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コロナ禍の影響で異例ずくめだったアカデミー賞 「映画」そのものにも変化の兆しか

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4月25日(現地時間)、米ロサンゼルス他にて第93回アカデミー賞授賞式が行われた。クロエ・ジャオ監督による『ノマドランド』が作品賞、監督賞、そして主演女優賞の三冠を達成し、長かった2020年のハリウッド映画のサイクルが、これをもってやっと終わった。前回(第92回)も司会不在ということで注目されたが、コロナ禍の影響をもろに受けた今回は、司会者不在はもちろんのこと、前回とは比べ物にならないほどの異例ずくめの内容だった。

前例のないノミネート条件と開催方法

かねてから報じられていた通り、アメリカでは新型コロナによるロックダウンが各地で敷かれ、それに伴って映画館も長期間にわたる閉鎖を余儀なくされた。アカデミー賞授賞式の開催自体も危ぶまれる声があった中、大きなトラブルもなく終了したことにスティーブン・ソダーバーグをはじめとした授賞式のプロデューサー陣もほっと胸を撫で下ろしたに違いない。この記事では前代未聞の状況の中で行われた第93回アカデミー賞を俯瞰しつつ、その中で見えてきたことなどを書きたいと思う。

まず今回のアカデミー賞の条件面を見ていきたい。元来アカデミー賞は、前年の1月〜12月の間に公開された映画を対象とし、翌2月〜3月に授賞式が行われるのが慣例だった。だが今年は上記を理由に各スタジオや配給会社も公開予定の大きな変更に迫られたため、ノミネート対象を2020年1月1日から2021年2月28日までに公開された作品とし、授賞式も当初の予定よりも約2ヶ月遅い4月25日(現地時間)へ後ろ倒しにされることが決定したのだ。

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加えて、これまでは特にロサンゼルスの映画館で7日間以上、1日3回以上の上映というのが作品のノミネート条件とされていたが、今回はニューヨークやシカゴを含む大都市での劇場公開作品の他、劇場公開からSVOD(サブスクリプション・ビデオ・オン・デマンド)などの配信へと切り替えられた作品もノミネート資格を与えられるという救済措置が取られた。というわけで、今回ノミネートの対象となった作品は366本で、これは意外にも前回の344本を上回るだけでなく、1971年の第43回以来最多ということだった。

また会場も例年授賞式が行われてきたドルビー・シアターと、さらにユニオン駅で対面式のイベントが予定されていたが、特にアメリカ国外からの候補者に関して、ロサンゼルス渡航にかかる自主隔離期間を含めた時間的・費用的負担への批判を受け、それらの声に対応する形でリモート参加を可能したという経緯もあった。さらに上記2箇所のロサンゼルス会場に加え、ロンドンやパリといったサテライト会場をつなぐ史上初の試みが行われたのだ。

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昨年に続くアジア系の活躍

上記のように今回の授賞式は条件やハード面については異例づくしだったが、ノミネート作品自体は例年に劣らず良質な作品が並んでいた。ノミネーション数から見た前評判という意味では、デヴィッド・フィンチャー監督による『マンク』が最多の10部門、続いて『ファーザー』『ミナリ』『ノマドランド』『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』『シカゴ7裁判』がそれぞれ6部門、『 Judas and the Black Messiah(原題)』が5部門というものだった。結果は『ノマドランド』が作品賞を含む最多3部門受賞だったが、順当と言えるのではないだろうか。

「BLM運動」や「MeToo」の流れと共に、米社会での各マイノリティによるメッセージが代わる代わる注目されることの多かった近年のアカデミー賞であるが、今年は特定のマイノリティグループが取り沙汰されることはなかった。だがノミネート作品を見ると、それらのマイノリティの声を届けるような作品がしっかり入っていたのが印象的だった。

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昨年は『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)の作品賞、及びアジア系による初の監督賞という部分が大きく取り上げられたが、今年は中国出身の女性であるクロエ・ジャオ監督が監督賞を受賞した。アジア系女性として初の監督賞という意味でこれが歴史的な受賞であったことは確かだが、『パラサイト』と『ノマドランド』で大きく違うのは、『パラサイト』は韓国社会の片隅に光を当てた純粋な韓国映画だったのに対し、『ノマドランド』はあくまでもアメリカ社会を描いたアメリカ映画であったことだ。クロエ・ジャオ監督はすでにハリウッド映画の典型とも言えるマーベル作品『エターナルズ』が次回作として動いているが、どういった結果になるか自ずと期待が高まってくる。

「アジア系」というキーワードでいうと、1980年代のアメリカの田舎で奮闘する韓国系移民の一家を描いた『ミナリ』もまた、非常に高い評価を得ており、ユン・ヨジョンが助演女優賞を獲得した。一年以上にわたって続くコロナ禍で、アメリカではアジア系住民に対する差別や暴力といった、これまであまり表に出てこなかった社会問題が俄かに深刻化しているが、これらの作品が高く評価されることの意義は大きい。

ところで、各作品の「ホーム」ともいえる配給会社や、どこでワールドプレミアを迎えるかというのは、賞レースにおける作品の動きを占う上で重要な要素である。今回のノミネート作品を見てみると、作品賞他3部門受賞の『ノマドランド』はサーチライト・ピクチャーズで、他作品もA24、フォーカス・フィーチャーズ、といったアカデミー賞常連組の顔ぶれだったが、今回最も多い計7部門で賞を獲得したのがネットフリックスだったことは、大きな注目に値する。

また作品賞にノミネートされた8タイトルの半分を占める4本が、2020年1月に開催され、アメリカでの新型コロナ感染拡大をギリギリ免れたサンダンス映画祭で公開された作品であったというのは、引き続きサンダンスの重要性を証明する結果となった。他にもトロントやヴェネツィア、カンヌなどのメジャーな映画祭で成功を収め、ある程度勢いをつけることの重要さを改めて感じた。

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