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”大量生産”と”過剰生産”は別物 衣類オーダーメイド化による廃棄削減が机上の空論である理由

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アウトレットと何が違う?消費者は期待薄か

売れ残り、在庫となった衣料品の新たな販路として「オフプライスストア」にメディアや一部の衣料品業界人が期待を寄せていますが、個人的には期待されているほどには消費者に注目されないのではないかと感じています。

その最大の理由は、「既存のアウトレットとの区別がわかりにくい」という点にあります。消費者から見ると、アウトレットと何が違うの?ということにしかなりません。

業界的にいえば、同一企業のブランドの在庫を集めたアウトレットと、様々な企業から各ブランドの在庫を仕入れて集めたオフプライスストアという違いがありますが、消費者からするとほとんど同じに見えてしまいます。

写真AC

また、セカンドストリートやラグタグ、カインドオルなどのブランド古着店も全国各地に出店されているため、古着と新品という違いこそありますが、アウトレットモールの広まりとも相まって、オフプライスストアに対して強い「渇望」は抱いていないでしょう。

さらにいうと、国内でオフプライスストアの運営は新型コロナ禍による外出の自粛や収入減も手伝って、さほど好調とはいえません。

ワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンの合弁会社であるアンドブリッジにメディアと業界人は注目しますが、現在まだ6店舗しかありません。

”オフプライスストア”で優位に立つゲオホールディングス

また、ドン・キホーテのパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが開始した「オフプラドンキ」は1月末に閉店し、終了してしまいました。ドンキの資本力と発信力をもってしても離陸できなかったということで、生易しいものではないということができます。

現在のところ、オフプライスストアでトップを走っているのはゲオホールディングスの「ラック・ラック・クリアランスマーケット」で現在11店舗を展開しています。

将来的には300~400店体制を目指すとのことですが、オフプライスストアという業態の国内覇権を握るのはゲオホールディングスではないかと見ています。

理由は、ゲオはすでにセカンドストリートやジャンブルストアという古着・中古品販売店を全国に多数展開しており、ノウハウが蓄積されていることに加え、仮に出店したオフプライス店が不振だったとしてもレンタルDVDのゲオやセカンドストリート、ジャンブルストアなどの他業種へ変更できるため、出店しやすいからです。

「衣類の廃棄」企業からではなく家庭からが大半

さて、メディアや一部の煽り体質の業界人によって「アパレル企業の在庫廃棄が深刻だ」という風潮が実態以上に過大に作り上げられたように感じています。先日、環境省の統計を基にしてこんな記事が繊研新聞に掲載されました。

「手放された衣類」大半は家庭から 環境省報告(繊維新聞社)

環境省が20年のファッション産業の環境負荷についての調査結果を発表した。注目すべきは廃棄された全衣類のうち、企業など事業所から出たものは2.7%である点だ。

報告によると20年の「手放された衣類」は78.7万トン。このうち家庭からは75.1万トンと大半を占め、ごみとして廃棄(焼却・埋め立て)されたのは49.6万トン(構成比66%)を占めた。リユースが15万トン、リサイクルが10.4万トン。

 一方、企業など事業者から手放された衣類は3.6万トン。廃棄が1.4万トンで廃棄量全体の2.7%ということになる。リユースは0.4万トン、リサイクルは1.9万トン。手放されたもののうち半分以上がリサイクルされている。

とのことで、実際に企業は衣料品廃棄を世間が思っているほどには行っていなかったということになります。

なぜこうなるのかというと、企業は衣料品を捨てれば捨てるほど「カネがかかる」からです。

在庫の衣料品を捨てるということは産業廃棄物として業者に引き取ってもらわねばならず、その際、多額の「廃棄料」を産廃業者に支払うことになります。90年代後半頃までのアパレル企業ならカネを支払ってでも廃棄したかもしれませんが、長引く売り上げ不振と1年以上にわたるコロナ不況で資本力を削られまくった企業が、余計なカネを支払ってまで廃棄することはほとんどないでしょう。

オフプライス店云々を言わずとも、アパレルには在庫を処分する手段がすでにいくつもあり、できるだけそのうちのどれかで処分するのが常套手段となっていました。

まず、店頭セールでどんどんと値下げする。それでも売れない場合、半年後や翌年に持ち越して安値スタートで売り切ろうとします。また、関係者(社員や取引先の家族、知人など)を広く集めた「ファミリーセール」での投げ売りもあります。

さらにいうと、百貨店やファッションビルなどでの期間限定の「安売り催事」も繰り返し行えます。そしてアウトレット店での販売。さらにはバッタ屋と呼ばれる在庫引き取り業者への払い下げもあります。最近では東南アジアや中国に輸出して安値で売りさばくというルートもあります。

ですから「廃棄する」というのはよほどのことがないと企業はやらないのです。

オーダーメイドであっても付きまとう”大量生産”

Getty Images

しかし、「作りすぎ」が問題だという人もいますが、大量生産と過剰生産はわけて考える必要があるでしょう。

基本的に家電も衣料品も日用雑貨もスマホも工業製品ですので、大量生産が基本になります。工場で製造のために使う機械自体がそのような仕様になっています。製造コストを下げ、庶民でも買いやすい値段にするには、大量生産が不可欠です。

一方、自社では到底売りさばけないほどの量を作るのは明らかに「過剰生産」です。これは自社の販売力や顧客などを精緻に分析し、回避しなくてはなりません。環境問題云々もさることながら、大量の売れ残り在庫を残せば自社の業績が悪化するからです。

世間では「オーダーメイド」に活路を求める声もありますが、そういう売り方をするブランドが存在することは否定しません。しかし、全ブランドがオーダーメイドになるというのはありえないでしょう。

例えば、2018年頃から盛んに1週間くらいで納品する短納期のオーダーメイドスーツが注目されましたが、それほど短期間で製造できる理由は、生地、副資材(ボタン、芯地、ファスナー、ホックなど)、ミシン糸などが大量生産され常に備蓄されているからです。

いわば、大量生産に守られた短納期オーダーメイドというわけです。

業界では、糸や生地などを「川上」と言いますが、川上も大量生産システムで動いています。使用している機械や工場の製造ラインがそのように組み立てられています。

生地で一例を出すと、国内最大手のデニム生地製造企業であるカイハラは、2019年のテレビ番組で「年間2400万メートルの生産量」と報道されました。

これはジーンズに換算すると2100万本分のデニム生地だそうです。トルコの最大手のデニム生地企業であるISKOは年間3億メートルのデニム生地を製造しています。カイハラの10倍以上です。

中国の大手デニム生地企業でも1億メートルの生産量があるところは複数あります。デニム生地という一例だけでもこれほどの生産量があるのです。これだけの量のデニム生地が作れるということは、デニム生地を織るための綿糸も大量に生産されているということです。

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