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尾身茂氏が語った「マスクを外せる日」「3回目の緊急事態宣言なんて聞く気になれねぇ」への意見 - 広野 真嗣

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 3度目の緊急事態宣言発出から1週間が経過した。全国で感染者増のトレンドは衰えない中、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の分科会長の尾身茂氏は28日、東京五輪について「開催に関する議論をしっかりすべき時期に来ている」と発言して再び注目を集めた。

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「宣言の後」はどうなるのか、「マスクを外せる日」について尾身氏に訊いた。(インタビューは4月26日に行われた)

◆ ◆ ◆

道徳的な目線での「もう一回頑張りましょう」が心に響かない

——宣言発出が決まる当日の未明、人気バンドRADWIMPSの野田洋次郎さんが「3回目の緊急事態宣言なんて聞く気になれねぇ」とネットに投稿して12万件以上の「いいね」がついた。自粛、GoTo、医療体制など1年間のさまざまな施策の検証もなく納得できない、という指摘だった。

尾身 たしかに、医療や保健所といった現場の人々、そして国民の皆様の努力でここまで持ちこたえてきたものの、多くの人の気分はそろそろ限界のところまできていて、「やっていられない」と感じておられるのでしょう。私も解放されたいという気持ちがないといったらうそになります。

 そんな中で、道徳的な目線で「もう一回頑張りましょう」といわれてみても、それが心に響かない部分があることも間違いないですよね。だから国や自治体が率先して汗をかくことが大切だ、と国会で重ねて申し上げてきました。

 何に汗をかくか。実は、これも検証ということになると思いますが、ここまでの1年ですでにいくつもの課題を明らかにしてきています。

 例えば、一般市民へのリスクメッセージの在り方です。

 もちろん欧州やアメリカの大統領のように、情熱的な言葉で伝えることで国民の心が動くこともあります。でも、人がまずは期待するのは雄弁でなくとも、しっかりとした説明です。質問にきちんと答えることは大前提になる。ただ「やってください」ではなく、「こういう理由からです」ということをわかりやすく説得力を持って説明することです。

 国も説明する努力をなされていると思いますが、残念ながら、そのメッセージが一般の人に充分には届いていなかったのでしょう。

 今回、なぜ、緊急事態宣言を急いで出したのか。なぜ、病床が逼迫した大阪府など関西圏と、そこまでではなかった東京都を同時に宣言の対象にしたのか。その理由は、感染力の強い変異株への置き換わりが進む中で、東京都も早晩、急拡大することが間違いない、などという説明が充分には理解されなかったのだと思います。

検査については、戦略的な活用が不充分だった


インタビューは4月26日に行われた ©広野真嗣

 さらに、次の課題として、検査があります。検査については、戦略的な活用が不充分だったということです。

 分科会ではすでに昨年7月に「検査体制の基本的な考え・戦略」と題した提言をまとめ、公表しています(Go Toトラベルキャンペーンの開始時期と重なってしまったためにほとんど報道されなかったことは残念でした)。

 提言では、症状がある人(1)、無症状者かつ、感染リスクおよび事前確率が高い人(2A)、無症状者かつ感染リスクおよび事前確率は低い人(2B)——と3つに分類して、(1)と(2A)は行政で、(2B)については民間の力を使ってやろう、ということをいってきました。

 昨年7月には検査へのアクセスが限られていたが、現在は、抗原定性検査(検査キット)のような選択肢も拡充されてきましたし、民間検査もあります。

 こうした検査手段を、高齢者施設をはじめ陽性率が高いと思われる場所でフルに活用していく必要がある。

 人々の生活を日常に少しずつ戻していく上で、戦略的な検査は重要なツールの一つになります。

 その際に重要になるもう一つのツールは、「健康アプリ」です。

「軽い症状だから」「休めないから」と黙って働き続ける人がいる

――昨年4月、長崎のクルーズ船で集団感染が起きた際、隔離した船員たちの体調把握に使われた「N-CHAT」(エヌチャット)というアプリは専門家らの高い評価を得たが、まだ全国的に普及はしていない。

尾身 そうです。日本はテクノロジーの活用はまさにこれからで、うまくいけば感染拡大防止と経済活動との両立を図りやすくなります。

 アプリが有効に働くのは、多くの人が働いている職場で、「倦怠感」といった軽い症状がある人が出てくるようなケースです。

 日々、健康状態を入力してもらい、有症状者が一定程度報告された日には、すぐに抗原定性検査(検査キット)などを行って、大きなクラスターを防ぐということです。こうすると、感染者を見つける的中率が高くなり、より効果的な方法になるのです。

 ただし、症状があるのに、「軽い症状だから」「休めないから」と黙って働き続ける人がいると感染拡大防止には全くつながりません。実際、かなりいるようです。その人たちは、なぜ黙っているか。

 その一つの要因は、周囲の同調圧力です。ひとたび陽性者が出ると、その人が所属する組織が過敏に反応する。そういう空気を感じている個人は「同僚に迷惑がかかる」とか、「陽性と知れたら辞めさせられるのでは」という不安を抱くのです。

 こうした偏見への恐れが検査や健康アプリの活用を滞らせる一因になっているように思います。「もっと検査をやれ」という人は多いのですが、こうした視点からの分析も必要です。

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