り替え』

陸自は現行のMININI(Mk1に相当)の後継の新型の5.56ミリ機銃選定のトライアル中であるが、住友重機は途中でこれを辞退した。

陸自は7.62ミリ62式機銃の後継としてFN社の5.56ミリのMININI(Mk1)を1993年に選定、以後住友重機械工業が2019年度までライセンス生産で、4,922丁を生産した。新型機銃は現行のMINIMIが調達途中で陳腐化したため、未調達の約800丁の更新用となる。つまり実質的に62式機銃の後継といえる。だがその後、既存のMINIMIもこの新型機銃で置き換えられるとみられている。

▲写真 5.56ミリのMININI(Mk1) 出典:JGSDF/flickr

候補は住友エアロスペースが代理店を務めるFN社のMINIMI Mk3、JALUXが代理店を務めるH&KのMG4、そして住友重機械工業が独自開発した5.56ミリ機銃の3種類であった。防衛省は2019年度にこれら3種類のサンプルの予算を計上、2020年度から試験を開始している。だが住友重機械工業は評価試験を途中で辞退した。

このためトライアルはMINIMI Mk3とMG4の2候補で継続される。新機関銃はライセンス生産ではなく、輸入になると見られている。

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防衛省は「企業側から、仮に選定された場合における量産の辞退の申出があり、当該品種に係る試験は継続しないことになった」と説明する。当の住友重機の広報担当者は筆者の質問に対して、今後の機関銃製造は停止して機関銃事業からの撤退を認めた。だが、防衛産業から完全撤退するわけではないと説明している。

別表(記事末)にある通り、自衛隊の機関銃の調達数は極めて少ない。これでは事業として継続していくことは難しいだろう。

また企業側の能力の問題もある。住友重機械工業は自社開発の74式機銃、12.7ミリM2機銃、5.56ミリMINIMI Mk1、M61A1 20mmなどをライセンス生産してきた。2014年、住友重機械工業がこれらの機銃の性能や耐久性などのデータを40年以上改ざんし、防衛省が定める発射速度や目標命中率などの基準を満たさないまま納入していたことが判明した。このため同社は指名停止措置5カ月、賠償請求金額247万4,916円の罰則を受けた。

そもそも日本のメーカーは戦前から小火器の開発が苦手だったが、戦後開発された62式機関銃も欠陥機銃として有名だ。連射ができない、作動不良が多い、部品がバラバラと落ちるなど評価は散々だった。

その改良型で戦車や装甲車の同軸機銃などとして採用された74式機銃も装弾がしにくい、むしろ米軍供与の旧式のM1919の方がいいなど、現場の評価は高くない。それ以外に国産機銃が採用された実績はない。生産されてきた機銃の多くは外国製のライセンス生産品だ。つまり戦後76年にわたって、開発された機銃は1種類しかない

現在20ミリ以上の口径の機関砲は日本製鋼所が作っているが、国産開発はなくすべて外国製品のライセンス生産品である。ただ同社は独自に動力式の20ミリ機関砲を開発し、海上自衛隊の護衛艦向けのRWS(リモート・ウエポン・ステーション)用として提案したが採用はされなかった。

国産機銃の価格は少数生産ということもあり外国製の約5倍であり、財務省からも改善あるいは輸入に切り替えることを度々要求されてきた。そして外国製機銃を始めとして小火器の採用が増えている。陸自が水陸機動団用に導入した水陸両用装甲車、AAV7用の12.7ミリ機銃M2(と40ミリグレネードランチャーMk19)、オスプレイ用の12.7ミリ機銃M3及び、7.62ミリM240機銃はFMSで調達された輸入品となっている。特殊作戦向けのヘリに搭載されている7.62ミリミニガンも輸入だ。

▲写真 12.7ミリ機銃M2(左)と12.7ミリ機銃M3(右) 出典:JGSDF/flickr / USA Military Channel

陸自は現在M2及び、74式機銃の後継も検討中であるが、今後自衛隊向けの機銃はMINIMIの後継以外も輸入品に切り替わる可能性が極めて高い。つまり今後自衛隊の小火器の多くは輸入に切り替わる可能性が高い。

この背景にはいくつかの理由がある。まず防衛省しか顧客がいないのに、小規模な小火器メーカーが乱立し、それぞれを維持するために発注が少単位、高価になってきたことがある。高価だから調達数が減るという悪循環に陥ってきた。

減るのは機銃だけではない。拳銃と短機関銃はミネベアミツミ、小銃、迫撃砲、対戦車無反動砲などは豊和工業、機銃と20ミリ機関砲は住友重機、それ以上の口径の機関砲や戦車砲、榴弾砲、護衛艦の主砲などは日本製鋼所が担当して棲み分けてきた。

だが国内メーカーの能力は低い。ミネベアの短機関銃である機関拳銃は単価が44万円と高価格で、しかも性能不良で途中で調達が中止された。ミネベアが生産していた9ミリ拳銃でも2千発程度でフレームにヒビが入るなど、オリジナルのSIG社の製品より耐久性は一桁低い。自衛隊向けの新型拳銃はH&K社のSFP9の輸入に決定した。高い価格だけではなく品質への不安も輸入に切り替えられた原因だろう。残るのは警察用の拳銃ぐらいで事業の維持が難しいだろう。

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豊和工業にしても89式の更新である20式小銃の契約はとれたが、これに装着される40ミリグレネードランチャーは輸入品が採用される予定だ。84ミリ無反動砲M2は同社のライセンス生産だったが、これにかわるM3は輸入に切り替わった。

81ミリ迫撃砲と120ミリ迫撃砲は生産が続いているが生産数は少ない。近年採用されたヒルテンバーガー社の60ミリ迫撃砲も輸入となっている。陸自が現在計画している8輪装甲車、共通戦術装輪車では派生型として自走120ミリ迫撃砲が企画されているが、使用されるのは豊和工業がライセンス生産しているタレス社の120RTの派生型であるが、自動装填装置やターンテーブルなどより複雑かつ高度なシステムとなっている。このため調達は輸入に切り替わる可能性が高い。また96式自動擲弾銃は作動不良が多く、調達が事実上止まっている。

▲写真 120ミリ迫撃砲RT 出典:JGSDF/flickr

客観的にみて、今後の自衛隊向け小火器の市場は縮む一方だ。これら日本の小火器メーカーが生き残れる可能は殆どない。火器メーカーで比較的売上を維持できているは日本製鋼所だけだ。だが防衛大綱に示されている戦車・火砲の定数は半減する。また同社の開発したRWS(リモート・ウェポン・ステーション)は海自には採用されたが、陸自の新型装甲車には採用されないと見られている。

国内小火器メーカーは厳しい国際市場で戦うことなく、顧客は国内の自衛隊、海保、警察などだ。それゆえ、国内火器メーカーのものは価格が概ね海外の製品の5~10倍であり、性能的にも劣ることが多い。

そして製品の多くはライセンス品であるが、先述の住友重機のように品質が劣ることが多い。また日本製鋼所のライセンス製造していた牽引式155ミリ榴弾砲、FH70も、砲身の精度は高いものの、オリジナルよりも作動不良が多い。

▲写真 牽引式155ミリ榴弾砲 FH70 出典:Buddhika Weerasinghe/Getty Images

国内で開発企画される火器は少なく、設計者が設計に携わるのは一生に1~2回程度でしかない。また売上が小さいために基礎研究費も大して出せない。これでは研究開発能力の維持向上は不可能だ。

国産機銃の問題はひとり住友重機械工業の問題ではない。むしろ防衛省、自衛隊側のユーザーとして産業育成の当事者能力が欠けていたことが大きい。

先の住友重機械工業の機銃の性能・品質隠蔽問題に40年以上気が付かなったというのは犯罪的ですらある。自衛隊の現場では米軍のものと撃ち比べることも少なくなく、国産機銃の品質に問題があることは広く認識されていたが、これを陸幕及び各幕僚監部が知らなかったとは思えない。恐らくは「オトナの理由」で「なかったこと」にしてきたのだろう。

9ミリ拳銃の品質に関しても、一桁も耐久性が低い事実が放置されてきたことは、耐久試験が行われていなかったことを意味する。89式小銃は調達期間が30年でその間陳腐化が進んだが、そのまま調達が続けられた。陸自は旧式化した64式小銃からの更新がほぼ完了したが、海空自衛隊では未だに64式が使用されている。

▲写真 89式小銃(左)と64式小銃(右) 出典:陸自第6師団 / JGSDF/flickr

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