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【読書感想】リベラルとは何か-17世紀の自由主義から現代日本まで

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リベラルとは何か-17世紀の自由主義から現代日本まで (中公新書)
作者:田中 拓道
発売日: 2020/12/21
メディア: 新書






Kindle版もあります。

リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日本まで (中公新書)
作者:田中拓道
発売日: 2021/03/12
メディア: Kindle版

「すべての個人が自由に生き方を選択できるよう国家が支援するべきだ」と考えるリベラル。17世紀西ヨーロッパの自由主義を出発点として、第二次世界大戦後は先進国に共通する立場となった。しかし、1970年代以降は新自由主義や排外主義による挑戦を受け、苦境に陥っている。はたしてリベラルは生き残れるのか。具体的な政策を交えつつ、歴史的な変遷と現代の可能性を論じ、日本でリベラルが確立しない要因にも迫る。

「リベラル」について、100文字以内で説明してください、と問われたら、僕は困ってしまいます。
 「リベラル」って、「他人の権利のために闘っている人たち」というイメージとともに、「自分たちはセレブな生活をしながら、やたらと他者の失言とか不適切発言をあげつらって批判ばかりしている、めんどくさい人たち」という印象もあるんですよね。

 著者は、この本の冒頭で、「現代のリベラル」について、こんなふうに語っています。

 本書の目的は、「リベラル」と呼ばれる政治的思想と立場がどのような可能性を持つのかを、歴史、理念、政策の観点から検討することである。
 本書で詳しく論じていくとおり、現代のリベラルとは、「価値の多元性を前提として、すべての個人が自分の生き方を自由に選択でき、人生の目標を自由に追求できる機会を保障するために、国家が一定の再分配を行うべきだと考える政治的思想と立場」を指す。この立場によれば、国家、民族、家族のような集団が個人を超える価値を持つわけではない。逆にそれらの集団の目的は、個人の自由な生き方を保障することにある。また伝統や宗教は、個人の生き方にヒントを与えるものであっても、それらが特定の生き方を個人に強いることは望ましくないと考える。
 こうした考えは、西ヨーロッパを中心とする地域で歴史的に少しずつ形成され、世界に広まっていった。内部にはいくつもの系譜が存在するが、大きく言えば、個人の尊厳と自律、価値の多元性、法の支配といった基本的な価値を共有している。
 現代のリベラルのもっとも大きな特徴は、市場と国家のバランスをとる必要があると考えることである。市場の自由や経済的自由は重要だが、行きすぎた市場の自由は社会の中に格差を生み出し、一握りの個人や集団に富を集中させ、他の人びとの自由を脅かす。すべての個人に自由に生きる機会を保障するためには、国家が行きすぎた格差を抑制し、一定の再分配を行うべきだと考えている。

 歴史において、20世紀にはもてはやされてきた「リベラル」は、現在は大きな壁に当たっている、ともいえるのです。
 「グローバル化」によって、国境を越えた人やモノ、情報の行き来が盛んになりましたが、「格差社会を抑制するための再分配」は、自助努力の妨げになり、経済的な効率を悪化させ、社会全体としては貧しくなる(あるいは、生産性が落ちる)と考える「新自由主義」的な考えが広まっていったのです。
 一部の国では、移民が増えることによって、「ずっとこの土地で暮らしてきた自分たち」に対する社会保障が減らされていくことへの不満も高まっています。
 「みんなに平等な機会を与えるために富の再分配を」と言っても、右肩上がりの経済成長がみられた時代ならともかく、莫大な数の移民が押し寄せてきたり、経済成長が停滞したりしている国では、「自分の取り分を減らしたくない」というのが人々の本音なのです。
 「リベラル」であることを標榜する人たちで目立つのは、すでにお金を持っている人やハリウッドスターですし。

 この本では、非常に丁寧に「リベラル」と呼ばれてきたものの歴史が辿られているのですが、「リベラル」が指すものというのは、時代や地域によってかなりの違いがあるのです。

 そもそも、「自由」というのをどう解釈するのかが難しい。

 20世紀を代表する社会哲学者フリードリヒ・ハイエクは、1944年に発刊した『隷属への道』の中で、国家の幅広い介入を認める当時の「自由」のとらえ方を批判した。ハイエクによれば、1940年代には個人に平等な機会を保障することを「新しい自由」だとする考え方が唱えられ、国家による再分配や経済の計画化が広い支持を集めるようになっていた、これらはケインズやヴェヴァリッジの思想に対応すると言ってよい。

 しかし、一人一人の価値観は多様であり、人生の目標は本人にしか決められない。もし国家が共通の目的を定め、「自由」の名のもとにそれを個人に強制するなら、その目的を受け入れない個人は抑圧され、排除されてしまう。

 たとえば、国家が一定の生活水準を定め、それを保障するために富裕層に税を課すなら、富裕層の自由は脅かされてしまう。共通の目的に人びとが合意することは不可能だから、国家権力の肥大化に歯止めがかからず、やがては国家がすべてをコントロールする「全体主義」支配へと至ってしまうだろう。ハイエクは1947年にモンペルラン協会を組織し、経済的な自由主義を支持する経済学者を集め、新自由主義を普及させようとした。

 ハイエクの議論に見られるとおり、新自由主義によるリベラルへの批判の中核にあったのは、「価値の多元化」だった。個々人の価値観には根源的な多元性があり、合意を作ることは不可能である。社会全体で共通の目的を定めることなどできない。

 ハイエクの思想は「リベラル」に関する諸学派のうちのひとつでしかないのですが、基本的に、すべてを自由競争にすれば「格差」が生まれ、拡大していくのは必然なのです。
 「格差」を失くそう、せめて減らそうとすれば、「持てる者」を抑圧することになります。
 
 この本を読んでいると、歴史的に「リベラルとは何か」について、代表的なものだけでもあまりに多くの人がさまざまな観点で語ってきたということがわかります。
 そして、読めば読むほど、いろんな考えを知れば知るほど、こんがらがってくるんですよね。
 逆に言えば、「そういうカオスな『リベラル』の歴史」を、都合よくまとめたりせず、新書のボリュームで可能なかぎり丁寧に辿っていることが、著者の真摯さでもあるのです。

 「リベラル」というのは、矛盾した要素を抱えており、簡単に定義できるものではない、ということは、「わかる」。

 1960年代後半から1970年代にかけて、先進国では、反戦運動や環境運動(エコロジー)、反原発運動、学生運動、人種的マイノリティの権利運動、フェミニズムなどのさまざまな抗議運動や社会運動が噴出してきました。
 なぜこの時期だったのか、という問いに対して、著者は、社会哲学者のユルゲン・ハーバーマスとクラウス・オッフェの説明を紹介しています。

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