- 2021年05月04日 12:38 (配信日時 05月04日 11:15)
代替肉、培養肉、ゲノム編集魚…「不自然な肉」を食べる時代がまもなく到来する
2/2水産業で期待される「ゲノム編集魚」
肉と並んで重要な食品といえば魚だ。マグロやサケ、エビなどで培養肉の開発が進んでいる。だが現時点では、牛肉に比べると完成度が劣る。シンガポールでショーク・ミーツ社が開いたエビの培養肉の試食会では、ほとんどの人が味の完成度の低さに食べることができなかったとの報告もある。もともと、肉は飼料に莫大な環境負荷がかかるが、魚類はそこまででもない。
ただ培養魚は、魚の乱獲を防ぐことが期待されている。水産物は全体の3割が過剰に漁獲されていて、水産業の持続の可能性が危うくなっている。魚肉の培養肉は、5~10年後への実用化が見込まれている。
魚の分野で期待が高まるのは、ゲノム編集、つまり遺伝子組み換え技術だ。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bill Oxford
ゲノム編集は特定の遺伝子を組み換え、その機能を変える技術だ。医療分野のみならず、穀物や野菜、魚などの食料を改良する技術としても世界的に関心が高まっている。しかも、ちょっとした機能をピンポイントで素早く変えられる。たとえば、魚の遺伝子のある部分をピンポイントで変えることで、一匹あたりの肉の量や栄養を高められる。気候変動にも魚の生育が左右されなくなる。
たとえば、京都大学では筋肉の量を抑える機能を壊し、肉の量を多くしたマダイや短期間で肉厚に成長するトラフグなどの開発が進められている。
食品の品種改良はもともと不自然
さて、あなたは「遺伝子組み換えでない」という表示を見て、食品を買ったことがあるだろうか?

成毛眞『2040年の未来予測』(日経BP)
世界中の期待を集めるゲノム編集農水産物だが、広く普及するには、培養肉と同じ課題がある。もちろん、消費者の理解だ。規制については世界各国で議論されているが「遺伝子組み換え食品」への抵抗はもともと強い。
遺伝子組み換えについてのアンケートで、「農作物や家畜へのゲノム編集に関する一般市民の意識調査」によると、「ゲノム編集された農作物を食べたくない」と答えた人は4割だった。魚や家畜ならばなおさらだろう。すでに2019年から、ゲノム編集で開発した食品の販売や、流通に関する届け出の制度が厚生労働省で始まっているが、反応は鈍い。この届け出は、消費者の不安を取り除くのが狙いだが、届け出も表示も任意で、義務ではない。
ただ、我々は少し考える必要があるだろう。遺伝子組み換え食品について、本当に正しい理解は、「短期間で起こした変異だから、いいかもしれないし、悪いかもしれないし、わからない」である。遺伝子の変異は、自然界でも長い時間をかけて起こっているものだ。そして、あらゆる食品の品種改良は、この変異を人為的に長期間で行っているものだ。ゲノム編集は、同じことを短期間で起こしているに過ぎない、という発想もできる。
違和感は時間が解決する
人工肉だけでなく、昆虫食もこれから普及するだろう。
昆虫食は、欧米を中心に食品の販売が始まっているが、コオロギやミルワーム(甲虫の幼虫)を使うものが多く、見た目や独特の風味のため敬遠する人も少なくない。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pong-photo9
確かに、気持ち悪いと思ってしまうのはしかたないだろう。そうした意見を踏まえて、味のクセが少なく、うまみがあるカイコのサナギをフリーズドライ製法で粉末にし、ドレッシングやスープなどにする開発も進んでいる。
まとめると、2040年には世界の肉の60%が、動物本来の肉ではなく、培養肉や植物からつくられた人工肉に代わる。動物由来でも、遺伝子操作による可能性も大きくなる。不自然に見えるかもしれないが、おそらくそれは時間が解決するだろう。2020年時点の畜産や魚の養殖も、100年前の人にしてみれば不自然かもしれないことを忘れてはいけない。
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成毛 眞(なるけ・まこと)
HONZ代表
1955年、北海道生まれ。中央大学商学部卒業。自動車部品メーカー、アスキーなどを経て、1986年、日本マイクロソフト入社。1991年、同社代表取締役社長就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社インスパイア設立。2010年、書評サイト「HONZ」を開設、代表を務める。
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(HONZ代表 成毛 眞)
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