記事

楽天、三井物産、東京電力…「中国色を消すのがうまい」テンセントの長い手が狙うモノ

1/2

米政府の「中国締め出し」は、バイデン政権でより強硬に

「通信という国家安全保障のなかで最も重要な部分に、あっさり中国資本が入ってしまったのは正直ショックだ」。中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)子会社が楽天へ3.65%出資した事態に、自民党の幹部たちは一様に頭を抱える。

中国の改革開放40周年記念式典で表彰され笑顔を見せるアリババの馬雲会長(中段右)とテンセントの馬化騰会長(同中央)
中国の改革開放40周年記念式典で表彰され笑顔を見せるアリババの馬雲会長(中段右)とテンセントの馬化騰会長(同中央)=2018年12月18日、北京の人民大会堂 - 写真=時事通信フォト

1年前に外為法を改正し、外国人投資家が安全保障上重要な企業に出資する場合、事前審査基準を従来の持ち株比率で「10%以上」から「1%以上」に厳格化した。中国への機微情報や技術流出を警戒するトランプ前米大統領が昨年8月にテンセントや子会社と米企業・個人の取引を禁じる大統領令に署名したのに合わせた措置だった。

バイデン政権になっても米政府による中国締め出しの姿勢は変わらない。むしろ、中国に対する姿勢は強硬になった。

4月に入り、バイデン政権は米国内の民間企業に対し、中国製IT(情報技術)機器やサービスの利用を規制するルールを制定した。米国はこれまでも中国を対象としたハイテク規制を打ち出しているが、新たな規制では規制対象の企業を拡大した。

楽天出資でも米大使館がすぐにNSSなどへ問い合わせ

これまで政府調達の禁止対象になっていた通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)など5社に加えて、米商務省が「外国の敵対者」として挙げる中国、ロシア、北朝鮮、イラン、ベネズエラ、キューバの6カ国の企業が対象になった。対象は広がったが、あくまでも主眼は中国企業だ。

これは米国内で活動する民間企業にも影響が出る。これまでは連邦政府と取引のある米国企業に中国5社の製品を使うのを禁じていたが、新たな規制は政府取引の有無にかかわらず、米国内で活動する企業に対して中国製品の使用を制限する。

さらに対象となる品目数も拡大。今回は通信網や重要なインフラに使う機器、ソフトウエアなどにも対象を広げた。例示されたものとしては個人情報を扱うサービスのほか、監視カメラやセンサー、ドローン(無人機)といった監視システムも含めた。人工知能(AI)や量子コンピューターなどの新興技術も対象だ。

楽天出資の件も、発表が伝わるとすぐに米大使館が日本の国家安全保障局(NSS)や財務省、事業官庁の総務省、経済産業省に、外為法上の取り扱いを問い合わせるなどあわただしく動いた。

「純投資というテンセントの説明は完全には解せない」

菅政権発足後初の日米首脳会談を控えていた首相官邸も焦った。テンセント子会社による出資は「アメリカから疑問をなげかけられる」との見方が広がり、首相官邸で開いた首相補佐官による会議では、首相の訪米前の懸案として議題に上げ、対応策を練った。

結局、日本政府は外為法にのっとり、日米両政府で楽天グループを共同で監視するとのことでその場を収めたが、政府からの監視が強まるとの報道を受けた楽天の株価は、4月21日、前日比55円(4.1%)安の1278円まで売り込まれた。

日米政府が中国企業の自国への投資について監視を強める中で、テンセントがいとも簡単に楽天に出資できたのはテンセントの投資目的が「純投資」とされていたからだ。

テンセントシーフロントタワー
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yijing Liu

日本政府は改正外為法の制定にあたり「日本への海外からの投資の流れを阻害しないようにする」(経済産業省幹部)との観点から幅広い免除基準を設けた。「非公開の技術情報にアクセスしない」「自ら役員に就任しない」などの条件を満たす場合は、事前届け出を免除することにした。

免除基準に該当するかどうかは自己申告で、順守を誓約して事後報告すればよい。「純投資というテンセントの説明は完全には解せない」(日本政府関係者)との声はくすぶるが、制度上は認めざるをえない。

「テンセントは表向きゲーム配信企業という形で入っていく」

米国では財務省や国防総省、エネルギー省から専門人材を集めた常設の対米外国投資委員会(CFIUS)がある。脅威が大きい企業には事後的に株式の売却命令を出すなど強権を振るう。非公式の事前相談も定着しており、一定規模以上の外資出資のほとんどはCFIUSとの調整が必要となる。投資の「日本離れ」を懸念するばかりに、強権を振るうのに二の足を踏む日本とは対照的だ。

テンセントの「長い手」は楽天だけではない。幅広い事業を手がける大手商社の三井物産や、日本のエネルギーの根幹を担う東京電力とも提携している。

NTTグループの幹部は「テンセントは表向きゲーム配信企業という形で相手国に入っていく。地元企業にうまく入り込んで中国色を消すのがうまい」という。三井物産と最初の関係を持ったのもテンセントが出資する中国の動画配信サービスを手掛ける「闘魚(ドウユウ)」を運営する武漢闘魚網絡科技を通じてだ。

あわせて読みたい

「テンセント」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    平井大臣の発言を文春が捏造か 内閣官房が公開した音声には企業名なし

    和田政宗

    06月23日 12:48

  2. 2

    昭和の頑固オヤジ!JASRACと闘い続けた小林亜星さん

    渡邉裕二

    06月23日 08:04

  3. 3

    ワクチン不足で職域接種の新規受付を一時停止へ「可能配送量の上限に」 河野大臣

    ABEMA TIMES

    06月23日 21:39

  4. 4

    菅内閣が「無観客五輪開催」を絶対に避けたい理由

    田原総一朗

    06月23日 16:02

  5. 5

    軽自動車はEV化で高価格に 「交通弱者」が増加するいま改めて考えたい軽自動車の役割

    森口将之

    06月23日 10:51

  6. 6

    低すぎないか、日本の物価水準

    ヒロ

    06月23日 11:31

  7. 7

    菅内閣支持率最低に 短命政権の可能性強まる

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

    06月23日 17:13

  8. 8

    ”タコ山”だって守られたい?~「TRIPP TRAPP」高裁判決から6年、いまだ見えぬ境界線。

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

    06月23日 10:09

  9. 9

    「すべては首相続投のため」尾身会長の警告さえ無視する菅首相の身勝手な野心

    PRESIDENT Online

    06月23日 08:26

  10. 10

    GAFAの台頭を許したマイクロソフトがここにきて大復活を遂げている理由

    PRESIDENT Online

    06月23日 16:35

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。