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【読書感想】お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで

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お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで (光文社新書)
作者:ラリー 遠田
発売日: 2021/04/13
メディア: 新書






Kindle版もあります。

お笑い世代論~ドリフから霜降り明星まで~ (光文社新書)
作者:ラリー 遠田
発売日: 2021/04/13
メディア: Kindle版

霜降り明星のせいやが発した何気ない一言から、たちまち芸人の「第七世代」という言葉は一般的なものとなった。本書は、それ以前の世代とは誰のことなのか、どのような変遷を経て現在に至ったのか、「世代論」で戦後お笑い史を読みといていく。お笑いとは、時代の空気と流行に影響を受けるものであり、必ずや何らかの「世代」の傾向を刻印するものであることが一冊を通じて明らかになるだろう。これはもう一つの戦後史の姿である。

 子どもの頃は、『8時だョ!全員集合』や『ひょうきん族』が大好きでしたし、今でも『M-1グランプリ』は毎年観ています。
 とはいえ、最近はテレビのバラエティ番組もあまり観なくなって、YouTubeの動画や音楽を流しながら生活していることが多くなりました。

 「第七世代」というのも、言葉は知っていて、どの芸人たちがそれに属しているのか、というくらいはだいたい知っているものの、「第一から第六には、どんな人がいるのか?」と問われたら、全く答えられません。
 そもそも、僕自身は、「第七世代」の人たちが、どんなことをやっているのか、あまり観たことがない(テレビをほとんど観ないですし)

 著者は、「お笑い第七世代」という言葉が生まれた瞬間のことを、こう紹介しています。

 2018年12月22日深夜放送の『霜降り明星のだましうち!』(朝日放送ラジオ)の中で、霜降り明星のせいやはこんなことを言った。

 ほんまにその新しい、勝手に次の年号の世代みたいな、「第七世代」みたいなのつけて、YouTuberとかハナコもそうですけど、僕ら20代だけで固まってもええんちゃうかな。

 30歳、40歳の芸人さんの番組ももちろん出たいですけど、20代で区切る番組を。しかも勝手に『ワンピース』の「最悪の世代」みたいに名前つけたら、俺いける気すんねんけどな。なんか勝手にくくって、ハナコ、霜降り、何とか、何とか、ゆりやん(レトリィバァ)、何とかで、みんなが言うわけよ、ほうぼうで、「僕ら、第七世代ですから」って。

 ほんなら「第七世代?」って記者とか、上の人とかも「なんやねん、第七世代」みたいな、みんなが言う、第七世代、ほんなら、その世代で固まってやろう、みたいになるんちゃうかな。

 これがすべての始まりだった。霜降り明星は『M-1グランプリ』で優勝を果たした直後で勢いに乗っていた。せいやは軽い気持ちで口を滑らせたのだろう。
 しかし、「第七世代」というのは、最近出てきた若手芸人の総称として使い勝手がいい言葉だったため、発案者であるせいやの意図を超えてすさまじい勢いで拡散していった。そして、あっという間に一般的な用語として定着した。

 お笑い雑誌で「第七世代」の特集が組まれたり、テレビ番組で「第七世代」関連の企画が多数行われたりした。
 第七世代として取り上げられる機会が多いのは、霜降り明星、ハナコ、ゆりやんレトリィバァ、ミキ、EXIT、かが屋、宮下草薙、納言、ガンバレルーヤ、3時のヒロインといった芸人たちである。

 その後、第七世代の勢いはとどまるところを知らず、『第7キングダム』『お笑いG7サミット』(ともに日本テレビ)、『7G』(フジテレビ)のように「第七世代」を意味する言葉を掲げた番組が多数放送されるまでになった。
 そもそも第七世代とは何か? はっきりした定義はないが、本書では、昭和から平成に元号が移り変わった1989年以降に生まれた人と定義することにする。

 なるほど、「第七世代」という言葉・概念は、こんなふうにして生まれたものだったのですね。

 この本では、芸人を「第一世代」から「第七世代」に分類し、2人ずつ代表的な芸人を紹介しながら、それぞれの世代の特徴について論じているのです。

 本書で主として論じる各世代の芸人は以下の通りである。

・第一世代 いかりや長介(ザ・ドリフターズ)、萩本欽一(コント55号)

・第二世代 ビートたけし、明石家さんま

・第三世代 とんねるず、ダウンタウン

・第四世代、第五世代 ナインティナイン、ロンドンブーツ1号2号

・第六世代 キングコング、オリエンタルラジオ

・第七世代 霜降り明星、EXIT

 現在(2021年)では、第一世代の芸人たちは、もう亡くなっていたり、リタイア、あるいはセミリタイア、という状況なのですが、第二世代は、まだ現役で、お笑いの世界のトップであり続けているのです。
 それは、第二世代の凄さではあるのですが、下の世代からすれば、「ずっと上がつかえている」とも言えるんですよね。
 
 太平洋戦争後の日本のお笑い芸人たちにとっては「テレビで、自分をどう見せるか」というのがまさに生命線だったのです。

 この本のなかで「第一世代」の代表として取り上げられいる、いかりや長介さんと萩本欽一さんの「テレビでの芸」について。

 いかりやはテレビの前にいる視聴者の心理をよく理解していた。彼らは一様に移り気で飽きっぽい。だから、テレビでは常に目新しいものを提供しなくてはいけない。
 素人集団のドリフが百戦錬磨のプロの芸人たちに勝つための鍵はここにある、といかりやは確信した。

 ドリフでは新ネタを作り続けると決めた。素人同然の自分たちが付け焼刃で新しいネタを作っても、芸のクオリティではほかの芸人には及ばないかもしれない。
 でも、目新しさだけで視聴者の興味を引くことはできる。ドリフがテレビで生き残るにはこの方法しかない。

 いかりやが「テレビ芸」に目覚めた瞬間だった。
 寄席育ちのプロの芸人ではいからこそ、実力派のミュージシャンではないからこそ、彼らはいち早く覚醒することができたのだ。

 萩本が、並み居る芸人たちを出し抜いてテレビの世界で圧倒的な成功を収めたのは、早い段階で「テレビに芸は要らない」と割り切ったからだ。
 完成された芸は舞台で見せるものであり、テレビでは未完成のものを素材にする素人いじりこそが有効だと考えたのだ。

 たしかに、それは現在まで続くテレビ芸の1つの潮流となった。だが、80年代に入ってから、萩本の素人いじり自体が次第に古臭いものだと思われるようになってしまう。
 その最大の理由は、次世代のカリスマ芸人としてビートたけしが出てきたことだろう。たけしは世の中の矛盾をあげつらって笑うような過激な毒舌漫才を売りにしていた。

 たけしの登場によって、一般人のミスやとぼけた発言を笑いにする萩本の手法は、ともすると牧歌的で退屈なものに見えてしまうようになった。

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