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ポスト菅候補 総裁選4連敗石破茂氏の党内支持が広がらない致命的原因

すでに「ポスト菅候補」へ注目は集まる(写真は石破茂氏/時事通信フォト)

 コロナ危機のさなかに就任した菅義偉・首相は官房長官時代に見せた「危機管理のプロ」の手腕と、非世襲議員だからこその庶民目線の政治を期待されたが、対応が後手後手でワクチン接種も主要国で最も遅れ、危機の出口を見いだせない。首相の手腕に失望した国民は、「次の総理」に望みをつないでいる。自民党内も大型連休明けから「ポスト菅」をにらんだ動きが本格化する情勢だ。

【図解】加藤勝信氏14点、岸田文雄氏18点、石破氏がトップ、稲田氏が10位… “総理候補”とされる10人への識者の評価

 9月の自民党総裁選には、自薦他薦10人の候補の名前があがっている(表参照)。その中に国民の期待に応えられる政治家はいるのだろうか。本誌・週刊ポストは、半世紀にわたりこの国の政治を取材し、歴代首相の成功と失敗を目の当たりにしてきた大ベテランの評論家とジャーナリスト5人(野上忠興氏、屋山太郎氏、小沢遼子氏、泉宏氏、小林吉弥氏)に、総理候補たちを採点(1人10点満点)してもらった。

 最有力候補に浮上しているのが河野太郎・行革相(3位)、その対抗馬と見られているのが野田聖子・幹事長代行(4位)だが、専門家の評価はどちらも割れた。

 河野氏に水をあけられているのが、安倍長期政権下で政治キャリアを重ねて「総理候補」と呼ばれるようになった茂木敏充・外相(5位)、加藤勝信・官房長官(6位)、西村康稔・経済再生相(8位)、下村博文・政調会長(9位)らかつての“安倍側近ブラザーズ”たちだ。

 総理大臣として多くの官僚、政治家を統率するには人心を掌握するための“人望”が重要な要素という点で識者たちの意見は一致している。

 彼らに共通するのは“人望”面の弱さだ。

 大臣4回(通算6期)の茂木氏は、政策能力を評価する声が多い。しかし、「個人プレーが多く、人心掌握ができていない」(小林氏=3点)。

 安倍晋三・前首相の抜擢で出世し、一時は総理候補の最右翼とみられていた加藤氏はコロナ対応で評価を下げた。加藤氏の大蔵官僚時代からウォッチしてきた野上氏が語る。

「調整能力がなさすぎる。大蔵官僚出身でいまも官僚体質が抜けず、政治家に必要な人心掌握ができていないからでしょう。現在のコロナ対応の失敗の原因の一つは菅首相が彼を官房長官に選んだ人事の失敗にあるとも言える」(野上氏=1点)

 加藤氏に6点をつけた屋山氏は、「秀才だが、弱さを感じる。他に総理にふさわしい政治家がいなければ、加藤が浮上」と指摘する。“消去法の総理候補”ということだ。

 同じく安倍抜擢組では西村氏もコロナ対応で右往左往。「官僚出身で政策はわかっているが、ちょこまかしすぎ」(小林氏=2点)、下村氏は総裁選への出馬意欲満々だが、「まだ子分のようなポジション。新聞記者に威張ることが多いが、周りに威張る政治家は親分になれない」(屋山氏=3点)と評価は低い。

 評論家の小沢遼子氏は4人とも「0点」の大辛採点だった。

「彼らは安倍政権時代には国民ではなく安倍さんに顔を向けて政治をする『安倍の僕』だったが、今もコロナ対策への姿勢は国民に寄り添っているとは思えない」

 菅首相に総裁選で敗れた石破茂・元幹事長と岸田文雄・前政調会長は、国民からも“過去の人”と思われている。だが、現職大臣らの総理候補の評価が低いため、相対評価が高くなった。

 合計点1位は総裁選4連敗の石破氏だ。

「経験と勉強量ではナンバーワン。人柄も言われるほど悪くないが、政治家との付き合い方では柔軟性に欠けるのが嫌われる要因」(泉氏=7点)

「安倍政権時代に、安倍イエスマンにならずに自分が信じる行動を取った。その結果、自民党内では少数派になったが、安倍時代のような貧富の格差を広げる政治ではなく、国民が毎日の生活に困らないためにはどうするかという考え方が期待できる」(小沢氏=7点)

 だが、屋山氏は党内の支持が広がらない致命的な原因をこう指摘する。

「防衛や憲法改正では自分の考え方にこだわり、意固地になりすぎて融通が利かない。そのため石破グループの勢力は小さくなっている」(2点)

 小林氏も同意見だ。

「総理になるには他派閥の協力が必要だが、モノをはっきり言いすぎて他派が協力しづらい状況をつくっている。政権戦略が見えない」(5点)

岸田は「ただのいい人」

 岸田氏は2位につけた。理由は石破氏と対照的だ。

「勉強もしているし、人柄は抜群だが、政治家としての決断力や闘争心に欠ける。ただの“いい人”と見られているのが欠点」(泉氏=7点)

「発信力が弱い。政策を旗幟鮮明にしないから、他派閥は担ぎやすい。そういう戦略で総理を狙っているのだろうが、総理になれば他派閥の顔色を窺うことになる」(小林氏=5点)

「岸田の親父も平々凡々な政治家だったが、息子は一段落ちる。思想が何もない。中国の言い分を飲んでしまう危うさがある」(屋山氏=1点)

“意固地で柔軟性に欠ける”石破氏も、“ただのいい人”の岸田氏も、評価の内容を聞く限り、「次」を任せられそうにない。

「自民党のホープ」の小泉進次郎・環境相(6位)は「乱世には軽すぎる。国民も不安になる」(小林氏=3点)、「環境相なのに福島第一原発の処理水問題で海洋放出を自分で決断できなかった。哲学のなさ、政治勘の悪さが目立つ」(屋山氏=3点)と力量も経験も足りていないとの意見が多数を占めた。

 最下位の稲田朋美・元防衛相は「防衛相時代に見せた実務能力のなさでは総理は無理」(野上氏=0点)などと推す声はなかった。

 次の総理は、コロナの感染収束だけでなく、ポストコロナ社会の国の舵取りを担うことになる。10人の総理候補の採点は、トップの石破氏でも合計25点で満点の半分、他はそれ以下だった。

「6点が総理の器のギリギリ合格点として採点したが、10人全員届かなかった」(小林氏)

 日本政治の表も裏も知り尽くしたベテラン評論家・ジャーナリストたちが口を揃えて「この政治家であれば」と国の将来を託せる政治家は現在の自民党にはいない。

 国民は「新しい政治家」の出現を待つしかないのか。

※週刊ポスト2021年5月7・14日号

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