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仏「デートDV」への関心高まる

女性に対する暴力撤廃を訴えるデモ。2020年11月25日 フランス・パリ レピュブリック広場にて 出典:Kiran Ridley/Getty Images

Ulala(著述家)

【まとめ】

・仏である未成年女性の「デートDV」の告発が波紋を呼んでいる。

・未成年カップル間の暴力について、仏社会では理解が進んでいない。

・親は、相談窓口に早めに相談することが重要だ、子供に伝えてほしい。

フランスでは2018年に性的暴力の被害者のためのサイト「止めよう暴力」が開設され、24時間体制で暴力を受けた人からの訴えや相談を受け付けている。こちらのサイトでは、家庭内暴力(DV・ドメスティック・バイオレンス)、セクハラレイプなどに関する相談を受け付けており、現在は相談件数も増加し、前年度同期のほぼ2倍となった。2021年に入ってからの3か月間で2696件の相談を受け、1868人の犠牲者を救っている。

しかしながら、こういった性的暴力の中でセクハラやレイプは未成年にも被害者がいることは知られているが、DVに関しては家庭を持った成人の男女間で発生するものと思われがちだ。だが、実はそうではない。相談者の中には未成年もいる。未成年の恋人同士の間でもDVは発生するのだ。しかし、訴えても警察が真剣に取り合ってくれないこともあるほど、フランスでは最近まであまり知られてこなかった。

そんな中、一人の女性の告白が注目を浴びている。15歳~18歳までの3年間、当時交際していた男性からDVを受けていたというのだ。

この告白が紹介された20minutsの記事「DVは私たちの年代でも起こる”未成年の犠牲者、キャプシーヌが語る」には、500件近いコメントが書き込まれており、あまり知られていない事実に大きな関心を引いていることがわかる。しかしながら、中には「DVというのは、結婚などで関係を結んで一緒に暮らしているパートナーから受ける家庭内暴力のことを言うんだろ?それは違うのでは?」というようなコメントもやはりまだまだ見受けられた。

日本では、未成年間のDVについてはフランスよりは知られている方だ。結婚前の恋人間の暴力を「デートDV」という名称を作り区別し、各自治体では多様なパンフレットも配布され注意が呼びかけられているのだ。だが、フランスでは、現在まであまり知られてきていなかったためか用語が区別されていることもない。そのような状況であるがため、キャプシーヌの告白はほんとうにある種の衝撃を与えた。

■ 恋人、交際相手による心とからだへの暴力「デートDV」

デーとDVは中学生・高校生を含む10代の若年層の間でも起きている問題であるが、この「恋人、交際相手による心とからだへの暴力」は、まだ成熟していない若者の心に深刻な影響を与える。

キャプシーヌが交際を始めたのは、2015年の15歳の時だった。初めてできた恋人であった。最初は普通のどこにでも見られる若者同士の楽しい恋愛関係だったが、それが次第に変化していく。徐々に友達と遊びにいけないように、寮に帰るとすぐ電話するように強制しはじめたという。デートDVではそういった拘束はもっとも多くみられる行動だ。「好きだから」という理由で「束縛」を強めていくのである。

心理的束縛から、次は肉体的暴力へと発展していった。キャプシーヌの場合も靴を投げつけられたり、むりやり性行為を強要されるようになっていったのだ。目の周りには殴られた跡などがつけられるようになったが、キャプシーヌは嘘をついて隠していたという。両親に知られないようにするためだった。

最初の恋人であったため、何が正常かの比較対象もなく、別れを切り出しても、「おまえなんて誰も相手にしない。」とののしられたりもして辛い日々を送った。最終的には、男性が浮気をしたことでなんとか関係を終了することはできた。しかしながら、心に残った傷は深く、その後も当時の恐怖がフラッシュバックすることに苦しむこととなり、心療内科に通う日々が続いたのだ。

■ 未成年間でも起こる暴力の危険性

それでもまだ、キャプシーヌは命があっただけでもよかったかもしれない。未成年間の恋愛が絡んだ暴力といえば、先日、フランス・パリの北西部の町で起こった、14歳の少女が橋からセーヌ川に突き落とされ溺死した事件が頭をよぎる。犯人は、元交際相手の少年と、その少年の当時の交際相手だ。被害者も未成年であるが、加害者の二人もまだ15歳であった。

この事件は、日本では壮絶ないじめによる事件として報じられていたが、実際は、未成年者の恋愛のもつれのうえ起こった事件でもあった。加害者の15歳の少年は元引きこもりであり、心配した親が私立の職業系中学に少年を入れた。そこで初めて友達ができ、そして生まれて初めてできた恋人が殺害された14歳の少女だったのだ。殺害までに至ってしまった今回の悲劇は、コントロールできない屈折した恋愛感情から起こる暴力でもあったのである。

少年は、元交際相手という立場で当時被害者と付き合っていたわけでもなく、少年の当時の交際相手もかかわっている複数人の犯行であるため、イジメとしか表現しようがなかったのであろうとも思うが、この事件からは未成年者間の恋愛でも深刻な結果をもたらす可能性を思い知らされる。まだ子供だからと言って大人とは違うと思ってしまってはいけないのだ。

▲写真 第42回国際女性デーを記念してセクシャルハラスメント、職場の不平等、中絶の権利、家庭内暴力、男性との賃金格差撤廃を求めて行われたデモ (2019年3月8日フランス・パリ) 出典:Kiran Ridley/Getty Images

■ 若者の恋愛から起こる暴力を軽視してはいけない

恋人同士の10代の間で起こる暴力は、「恋愛」の中でおこっている痴話げんかのようなもので、取るに足らないという考えは全ての若者の恋愛にはあてはまるわけではない。デートDVをはじめ、それらの暴力は、重大な結果をもたらす可能性もある。

暴力は全ての恋人間で起こることを認識し、若者が暴力の加害者にも被害者にもならないために、若い世代だけでなく、周りの大人たちも若者の恋愛から起こる暴力についても考える必要があるだろう。

また、暴力を受けているときは、自分を責めたり、一人で解決しようとしたりしようとしないで、相談窓口に早めに相談することが重要である。そのためにも、そういった情報を、親や関係者は、子供たちに伝える努力をぜひしていって欲しい。

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