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出稼ぎ、移住者たちを支えた街はいま 横浜・鶴見の「リトル沖縄」を歩く【止まり木の盛り場学 第10回】

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神奈川県横浜市鶴見区に「リトル沖縄」と呼ばれるエリアがあることをご存じだろうか?

大正時代、浅野財閥の総帥・浅野総一郎が工業地帯として開発したときに、埋立事業や工場建設の作業員、工場の工員に、多くの沖縄県出身者がこの地に集まった。当時、沖縄の暮らしは貧しく、県外・海外への出稼ぎや移住は頻繁だったという。

移住が始まってから100年以上が経過し、苦難の歴史が過ぎた今も、鶴見の「リトル沖縄」には独特に進化するグルメ文化が根付き、魅力のある街は健在。かつて、日本の高度成長を支えた「ウチナンチュ」たちが癒やしを求めた止まり木は今どうなっているのか?いつもの二人が鶴見駅に降り立った。

JR鶴見駅前は、三業地(花街)があった。名残は飲み屋街となっている。「以前よりやはりお店は減っていますが、いい店も健在です」と横田 フリート横田・渡辺豪

ダシ濃いめ!歴史を見守る立ち食いおでん

渡辺:リトル沖縄は、鶴見駅を背にして鶴見川を渡った潮田町(うしおだまち)周辺なので、ぶらぶら行ってみましょう。汗を流す労働者の街は、味付けも濃いめ。塩分が何よりのごちそうである私たち40代には、最高のグルメタウンに違いないですよ。

横田:大工場で働く工員さんたちが退勤後に立ち飲みした酒屋さんなんかも昔はずいぶんあったようですが、だいぶ減っています。残っている酒屋さんがあっても立ち飲みスタイルはやめていることも多いですね。……なんて言ってると、なんかイイにおいしますよ。おっ、おでんですよ、おでん!おお、おでん!

渡辺:おでんの具を買いに来ているお婆さんもいますけど、もしかしたら立ち食いできるかもしれないですね。

女将さん:ここでおでん食べてく?

横田:わっ。ありがとうございます。

路地で商売を続けるお店はほとんどなかった中、のれんが下がるお店。ショーケースには1本35円から海苔巻きも フリート横田・渡辺豪

女将さん:やっぱり鶴見だからね、お客さんには日本鋼管とか旭硝子の工員がいたよ。あと子供がおでんを立ち食いするのね。昔はね、子供らが本当にたくさんいた。旭硝子の寮があって、おでんを50人分とか大鍋で煮てね。鋼管にもお稲荷と海苔巻き入れた弁当を出前したっけ。宴会なら海苔巻きを何十本とね。だから朝なんて大忙しよ。バブルの後くらいまでかな。

ダシが効いて、しっかり濃い味付けが40男の身体に沁みる フリート横田・渡辺豪

横田:ダシがしっかり濃いめでうまいなあ。

女将さん:裏手が遊廓ね。私が娘だった時代は、そこは通っちゃダメと言われたけど、昔は女神輿が出たのよ。肩出して、胸にサラシ巻いて、お姉さんたちがワッショイワッショイってね。にぎやかだったよ〜。

横田:裏手の赤線、いってみましょう。

赤線跡にたたずむ元娼家、沖縄食材が揃うスーパーも

渡辺:戦前、工員さんが集住する工場地帯には、ある種のガス抜きのためか、売春街が作られることが多かったようです。ここ鶴見も同様で、戦後は「赤線」と名を変えた当時の建物が、僅かに残ってたはずですが・・・

横田:そういえば、お隣の川崎にも遊廓があって栄えましたたね。

一軒の元娼家にお住まいの方にお話を伺うことができた。

往時のカフェー建築が一軒だけ残っている フリート横田・渡辺豪

渡辺:こんにちは。お話を伺っても良いでしょうか。こちらは昔のいわゆる遊廓だった建物かと思いますが・・・

お住まいの方:そうですね。6人ほどの女の子が務めていたと母から聞きました。中は改装しちゃってますけど、昔は遊廓特有の小部屋が多い造りで。それから当時は赤線のお姉さんたちが祭りの神輿を担いだりして、それは賑やかだったんだそうです。

横田:赤線で働く女性たちが女みこしを担いだとは。昭和中期、他の街でホステスさんたちが担いだ「キャバレーみこし」も聞いたことがありますが、高度成長期の「女性街」が街の秘所ということでもなかったのが分かりますね。

渡辺:戦後になると、業者たちは戦前までの「籠の鳥」といった暗いイメージの払拭に努めたので、その一環だったのかもしれませんね。いずれにしても、街と切り離されたものではなく、地域密着の交流があったのは興味深いです。おでん屋の女将さんも同様の思い出を語ってくれましたし、よほど強い印象を残すくらい賑やかだったんでしょうね。貴重なお話、ありがとうございました〜。

赤線近くのスナック街。既に廃業しているようだ フリート横田・渡辺豪

沖縄コミュニティのメインストリート、仲通りを歩く二人。沖縄食材店に足を向ける。

現在の店主(40代)の父が開いたという沖縄食材店。店主はこの若さだが、沖縄生まれということで、コミュニティ内では「一世」とされている。

フリート横田・渡辺豪

お店の開業以前は、地元沖縄から直接送って貰わなければ、沖縄食材が入手できなかったという。代わりに、沖縄では高かったお米や果物を沖縄へ送っていた。

各種泡盛の他に、ハブ酒なども手に入る。このほか、沖縄のソウルフード「スクガラス」なども売られていた フリート横田・渡辺豪

併設された喫茶店では本格的なソーキそばに舌鼓を打つことも フリート横田・渡辺豪

リトル沖縄には、周辺の沖縄出身者のための食材スーパーもある。取材を忘れて泡盛の瓶や沖縄食材に飛びつく渡辺 フリート横田・渡辺豪

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