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購入費用は相場の3倍…なぜJALは152億円もの大金を支払い“二階後援会幹部の所有する土地”を購入したのか 『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』より #25 - 森 功

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 一般には知られていない中堅ゼネコンの社長にもかかわらず、永田町では知らぬ者のいない有名人だった男が、2020年12月17日に帰らぬ人となった。その男の名前は水谷功。小沢一郎事務所の腹心に次々と有罪判決が下された「陸山会事件」をはじめ、数々の“政治とカネ”問題の中心にいた平成の政商だ。

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 彼はいったいどのようにして、それほどまでの地位を築き上げたのか。ノンフィクション作家、森功氏の著書『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』(文春文庫)より、芸能界でも幅を利かせていた男の知られざる正体に迫る。(全2回の1回目/後編を読む)

◇◇◇

二階の地元で計画された「日航タウン」

 大阪湾の泉州沖に浮かぶ巨大な関空には、多くの運輸・建設族議員が関与してきた。なかでも二階俊博は、和歌山県議時代から県議会関西国際空港特別委員長を務めてきた関空のスペシャリストだ。自民党交通部会長や運輸大臣を歴任し、「与党関西国際空港推進議員連盟」の顧問でもあった。先に取り上げた、マリコンの営業担当者によるミナミのクラブ通いは、政界の実力者に対する気づかいにほかならない。埋め立て工事の主力であるマリコンのみならずゼネコン業界はとりたてて騒ぐような話ではない、と吐き捨てる。それより業界内で評判になったのは、西松建設の関空工事受注だ、とマリコン業者の幹部が話す。

「マリコンでもなければ、スーパーでもない。その西松が、いともたやすく関空の埋め立て工事をとっている。この時期の西松の受注工事のなかでも、関空がひときわ目立っていた。だから何かあるな、と評判が立ったものです」

 準大手の西松建設は、関西国際空港二期工事で1999年以降7件の工事を共同企業体(JV)で受注している。受注総額は580億円にのぼる。うち埋め立ては123億9000万円の「埋立部地盤改良工事」と246億7500万円の「空港島埋立工事」などの工事だ。

 西松建設は09年6月、日本国内で98番目にオープンした富士山静岡空港の主要工事も受注している。日本にそこまで空港が必要だったのか、と計画の評判は決して芳しくないが、それはともかく、空港工事受注合戦において、西松建設はかなりの強みを発揮してきた。その後ろ盾が二階ではないか。少なくとも業界では、そう見てきた。

 空港建設をはじめ運輸行政における二階の影響力は、はかり知れない。近い例でいえば、何度も経営難に襲われ2010年1月に倒産した日本航空(JAL)があそこまで延命できたのも、二階の神通力のおかげだとされる。というより相身互い、二階本人もJALを利用し、いろんな点で恩恵に与ってきたといえる。

©iStock.com

 二階俊博の地元和歌山県には、JALと二階の濃密なかかわりを如実に物語る建物がある。94年の関空オープンに合わせ、空港に勤務する社員のために建設されたJALのマンモス社宅だ。バブル期、山林を切りひらき、5棟の14階建高層住宅を建築しようと計画された。そこは「日航タウン」と呼ばれたが、バブル経済の崩壊とともに計画はしぼんだ。5棟のうち2棟だけが建設され、ビルの高さも10階になる。あぶく景気の残滓だった。

JAL社員寮の地主は後援会会長

 関空勤務のための社員寮といいながら、空港からはかなり遠い。会社側はわざわざ通勤のためにバスを仕立てたが、それでも一時間は優にかかる。「まるで集団疎開みたい」と社員からの評判は最悪だった。なぜ、こんな辺鄙な場所に巨大な社員寮を建設したのか。日航タウン計画を立てた理由は、容易に察しがつく。

 もともと建設用地の地主だったのが、二階俊博後援会「俊友会」の会長である。そこには当然のごとく二階本人の影がちらいた。県議時代から二階の支援者である俊友会会長は、設計業者でもあった。そして二階が運輸政務次官のころ、社員寮の建設計画が決まった。

 くだんの社員寮の敷地が売買されたのは1991年2月のことだ。JALと後援会長との土地の売買交渉はわずか1年足らず。あっさりと決まった。そんなに短時間の割に、JAL側の購入価格がバカに高い。敷地は11万平米で、相場は50億円程度だ。JALはそれを152億円で購入した。実に相場の3倍である。JALの経営破綻後、むろんこれが問題になる。

 2010年8月、JALの倒産要因を調査したコンプライアンス調査委員会の委員長で、元最高裁判事の才口千晴がこう報告書に書いた。

〈価格の適正を含めて不自然な点があるといわざるを得ない〉

 2010年8月、JALの倒産要因を調査したコンプライアンス調査委員会の委員長で、元最高裁判事の才口千晴がそう報告書に書いている。

箸袋に走り書きされた「50億円」

 そして、くだんの土地の売買交渉で、二階自身や系列の和歌山県議が仲介の労をとったことまで明らかになる。二階の関係者らは、和歌山市内の料亭でJAL側と密会を重ねた。はじめのころの会合で、JAL経営陣が50億円という買い取り希望価格を箸袋に走り書きし、二階系の県議に提示したという。すると、県議は思わず怒鳴り、席を立った。

「この無礼者が」

 二階の関係者たちは、200億円という法外な買い取り価格を要求した。しかし、さすがにそれでは折り合いがつかない。交渉の落としどころが、152億円だったのである。

 この一件は2010年10月28日の朝日新聞も、〈日航、元県議側に4.5億円 関係者証言 和歌山寮用地の仲介手数料〉と題して次のように報じている。

〈日本航空が寮・社宅用地として、自民党の二階俊博・元運輸相の後援会幹部(当時)から和歌山市の山林を高値で購入する際、大手ゼネコンを経由して「仲介手数料」として約4億5千万円を支出していたことがわかった。ゼネコン関係者は、手数料を、二階氏と親しい元和歌山県議の関係先に入金したと証言している〉

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