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今こそ「メディアスクラム」の力を 東京五輪中止のキーパーソンはメディアだ

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4都府県に緊急事態宣言が発令される中、ニュースを見ていて視聴者が感じる最大の違和感はオリンピック関連のニュースではないだろうか?感染拡大や医療逼迫のニュースを散々伝えた後に、聖火リレーに参加している著名人の姿や、観客の制限に関する議論を伝えるニュースを見ると、その温度差にたくさんの「?」マークが頭の上に浮かぶのは私だけではないと思う。東京都も政府も開催ありきで突き進んでいるように見えるが、国民はそんなに開催を望んでいるのだろうか。

自民党の二階俊博幹事長(共同通信社)

少し前のニュースになるが、4月15日に自民党の二階俊博幹事長がCS-TBSのテレビ番組で「これ以上とても無理だということだったら、これはもうスパッとやめなきゃいけない」と発言。さらに「オリンピックでたくさん蔓延させたということになったら、なんのためのオリンピックからわからない」と続けた。

この発言に対し、小池百合子東京都知事は「叱咤激励」だと受け流し、オリンピック中止に言及することはなかったが、私はこのニュースの第一報を聞いて「至極当然な話だ」だと思い、この発言が政治的に波紋を広げているということに、逆に驚いたくらいであった。

二階発言に歯切れ悪いメディア その背景は

この二階発言をテレビでは各局が取り上げていたものの、歯切れの悪い番組が目立った。NHKは午後のストレートニュースでは短く取り上げたものの、「ニュース7」と「ニュースウォッチ9」ではスルーしていたし、民放各局のその夜と次の日の朝のニュースやワイドショーを見る限り、発言の中身を吟味するというよりは、なぜ二階幹事長が中止に言及したかという理由を、記者やコメンテーターが政局絡みで解説してみせるというしつらえが目立った。

当日の「報道ステーション」(テレビ朝日系)では番組中盤で事実関係だけを1分間伝え、それに対するコメントは一切なかった。

「NEWS23」(TBS系)では、コメンテーターの星浩氏が「どうやら意図的な発言のようですね」と断った上で「政府与党側が菅総理を初めとして、必ず開催するんだという一色になっていますから、二階さんとしては、もしかしたら中止だってあり得るんだ、と柔軟なところを見せておこうという狙いがあるんだと思います」と相当に引いたポジションから解説をしていた。

「ひるおび!」公式ホームページ

この問題に一番時間を使っていたのが、翌日の「ひるおび!」(TBS系)で、番組冒頭の項目で取り上げ、スタジオで10分間、司会者やコメンテーターが感想を述べていたが、コメンテーターのひとりである溝口紀子氏(バルセロナ五輪女子柔道銀メダリスト・スポーツ社会学者)は「すごくまっとうな意見だと思う」と指摘した。

さらに、「アクセルとブレーキをちゃんと持っているんだな、とある意味で安心した」と述べたのに対し、司会の恵俊彰氏も「選択肢にあって当然」と受けていたが、このようにストレートに二階発言を評価していた番組は少数派であった。

もちろん政治家の発言には裏の意味があることも多いから、それを探るというのも当然あってしかるべきだとは思うが、テレビ番組でオリンピックに関わる話をスタジオで展開するときに、司会者やコメンテーター、そして感染病や経済の専門家たちの極めて慎重な言葉選びは一体何なのだろうか、と思うことが多い。簡単にいうと「こんな状態なのだからオリンピックどころではないでしょう」という、最もストレートな言い方に出会うことはほとんどない。

奥歯にモノの挟まったような物言いを見て、彼らが誰に気を遣っているのかを考えると、それは自分が出演している番組のプロデューサー、さらにはテレビ局の上層部ではないか、という疑いを持ってしまう。また、今の時代は、番組内での発言に対して一般の視聴者からSNSなどを通じてバッシングを受けることもあるので、いきおい慎重な物言いになるかも知れないが、この問題の根底にあるものは、大げさにいえば今の日本のメディアの問題そのものではないか、と思う。

読売、朝日、毎日、日経は「東京2020オリンピックオフィシャルパートナー」だ

東京五輪のスポンサーとなった新聞社

言うまでもなく日本のテレビ局は新聞社の系列に分かれている。日本テレビは読売新聞、テレビ朝日は朝日新聞、TBSは毎日新聞、フジテレビは産経新聞、テレビ東京は日本経済新聞、という具合だが、全国紙と呼ばれる読売、朝日、毎日、産経、日経の5紙と地方紙である北海道新聞の6紙にはある共通点がある。それは揃って東京オリンピックのスポンサーとなっていることである。

スポンサーには4種類ある。上から順にIOCのスポンサーである「ワールドワイドオリンピックパートナー」(コカコーラやパナソニックなど14社)、国内向けである「東京2020オリンピックゴールドパートナー」(みずほ銀行やキヤノンなど15社)、「東京2020オリンピックオフィシャルパートナー」(日本航空や日清食品など32社)、「東京2020オフィシャルサポーター」(清水建設や丸大食品など20社)となっている。

読売、朝日、毎日、日経の4紙は「東京2020オリンピックオフィシャルパートナー」で、産経と北海道新聞は「東京2020オフィシャルサポーター」である。「一業種一社」が原則なのだが、新聞社などは例外として複数社が認められている。

東京オリンピックの公式サイトには、組織委員会が産経新聞と北海道新聞とスポンサー契約を結んだ際(2018年1月4日)の「お知らせ」が掲載されているので、飯塚浩彦産経新聞社社長のコメントを引用する。

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会をオフィシャルサポーターとして応援できることを光栄に思います。(中略)今後もスポーツ振興の姿勢を貫き、東京2020大会の成功に向け、全力で支援していきます」
東京オリンピック・パラリンピックの聖火リレー(共同通信社)

プロ野球の読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズ、また高校野球の例を引き合いに出すまでもなく、新聞社とスポーツは昔から深い繋がりを持っている。オリンピックも例外ではなく、1998年の冬季・長野オリンピックの招致には、長野県内で最大の部数を誇る信濃毎日新聞が中心的な役割を果たしている。

この繋がりの深さは「日本にはスポーツジャーナリズムがない」と言われる一因となっており、その距離の近さ故に、スポーツに関してはまっとうな批判が生まれにくく、メディアが単に応援団となってしまうケースがよく見られる。

それ以上にスポーツイベントはメディアにとって経営的に極めて重要なもので、テレビ局にとってもオリンピックはサッカーのW杯と並んで最高のキラーコンテンツだ。その放映のチャンスを失うことは決してあってはならないことである。メディアにとってオリンピックとは、まさに「応援できること」は「光栄」であり、「全力で支援」すべき対象なのである。

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