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白血病の治療や手術時の輸血に欠かせないのに…コロナ禍で深刻化する血液不足 当事者が訴え

 緊急事態宣言などの影響で献血に訪れる人が減少、輸血用の血液が不足している。すでに関東甲信越地域ではここ2カ月、目標の70%しか確保できていないという。「70%なら安心なのでは」と思われるかもしれないが、血液には有効な期限があるため、安定的な確保が欠かせない。

・【映像】コロナ禍で献血がピンチ? "命のバトン" 繋ぐために私たちに出来ることは?

 「学校での献血がキャンセルになってしまったり、団体での献血の中止が相次ぐことを懸念している」(関東甲信越ブロック血液センターの松下麻依子氏さん)。

 また、厚生労働省の審議会がコロナワクチン接種後は健康状態が悪化する恐れがあることから、48時間は献血を控えてもらうことを決定。血液不足がさらに深刻な事態に陥る可能性が高まっているのだ。

 3日の『ABEMA Prime』に出演したカンニング竹山は「仲間の闘病を機に献血の大切さを知って、よく行くようになった。ただ、ここ1、2年は持病の薬の関係で献血ができなくなっていた。この状況が心配だ」と話す。

■多くの方の善意に背中を押していただいた

 献血で集まった血液は、手術などで輸血に使う以外にも、白血病などの血液疾患の患者の治療にも使われる。治療の過程で投与される抗がん剤により、白血病細胞だけではなく血液中の赤血球や血小板などの正常な血液細胞も減少するため、並行して輸血を行うことが必要となるのだ。

 19歳の時に急性骨髄性白血病を発症した蒔田真弓さん(30歳)も、そうした血液によって命を救われた一人だ。「最初に病気がわかった頃は血液の状態がすごく悪かったので、緊急的にかなりたくさんの輸血をしていただいた。また、“1クール”の治療に1カ月~1カ月半くらいかかったが、その度に4、5回の輸血をしていただいた」。

 血液型がAB型の蒔田さん。「AB型の血液は他の血液型に比べて不足しがちなので、足りないということがあった。ただ、別の血液型を輸血するリスクより、輸血そのものをしないリスクの方が高いということで、緊急的に輸血をしていただいたこともあった」。

 病気から回復した今、若い世代の献血者がここ10年で35%も減少している現状を懸念している。「恥ずかしながら、私も10代の頃は献血のことを意識したことはなかった。献血しても“ありがとうございます”とか“助かりました”という声をもらえるくらいしか、メリットもない。でも、治療の中で血液を輸血していただいたことで、たくさんの方が痛い思いをし、時間を下さった。その善意に背中を押していただいたんだ、という気持ちになった。献血ルームは夜は開いてなかったりするので、若い方のライフスタイルと合いにくい部分もあるのではないかなと思う」。

■若い世代へのアピールが必要不可欠

 日本輸血・細胞治療学会の理事長を務める名古屋大学医学部の松下正教授(同附属病院輸血部長)は、「輸血という手段がなければ、蒔田さんがお受けになったような化学療法はできない。おそらく1カ月間は白血球も血小板もほぼゼロ、赤血球は定期的に輸血、という状態が続くような治療だったと思う。血小板の輸血は、場合によっては週に3回必要だったりすることもあるし、輸血が届かなければできない手術もたくさんある」と話す。

 「血小板製剤は成分献血によってほぼ得られるが、有効期限が4日間しかない。発生する需要を満たしていくには、やはり一定の人数の方に献血に来て頂く、ということが重要だ。特にレアな血液型については、定期的にお電話してお願いするという仕組みもあるし、最近では“複数回献血クラブ”という、メールでお知らせが届く会員制度も作っている。献血ルームも結構おしゃれにできていて、Wi-Fiも使えるし、専用のタブレットも配布されている。

 ただ、それでも血液センターや政府のPRがまだまだ十分でないと思う。40代、50代で献血に定期的にいらっしゃる方が多いのは、“やらなきゃいけないんだ”ということが教育的に教えられた時代に育った、という調査結果もある。その意味では、特に高校生を対象にした献血キャンペーンというのは今後推奨していく価値があると思っている。もちろん、若者向けにチラシを作ったり、アイドルを登場させたりと、色々な工夫はしているが、この現状自体がなかなか知られていない。蒔田さんが“夜も開いていれば”とお話されたし、個室を設けることなども考えていかないと、本当に足りなくなる時代が来るかもしれない」。

■日赤以外の事業者、ベンチャー企業による開拓も

 かつて行われていた有料採血(売血)、あるいは日本赤十字社以外が採血を行うことはできないのだろうか。松下さんは「昔は同じ方が色んな所で売血することもあった一方、個人情報を特定する方法もなければインターネットもない。加えて、新型肝炎、B型肝炎の検査も十分できない時代だったので、本来であれば使ってはいけない血液を調達していたことがどうしてもあったと思う。そして1964年、駐日米国大使だったライシャワーさんが輸血が原因で新型肝炎に感染してしまった。そういうこともあり、自分の血液を売って生活するようなことはやるべきではないという閣議決定がなされ、以後、日赤による独占的な事業として献血制度が始まった」と説明する。

 「ただし、昨年の法改正で、日赤以外の企業でも申請すれば採血事業ができることになった。あくまでも研究用の血液製剤を作るためということに限定されていて、患者さんに投与できるような品質のものを作ることは許されてはいないが、欧米では一社独占ということはむしろ少ないし、将来に向けていい試みだとは思う」。

 また、ベンチャー企業のメガカリオン社では、iPS細胞から人工的に血小板を作り、患者に輸血する研究が進められている。血小板製剤が人工的に大量生産できれば安定供給に繋がり、人工的に作ることで、血小板以外の成分が混ざることがないというメリットもあるという。今夏以降に臨床試験を開始し、2年後の実用化を目指しているが、膨大なコストも課題のようだ。

 「献血一本に頼っていくことには課題もある。最終的な目標としては、そこを補う一つの手段になれたらと思う。また、人工的に作っている血小板なので、血液の中に含まれる物質にアレルギーのある患者にも使っていただきやすい」(赤松健一社長)。

■「血管迷走神経反射」、慣れるにつれて起きなくなってくる

 番組には、採血時に気分が悪くなってしまったといった声も寄せられた。

 松下教授は「血管迷走神経反射といって、血液を見たり、針を刺すことに痛みがあったりすると迷走神経(副交感神経)が刺激されて血圧が下がり、脈拍が落ちるという症状が出ることがある。ただ、慣れるにつれて起きなくなってくるので、諦める必要はない。ぜひチャレンジしていただきたいと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

▶映像:コロナ禍で献血がピンチ? "命のバトン"繋ぐために私たちに出来ることは?

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