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【読書感想】日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由

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日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由 (光文社新書)
作者:葦原 一正
発売日: 2021/02/16
メディア: 新書






Kindle版もあります。

日本のスポーツビジネスが世界に通用しない本当の理由 (光文社新書)
作者:葦原 一正
発売日: 2021/02/26
メディア: Kindle版

スポーツビジネスは何ら特殊なビジネスではない。日本のプロスポーツが、経営面でも海外で戦えるビジネスになるために必要なものとは果たして何なのか。何が、日本のスポーツビジネスには足りないのか。スポーツをこよなく愛し、スポーツの魅力にとり憑かれたBリーグ創設の立役者が明かす熱きビジネス論。川淵三郎氏推薦! 本書は、スポーツビジネスに携わる人にとっての必読の書である。

「スポーツビジネス」という言葉に、観客側である僕は、少し抵抗があるのです。

 要するに「スポーツというイベントやスポーツ選手を『高く売る』ための技術であって、それは、観客にとっては「より高く買わされる」ということではないか、と。

 オリンピックで、大きな市場であるアメリカのテレビ中継の時間にあわせて、人気競技の決勝の時間が現地時間の早朝とか深夜になってしまう、という現実もあるのです。

 もちろん、選手たちにとっては、より多くの報酬が得られることによって、モチベーションが上がったり、目指す人が増えて競技全体のレベルが上がる、というメリットもあるでしょう。観客にとっても、スタジアムで観戦する料金が上がるかわりに、より快適な環境で観ることができるようにもなるはずです。

 日本のプロ野球とアメリカのメジャーリーグの年俸の違いをみていると、人口も市場規模も違うのだから、どうしようもないだろ、その能力と意志のある選手は、メジャーに行けばいいんじゃない(みんな巨人やソフトバンクに行くよりは……カープファンである僕の心の声)。

 スポーツビジネスは、私にとって天職だと思っている。

 そして誤解を恐れずに言えば、世の中でとらえられているスポーツビジネス像は現実からかけ離れているものばかりだ。

 スポーツビジネスは特殊? いや、何1つ特殊ではない。
 プロスポーツの球団は赤字だらけ? そうでは、ない。
 そのスポーツが盛り上がるには、スーパースターが不可欠? 絶対要件ではないと、はっきり言える。
 プロスポーツは勝たなければ意味がない? これはもう、完全な思い込みだ。勝つだけではダメだ。

 著者は、もともとスポーツ関係の仕事をしたい、と考えていて、外資系のコンサルティングファームで4年間働いたあと、2007年にオリックス・バファローズに転職しています。

 その後、横浜DeNAベイスターズの社長室長を経て、2015年からはバスケットボールのプロリーグ、Bリーグの創設に関わり、2019年には、東アジアバスケットボール協会の理事をつとめておられます。現在は独立して、スポーツビジネスに関するコンサルティングを行っているそうです。

「なぜ、うちのスポーツはうまくいかないと思いますか?」
相談をされた時に、必ず受ける質問だ。そして次には、
「やはりスーパースターが必要ですよね?」
「代表が弱いからですよね?」
とたいていの人が口にする。
違う。選手たちは頑張っているし、彼らに罪はない。
日本のスポーツビジネスが世界に通用しないのは、他に理由がある。

 著者は、これからの日本のスポーツのメイントピックとして、「Governance」「Professional」「Arena」「Global」「Engagement」の5つを挙げています。

 こんなふうに英語の標語をあげられていると、外資系のコンサルティング会社出身っぽいよなあ……とツッコミを入れたくなるのですが。

 僕なりに日本語にすると「その競技全体を統括する組織がしっかりしていること」「経営者が『プロ』としての経済感覚を持つこと」「物販なども含めて自分たちで運営して稼げるスタジアム(競技場)を持つこと」「日本国内だけではなく、世界とのつながりを意識できるようにすること」「さまざまな顧客に満足してもらうために、競技場での観戦だけではなく、ネット配信などで観てもらい、ファン層を広げること」という感じでしょうか。

 読んでいると、いままで、僕が「スポーツをビジネスにして稼ぐこと」に対して、誤解していたこと、あるいは、古い考えに縛られていたことを思い知らされるのです。

「盛り上がるため、儲けるためには、お客さんをたくさん入れなければいけない」と考える人が圧倒的多数を占めているが、これは完全な思い込み、思い違いだ。たしかに動員数は大事な要素の1つではあるが、それがすべてではなく、もっと大事なものが存在する。

 野球やサッカーは、スタジアムの収容人数が大きい。お客さんをたくさん集めれば収益が増え、空間の盛り上がりも生まれる。タイトルのかかった重要な試合は、チケットの単価を高くすることもできる。

 それに対してマイナースポーツは、何万人も収容できる会場を使わない。しかも、人気に乏しいわけだから、チケット代が高いと足を運んでもらえない。

 私の考えでは、マイナースポーツはあえてお客さんを集めないという発想があってもいいと思う。たとえば数百人サイズのキャパシティなら全員無料で招待して、とにかく会場を盛り上げてもらえる人だけに来てもらう。言わばテレビのスタジオ観覧者的位置づけであり、「お客様」ではなく、一緒にコンテンツを盛り上げてくれる「演者」の役割を担ってもらう。

 そのうえで、人目を引く映像を作ってインスタグラムやツイッター、LINEやYouTubeなどのOTT(オーバー・ザ・トップ)サービスで配信し、売る。ここで言う「人目を引く」の定義は、「ルールが分からなくても楽しめる」「メジャーかマイナーかは関係なくカッコいい(あるいはキレイな)映像」といったところだ。

 スポーツにおけるOTTビジネスの売上高は大きいので、あえてそこを戦略的にロングテールの発想で攻めるという考えかたである。先日もカバディのプロリーグの映像をネット上で観たが、場内観覧エリア部分を暗くし、ピンスポットで競技エリア部分を当てて、成績表示やリプレイなどに最新映像テクノロジーを駆使した、見違えるほどのカッコいい世界が繰り広げられていて驚いた。決済を伴うサービスも、オンライン決済の選択肢が多様化しているので、SNSを身近に使っているユーザーなら困ることはない。

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