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「元慰安婦の賠償請求を却下」日本はいまこそ国益の極大化に動くチャンスだ

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苦難を乗り越えた政府間合意を受け入れられない慰安婦運動

韓国の元慰安婦と遺族が日本政府に損害賠償を求めた韓国慰安婦訴訟は、本年1月8日に第一次訴訟としてソウル地方裁判所で「原告(慰安婦)勝訴。被告(日本政府)の主権免除認めず」との判決が出た。だが、4月21日の第二次訴訟では「被告に対する主権免除を認め、原告の訴え却下」という真逆の判決が出たことにより、韓国でもちょっとした騒ぎになっている。

元慰安婦と対面する韓国の文在寅大統領(韓国・天安)=2018年8月14日
元慰安婦と対面する韓国の文在寅大統領(韓国・天安)=2018年8月14日 - 写真=EPA/時事通信フォト

主権免除とは、国は外国の裁判所の管轄から免除されるということであり、国を被告とする裁判を他国は起こせないという国際法上の原則である。

韓国内における慰安婦運動の混乱は、少なくとも2015年に多くの苦難を乗り越えた政府間合意ができあがったにもかかわらず、これをどうしても受け入れられない一部の元慰安婦グループが激烈な反対運動を始めた時点にさかのぼる。

本質的な差異があるとは思えない二つの反対運動グループ

この反対派グループには当時から二つの流れがあった。

第一次訴訟グループは、2013年から日本政府に対する調停を申し立て、これが2016年1月にソウル地方裁判所で受理された。原告は12名で、判決時点で生存者は李玉善氏ほか4名。元慰安婦の支援を謳う社会福祉法人「ナヌムの家」(編集部注=ナヌムは韓国語で分かち合い。ソウル近郊の京畿道広州市に同名の施設を持つ)が支援し、「民主社会のための弁護士会」(民弁)という支援組織がつくられている。

第二次訴訟グループが動き出したのは政府間合意から1年後の2016年12月からで、原告慰安婦20名、判決時の生存者はここも4名となっている。この中には、元慰安婦支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺隊協)のリーダーで2020年4月の選挙で与党「ともに民主党」から比例区当選した尹美香氏(同年9月寄付金不正流用疑惑で在宅起訴)、同年5月に尹美香氏を公開批判した李容洙氏という「著名人」が顔をそろえており、挺隊協の発展形である「正義記憶連帯」が直接の支援をしている。

日本から見ればこの二つのグループに本質的な差異があるとは到底思えないが、なぜこのような異なった判決が出たかについては諸説がある。

韓国の司法には相当根の深い「異見」がある

第一は、文在寅大統領が、バイデン政権下でアメリカから「日韓の連携」を強く求められることを予測し、1月18日の記者会見で、原告勝訴の判決に「少し困惑」し、「2015年合意は公式合意」と発言、法曹界もその意向を忖度する動きが出て、これが4月21日判決の背景になったという見方である。

裁判所
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TkKurikawa

第二は、内政的には、4月7日行われたソウル市長、釜山市長をはじめとする再・補欠選挙で、保守系野党が圧勝し、21の自治体で行われた選挙の中で、与党が勝ったのは4人のみとなったためと見るものである。来年の大統領選挙で保守系候補が勝てば、日韓関係の改善を求める可能性があり、一次訴訟を担当した裁判官の3人が「異動」したこともあり、裁判官が保身を図ったとの見方もある。(佐々木和義、「デイリー新潮」4月23日)

さらに第三に、もともと1月の時点から、第二次訴訟は、1月8日判決とは違う判決を出す予定であり、二つの判決の整合性をどうとるかが慎重な検討対象になっていたという説がある。その結果、判決日が4月21日に延ばされたという分析が1月30日に現れている。

大統領の意向とは違った次元で、韓国の司法には相当根の深い「異見」があるようである。(堀山明子毎日新聞ソウル支局長「韓流パラダイム」2021年1月30日)

1月8日の判決を出したソウル中央地方法院民事34部が2月の定期異動で構成員が変わった後(部長がキム・ジョンゴンからキム・ヤンホへ)、3月29日に判決の一部を覆し、「訴訟費用を日本政府が負担する必要はない」と判示したのも両訴訟を同じ方向性に合わすための周到な用意のように見える。

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