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ミャンマーへの円借款供与の実態

 あけましておめでとうございます。

 本日から仕事が始まった人も多いと思いますが、今年もよろしくお願い申し上げます。

 さて、新年を迎え何を書くか?

 米国の財政の崖が回避されたこと?

 まあ、そのように報じられていますが、本当は崖が回避されたというよりも先送りされたと言う方がいいような内容なのです。つまり、これからも緊張は続くと。

 では、株価が上がっていることから始めましょうか?

 本日は、大発会。株価は、なんと10700円台に達しています。

 折角皆さんがよろこんでいるのに、冷や水をかけることもないでしょう。

 では、何について書くか?

 皆さん、麻生副総理兼財務相が、ミャンマーの大統領と笑顔で写真に収まっている姿をご覧になったでしょうか?

 お正月だというのに外遊して‥つまり、そのせいで関係する役所の担当者はお正月休みが取れなかったかもしれません。

 それはそうと‥麻生副総理は何故外遊したのか?

 なんでも500億円の円借款をミャンマーに供与することにしたのだとか。

 どう思います? 

 円借款というのは、ローン、つまり融資をするということですから、当然のことながら将来貸したお金が返ってくる見込みが立つことが必要。だから、政府が責任をもってそう判断をしたのであれば、我々国民がとやかく言う必要はないかもしれません。

 しかし‥

 そうなのです。ミャンマーはいろいろな問題を抱えた国。というよりも、ミャンマーと言ってすぐ思い浮かぶのはアウンサンスーチー氏。

 多くの人にとっては、ミャンマーではなくビルマと言った方が分かり易い。つまり、こうして2つの呼び方があるということがミャンマーの問題を暗示しているのです。それに、今でも米国などは正式にはミャンマーとは呼ばずビルマと呼んでいるのです。

 一方、日本はと言えば、ビルマとは呼ばずミャンマーと呼ぶと。

 これは何を意味しているのでしょう?

 一言で言えば、日本は軍事政権を認め、それに対し、欧米は軍事政権を認めようとしなかった、と。

 いずれにしても、アウンサンスーチー氏を長い間自宅軟禁してきた出来事をどうしても忘れることができません。そして、そのような軍事政権のミャンマーに対し、欧米は長い間、制裁を課してきたのです。

 そしてまた、欧米がそのような態度だから、日本もそれに対応に同調してこれまでミャンマーに対し円借款を停止してきたのです。

 従って、今回日本政府によるミャンマーへの円借款が実現されれば26年ぶりのことになるというのです。

 アウンサンスーチー氏の軟禁も解け、そして、2010年3月には軍事政権から民主政権へ移行したということを考慮してのことなのでしょうか?

 プラス、最近では、クリントン国務大臣やオバマ大統領もミャンマーを訪れ、それが日本の円借款供与解禁に弾みをつけたということなのでしょう。

 ただ、私は、手放しで今回の事態を歓迎する訳にはいかないのです。

 その理由は、誰もが承知しているとおり、まだミャンマーの政治体制は、完全に民政移管したとは言い難いからなのです。だから、アウンサンスーチー氏も、オバマ大統領のミャンマー訪問を真に歓迎した訳ではなかった、と。つまり、もう少し米国に圧力をかけ続けて欲しかったということなのでしょう。

 では、何故、米国のオバマ大統領はミャンマー訪問を実現させたのか?

 その理由は、ミャンマーがアジアにおける最後の未開拓市場であるから。つまり、ミャンマーに進出することが利益となる、と。そして、そのために米国の民間企業のミャンマーへの進出が加速化するなかで、オバマ大統領としてもそうした動きを後押ししたかったのでしょう。

 でも、理由はそれだけではありません。欧米がミャンマーに制裁を課していた長い間に、中国などがミャンマーとの関係を深めてきており、米国として、中国の関与がこれ以上強まることを警戒せざるを得なかったということもあるようなのです。

 そして、米国がそのような動きに出たので、日本政府としても行動しやすくなり、円借款を再開することになったのでしょう。


 ここまでの記事を読んで、貴方はどのようにお感じになっているでしょう?

 まあ、率直に言って、ここまでのことなら、少し丹念にネット上の情報を整理すれば分かることなのです。

 しかし、実際に、日本政府が円借款を再開したり、世界銀行やアジア開発銀行がミャンマーに支援の手を差し伸べるのには大きな難問が横たわっていたことをご存知でしょうか?

 実は、今回の円借款供与に関して、多くのメディアは次のように報じているのです。例えばNHK。

 「民主化に伴い経済改革を進めるミャンマーに、日本政府は、ミャンマーが抱える5000億円の債務を今月中に解消したうえで、早ければ来月にも500億円規模の円借款の再開を正式に決める方針です」

 そうなのです。日本政府の円借款もそうなのですが、ミャンマーが再びどこからかお金を借り入れたいと考えるのであれば、それまでの借金を返済、ないし棚上げなどの措置を取らない限り、あらなた融資は行われないということなのです。

 従って、どれだけ世界の民間企業がミャンマーという市場に狙いを定めたとしても、この借金の返済問題に方が付くまでは、ミャンマーの経済が本格的に回復することなどあり得ないのです。

 では、ミャンマーは、どれほどの借金を抱えているというのか?

 報じられるところでは、約110億ドル。円に換算すれば、約1兆円といったところです。

 では、ミャンマーは、その1兆円を返せるのか?

 ここで、NHKの報道ぶりを振り返ってみたいと思います。NHKは言いました。「ミャンマー政府が抱える5000億円の債務を今月中に解消したうえで」

 貴方は、それが何を意味するのか、お分かりになるでしょうか?

 如何です? 新たに融資をしてもらうためには、それまでに借りている債務を返済することが必要であるから、ミャンマー政府はどこからかお金を用立ててもらって、それによって日本から借りた5000億円を返済するということなのでしょうか?

 日本政府として過去に融資した5000億円が戻ってくるので、麻生総理が笑顔を見せたということなのでしょうか?

 しかし、そうではないのです。。

 なんと日本政府は、ミャンマー政府に貸し付けた5000億円のうちの3000億円を棒引きして上げるのだ、と。

 では、残りの2000億円は、すぐ返してくれるのか?

 そんな体力がミャンマーにある筈がありません。残りの2000億円は取り敢えず日本の民間銀行が肩代わりをし、いずれミャンマー政府が返すということのようなのですが‥

 いずれにしても、そうして3000億円の借金を棒引きするためには、誰かが負担を負う必要があります。

 では、誰が負担するのか?

 円借款というのは政府によるローンですから、その負担は国民が負わなければならないのです。つまり、3000億円は我々の負担になり、成人の国民一人当たり約3000円の負担になる訳です。

 ミャンマーはレアアースなどの鉱物資源が豊富な国だと言われています。それに中国の進出が目覚ましく、その意味でも日本が楔を打ち込んでおくことが何かと有利に働くであろう、と。それに、ミャンマーの人件費は中国と比べればはるかに安い、とも。

 従って、日本の経済界にしてみれば、ミャンマーの安い労働力を利用することができれば日本企業にとって有利に働くのですが、その代り、そうなれば企業の海外進出は進むばかり。

 ということで、我々国民は一人当たり3000円を負担したうえで、さらに企業の海外脱出を支援することになるのです。

 そして、日本が供与する500億円で実施する事業は、道路や橋、或いは火力発電所を作ったりすることであり、日本のプラントメーカーなどを儲けさせる昔ながらの事業ばかりです。

 私は、ミャンマーに対する円借款供与を支持しないというのではありません。

 しかし、ミャンマーは、これから先本当に民主国家に変貌できるのか? 先ず、そこのところが大変気になるのです。

 そして次に、ミャンマーに対するこれまでのローンの大部分を棒引きしてやるために国民一人当たり3000円ほどの負担を我々に押し付けるのですから、そのことに関して十分に国民に説明する必要があるにも拘わらず政府が何の説明もしないのが納得がいかないのです。

 オバマ大統領は、昨年11月にミャンマーを訪れ、アウンサンスーチー氏と会った際、アウンヤンスーチーと名前を間違えたと言います。結局、オバマ大統領のミャンマーに対する関心など、その程度のものでしかないのです。そして、民主化の動きなどに殆ど関心がない日本の経済界は、円借款が供与されれば、日本のプラントメーカーに仕事が発注されると、ただ喜んでいるだけなのです。

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