記事

「無実の日本人を50人で拘束」異常な蛮行を繰り返すミャンマー国軍の本当の狙い

1/2

裁判も受けずに収監された

ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、国家権力を「掌握」してからまもなく3カ月が経つ。民主化を求める市民らを抑えようとする国軍の弾圧は日々エスカレートし、4月下旬には死者数は少なくとも700人超に達している。そんな中、日本人フリージャーナリストの北角(きたずみ)裕樹氏(45)が当局により拘束。現在もなお、現地刑務所での拘留が続いており、同氏が1日も早く無事に解放されることを祈りたい。

北角裕樹さん=本人のフェイスブックより
北角裕樹さん=本人のフェイスブックより

いきなり刑務所に入れられるほどの罪を犯したのか。救出の手立てはあるのか。現地の人々の声から分析してみたい。

北角氏は4月18日夜、「うその情報を流した疑いなど」を理由に、ヤンゴン市内の自宅アパートで逮捕、連行された。「同じアパートの住人全てが当局者の聞き込みを受けた」との情報もあることから、拘束は偶発的なものではなく、当局が北角氏を狙って約50人の部隊員を動員し、身柄確保に及んだ可能性が高い。

拘束された北角氏は、裁判を受けることなく、ヤンゴン市内にあるインセイン刑務所に収監された。現地の日本大使館が当局に折衝を進め、同氏との接触を図ったところ、23日午後、電話での会話が認められた。同氏と話した丸山市郎駐ミャンマー大使によると、「健康状態に問題なく、暴力なども受けていない」ということだ。

ただ、人権を蹂躙することで悪名高い同刑務所の看守らが収容者に対し「穏当な扱い」ができるかどうか疑問に感じる。

正規の司法手続きを踏んだとは思えない蛮行

国営テレビは、同氏の罪状について改めて「うその情報を流すことなどへの罰則を規定した法律にもとづいて訴追」と報じてはいるものの、正規の司法手続きを踏んだとは思えず、恣意(しい)的な当局の対応に日本政府も抗議の構えを見せている。

北角氏は、本当に国軍に不興を買うような「偽情報」を流していたのだろうか。同氏のFacebookアカウントは閉鎖されることなく閲覧可能な状態(4月26日現在)となっている。

拘束直前に上げられた情報としては、「東京の増上寺で行われたミャンマー人の犠牲者法要」の動画へのリンク、その前は「在日ミャンマー人がミャンマーの民主派が設立した国民統一政府(NUG)への支持を表明」といったものだ。過去の書き込みを見ても「国軍の蛮行」を知る第三者が見ればさもありなんという内容で、「フェイクニュースを乱造して公開している」といった状況とは程遠い。

反体制派が収容される悪名高い場所

インセイン刑務所は、ミャンマーの人々には「多くの政治犯を長期にわたって拘留した場所」として負のイメージで語られることが多い。現在、国軍に身柄を確保されているアウンサンスーチー国家顧問もかつて同刑務所に収監されていたことがある。発表されている収容人員は5000人で、そのほとんどが反体制の政治犯とされる。

今回の事件を探る中で、事件の証人としてインセイン刑務所に出向いたことがある40代自営業男性の話を聞くことができた。

「インセインの敷地はまるでひとつの街のよう」と話す男性は、北角さんは刑務所に収監されていると報じられているが、「実刑となって牢屋に入っているわけではないと思います」と推定。「インセイン刑務所の敷地には、日本でいう警察署の留置場のような場所があって、起訴前段階の容疑者がそこに入れられるようです」。北角さんはそういった場所にいるのかもしれない。

刑務所に収容されている男性の手元※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FOTOKITA

ただ、もし「偽情報の流布」という罪状で刑が確定してしまうと、最長で禁錮3年が科されることになる。そうなると、かつて政治犯らが苦渋をなめた独房に入れられる可能性もゼロとはいえない。

食事が与えられないことも

ミャンマーの民主化を支援する国際交流基金アジアセンターによると、かつての政治犯らが語るインセイン刑務所での日々は、極めて過酷なものだったという。コンクリート製の独房は約2.7メートル四方という狭さで、刑務所では政治犯に対する人権侵害が日常的だった。軽犯罪の囚人には食事が与えられないなど、人道的に極めて問題のある施設であることが窺(うかが)える。

一方、加藤勝信官房長官は19日の閣議後会見で、北角氏に関する今後の対応などについて次のように言及した。

「(現地報道により)ミャンマー刑法に基づき措置がとられた旨の言及があったが、この措置が日本における起訴を意味するのかは不明。違反行為の内容や具体的手続きなどについて引き続き現地の大使館を通じ確認を行っている」

その上で、「刑の確定前に刑務所に拘束されることも含め、わが国として、こうした対応は受け入れられるものではない。ミャンマー側に抗議するとともに、早期面会、早期解放を求めている」と政府の考えを明らかにした。

あわせて読みたい

「ミャンマー」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。