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安倍政権誕生と東アジア地政学の展開、緒に立つ日本復活

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2013年はいよいよ日本復活の年になるだろう。安倍政権の誕生は、世評のように民主党の失政による消極的選択と、シニカルに評価するべきではない。2010年代以降の日本の進路選択にかかわる変化ととらえるべきである。尖閣事件は1850年代の黒船来航に匹敵する意味を持つ。どちらも一事によって、日本の進路選択と国民世論の糾合を果たし、事後のトレンドを決定づけるものと言える。

黒船来航は日本と西洋との技術、経済力の圧倒的格差を見せつけ、植民地的隷属か経済発展による自立かの二者択一を明白にし、国民世論を開国と富国強兵、臥薪嘗胆に導いた。同様に尖閣問題は、対中連携(従属)か日米同盟かの二者択一を国民に迫った。共産党独裁体制の中国に従属する選択肢は民主主義と資本主義が高度に発展した日本にはなく、日本は必然的に日米同盟を基軸に、国家意識の高揚と国防の充実、経済発展を図る以外にない。1955年体制以来続いた「反共か容共か」、「親米か反米か」の神学論争は尖閣の一事によって決着がつき、以後論争の焦点は、日米連携のもとでいかに中国を封じ込めるかの戦術論議に移っている。そうした戦略課題に対して解を持っているか否かが、今回総選挙において大きく政党間の浮沈を分けた。

この変化は政治、地政学にとどまらない。

むしろ日本経済と市場に深遠なる変化を与えるものと予想される。対中宥和色、反ビジネス色、反成長色の民主党政権から日米同盟基軸、プロビジネス、成長路線の安倍自民党政権への転換は、真に55年戦後体制を終わらせ、22年間の円高デフレ株安時代を終わらせる画期ともなるだろう。リーマン・ショック以降日本に定着した「反成長主義」悲観論を一掃させるものとなるだろう。

(1)地政学が近代日本の興亡を規定した

明治維新体制と日米同盟が日本の盛衰を支配した


経済は一定の期間は、経済の論理によって変動し成長する。しかしより長期の歴史を考えると、経済の興隆と衰退を決定してきたのはひとえに政治であり、ことに安全保障を柱とする国家戦略であった。このことは明治以降の日本の歴史を振り返ると、一目瞭然である。1867年から1930年代末までの60年間近代日本が世界史にも稀な驚くべき躍進を遂げたのは、言うまでもなく明治維新による近代国家の樹立があったからである。1930年代後半から1940年代の経済大破局は、言うまでもなく第二次世界大戦により、近代日本が負けたからである。そして1950年から1990年までの40年間、再度日本は奇跡の復興と大成長を遂げた。戦後日本の経済躍進を支えたのは日米安保体制であった。1950年の朝鮮戦争によって日本経済は経済拡大の好循環が与えられ、それはバブルが弾けるまで続いた。

図表1:近代日本の興亡と地政学レジーム
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(2) 1990年の地政学環境変化=日米安保の変質と日本経済の挫折

1990年に起きた日本の突然の麻痺

さて1990年以降日本経済は歴史上にも稀な長期の停滞に陥った。この停滞は、戦後成熟した先進国が経験したものの中でも、際立っていた(図表2)。長期デフレに陥り名目経済はほぼ20年間完全なゼロ成長であった(図表3)。戦後の日本経済は1990年までの一本調子での著しい高成長と1990年以降の成長を停止した20年に二分されるが、これほどのコントラストは、どのような経済論理を駆使してみても、分析困難なものである。

図表2: 1980年以降の株価、地価、企業利益、雇用者所得などの推移
図表3: 1995~2011年の主要国名目経済成長

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1990年日米安保体制の変質


なぜ1990年に近代日本の4度目の転機が訪れたのかを理解するには、やはり政治の大きな枠組みが変化したという地政学的観点の導入が不可欠である。1990年に起こったことは、日米安全保障条約の変質である。1990年までの日米安保はまさに極東の防共の砦としての役割があった。日本はアジア前線における不沈空母として、政治・軍事・経済の全てにおいて米国の世界戦略の要にあり、その様に育てられた。従って1990年のソ連・共産主義世界体制の崩壊により日米同盟の役割は、一旦は終わった。それにもかかわらず日米同盟が存続し続けたが、その戦略的意義は大きく変質したと考えられる。1990年初頭、米国では安保瓶のふた論が語られていた。

なぜ米国は巨額のコストを払って日本に駐留するのかという問いに対してその意義は日本封じ込めにある、と説いたのである。世界第二位の経済強国となった日本が、再度軍国化し対外膨張を始めないとも限らない。日本の核武装、軍事大国化を抑制することがアメリカの軍事戦略上緊要だ、というのである。もちろん1989年の天安門事件で刃を見せた共産党独裁国家中国の存在もあり極東の不安が消えたわけではなかったが、当時の中国は米国の世界戦略にとっては取るに足らない相手であった。


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