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ヤクザと交通違反「俺たちが法律や警察に詳しいのは、捕まらないためだ」 - 嶋岡 照

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 今年も春の交通安全運動の10日間、都内各所では警察官や白バイの姿が見られた。パトカーが視界に入れば運転手は速度を落とし、誰もパトカーを追い抜こうとはしない。いわゆる“ネズミ捕り”と呼ばれる取り締まりを行っている場面にも出くわすことも多く、この期間中、暴力団員は特に安全運転を心掛けるという。

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「あいつら、本当に悪い」と指定暴力団幹部は、席に腰を下ろした途端、苦々し気に話し始めた。車を停めた通りの時間制限駐車区間の先からわずかに離れた場所で、警察官が取り締まっているのを見つけたという。「スピード違反でパトカーに捕まるのは仕方がない。だが制服を着た警官や白バイ隊員が違反を抑止できるのにそれをせず、隠れて捕まえるというのはダメだ」と幹部は力説した。


©iStock.com

「15分間の攻防だった」

 幹部は以前、都内某所の交差点の先で取り締まっていた制服姿の警察官に、右折禁止で捕まったという。「だがね、『あなたたち警官は、犯罪を未然に防ぐのが仕事ではないか』と説得してキップを切られなかった」と鼻を高くした。警察からすれば、言いくるめられて、キップを切れなかったという方が正しい。

『ここから標識見える?』と標識を指差し確認させたら『いえ、見えません』

 現場となった交差点は、しばらく前まで右折可能だったという。右折した先に横断歩道があったため安全を考慮して禁止となったらしい。「標識は停止線手前からでは見難い位置にあったので、マジで気がつかなかった」という幹部は、交差点手前の停止線で一時停止し、ウィンカーを出した。友人の車が後に続いた。交差点に進入すると警察官の姿が向こうに見えた。

「警官は持っていた旗を肩のあたりで振っていた。前に通った時は右折できたから、そのまま行けということだと思って右折したら、警官が飛び出てきた。てっきり飲酒運転の取り締まりかと思った。わざわざ目の前で捕まるようなことはしない」

 車を道路脇に停めて窓を開けると「右折禁止です」と、いかにも交番のお巡りさんといった雰囲気の若手警察官が覗きこんできた。バックミラー越しに、後続していた友人の車に先輩とおぼしき警察官が向う姿が見えた。息を大きくついて、幹部は車を降りたという。

「右折禁止と言われても納得できない。標識を見に行こうと歩き出すと、警察官は『確認ですね』と応じた」

 言い訳するより、警察官が現認した違反には客観的理由があると認識させようとしたのだ。

「停止線の所まで警官を連れて行き、『ここから標識見える?』と標識を指差し確認させたら『いえ、見えません』。停止線の位置から標識は見えなかったんだ。『見えないでしょう。でも、ここは停止線だよね。俺は運転席にいるから、さらにもう少し下がった位置から見ることになる』と数歩後ずさり立ち止まった。警官も後ろに下がったので『見えないよね』と念を押したら、警官は『はい』と素直に頷いた」

「右折はダメだと旗を振ってサインするのがあなたたちの仕事だろう」

 幹部はここで警察官の心を揺さぶりにかかった。

「これは制服を着ているあなたたちの怠慢ではないのか」

 その言葉に警察官がたじろいだのを幹部は見逃さなかった。歩き出して停止線を越え、警察官の方を振り返ったと話す。

「少し歩いたこの位置からでないと標識は見えないのに、交差点に進入する前にどうやって標識を目視するんだ? あなたたちは敢えてあそこの位置に立っていて、待ち伏せして捕まえる。大小度合いの違いはあるけれど、犯罪を未然に防ぎましょうというのが警察の大義名分ではないのか」

 一見してヤクザとわかるだろう幹部に正論と聞こえる言葉を吐かれ、警察官はグッと息を呑みこんだという。

「『それはそうですね』と答えたから、すかさず畳みかけた。『だったら前まで出てきて、右折はダメだと旗を振ってサインするのがあなたたちの仕事だろう。それを隠れて違反する人をわざと捕まえるというのは制服を着ている警官としておかしくないのか。汚いだろう』」

 同じような違反で捕まったことがあれば、こう言いたくなる気持ちはわかる。若手警察官は「まあそうですね」と答えてしまう。

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