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リスクを相対化して議論しないと、政治もメディアも責任を果たしたことにはならない 石破元幹事長がコロナ対策に指摘


 菅政権発足後、初の国政選挙。コロナ、“政治とカネ”の問題で当初から劣勢だった自民党は、いずれの選挙でも敗北に終わった。この結果に、閣僚や自民党幹部からは、“菅おろし”の声さえ聞こえてくるという。

・【映像】初の国政選挙で全敗“菅政権のコロナ対策“石破茂の評価は?次の総裁選は?

 27日の『ABEMA Prime』に出演した石破茂元幹事長は「誰がやっても大変だ。色々な批判はあるかもしれないが、田村さんだって河野さんだって西村さんだって役人だって、一生懸命やっている。その時に総理を変えろ、総裁を変えろと言っていたら、それこそ自民党は何をやっているんだという話だ。特に国会議員は圧倒的な支持で菅総理を選んだのだから、どんな結果になろうと、みんなで責任を負わなきゃ」と訴える。

 「また緊急事態宣言が出て、なんでデパートが閉まるのか?なんでコンサートが無観客なのか?なんでデパートの補償金が20万なのか?と、国民には色々な思いがあるわけだ。それに政権としてどうやって真摯に答えるかが先だろう。党内抗争をガタガタやっているよりも、国民が何なんだろうと思っていることにちゃんと答える。それにエネルギーを割くことが大事だ」。

 その上で石破氏は、現状の政府のコロナ対策について次のような見方を示す。


 「リスクが高いのは高齢の方、基礎疾患を持たれた方だ。そして東京都で言えば62市区町村ある。どこが大変なのか、どこに受け入れる余地があるのか、どうやって機動的に動かすことができるのか、ということだ。日本はベッド数で言えば人口当たり世界トップ、感染者の数も欧米やインドに比べれば桁が違う。それでなぜ医療逼迫が起きるのかということを考えれば、やはり8割が民間病院であり、行政はそこに対してお願いはできても命令はできないからだ。どうすれば院内感染が防げるかという知見も、この1年でずいぶん高まったはずだ。ただ、行政の権限が野放図に広がってしまえば、それこそ権利の制限になってしまう。

 また、医師会は職能団体である以上、構成員の利益を守るために動くのは当たり前。それをおかしいといってもしょうがない。居酒屋さんが1日、2日休むのも大変なことだが、中小病院だって2日、3日休んだら経営が悪くなる。コロナを受け入れれば風評被害で患者が敬遠してしまうかもしれない。そこに対して補償するという議論もしなければいけない。そのようにして、医療の機動性、弾力性を確保することが大事だ。そして、コロナ専門の大病院も必要だ。中国みたいに1週間、2週間で建てられるかは別として、ここで重篤な方たちを診ますよ、という施設を作っていくことが、国民の安心感にもつながる。待機看護師の方だって70万人以上いる。そうした方々が、どういう条件なら来てくれるのか、その議論も進めていかないと、医療逼迫はずっと続く。ワクチンや集団免疫が確保されない限り、収まって、また広がって…がずっと続くわけだ。
 
 こういうエクスキューズみたいなことを言ってはいけないが、こういう議論を許容する雰囲気がないというか、同調圧力もあるのではないか。与党も野党も、“もっと緊急事態を早く出すべきだ”、“もっと自粛をするべきだ”という方向”だ。だけど、どういうリスクの人に何をお願いするのか、オープン・エアでやっているイベントまで本当にやめなきゃいけないのか、そういう疑問を抱いている人はいっぱいいるわけだし、国民が納得しない政策は実効性を持たない」。


 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「リスクをどう評価するのか、という話につながると思う。“緊急事態宣言を早く出さないと危ない”と大騒ぎする一方、出したら出したで“大変だ”と大騒ぎする状況が振り子のように続いているだけで、冷静なロジックに基づいたリスクマネジメントができていない。そこは政府のリスク・コミュニケーションが下手だという話もあるし、メディアの影響もあると思う。たとえば分科会の尾身茂会長が喋っていることを、メディアがまともに受け取れないという問題もある」と指摘する。

 石破氏は「ヘルス・リテラシー、メディア・リテラシーの問題だと思う。“テレビでこう言っているから”みたいなことでみんなが信じてしまう、ということも間違いなくあるはずだ。1年前から言われていることだが、どうすれば重症化しないか、死に至らないか、どういう人がそのリスクが高いか、それらを相対化しないと、議論は右に左に触れていってしまう。これが一番危ない。

 “ベッドを増やす、ワクチンを確保をするなど、政治にしかできないことを徹底してほしい”というスタジオの皆さんの意見は承った。一方で、今日の感染者を報道すると同時に、医療提供体制はどうなっているのか、という数字も報道し、分母も分子もどっちも見るようにしないと、医療の逼迫とか崩壊といった議論も無意味だろう。ワクチンの供給体制についても、1年経ってようやくこういう議論になった。つい数カ月前までは、こんな議論すら、させてもらえなかった。全てを同じように規制することが本当に正しいのか。その裏で一体何が起こっているのか。そういう話をしないと、政治もメディアも責任を果たしたことにならない」と指摘した。


 安倍政権では地方創生担当大臣も務めた石破氏。「コロナの前、日本の大問題は少子高齢化だった。この1年で、それが10年進んだという人もいる。自粛をお願いすることで、うつになる人や自殺する人が増えた、糖尿病やアルコール依存症が増えた。この言い方は嫌いだが、“産み控え”が起こり、生まれてくる赤ちゃんの数が80万を切るとも言われている。コロナの重篤化、亡くなる人を減らすことと同時に、少子高齢化を食い止めることの両方をやっていかないと、何年後かには大変なことが起きる」とも話す。

 「コロナがあってあまり報じられないけれど、安全保障的に言えば台湾海峡の問題もある。オリンピックをどうするんだという問題もある。そういう時、自民党内でゴタゴタしていていいわけがない。しかし10月までには総選挙が来る。長野や広島では、無党派の6割が野党に入れるということが起きた。うちが負けるというのは、そういうパターンだ。一方で、“野党がいい”と思って入れた人はそんなにいないと思う。その無党派の人たちが“やっぱり自民党だよね”と。もう一回、半分くらいは自民党に入れてね、と思う」。

 また、自身の総裁選再出馬について問われると、「ギネスに挑戦しているわけではないので、何度でも出ればいいというわけではない。世の中に絶対はないし、“100%ない”とは言っていない。ただ、今はみんなで選んだ体制だからみんなで支えていこうという話だ。自分が自分が、ではなくて、何をしなければいけないのか。それが明確にないままに出ることは、党員、国民に対する冒涜だと思う」と明言を避けた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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