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旭川イジメ凍死事件 なぜ学校は爽彩さんのSOSに耳を傾けなかったのか 「重大事態」と判断するタイミングは何度もあった - 渋井 哲也

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 北海道旭川市のいじめ凍死事件に多くの人が関心を寄せている。文春オンラインが報じた記事によれば、学校が十分な対応をしていなかった様子が見て取れる。その結果、当時中学校2年生の廣瀬爽彩(さあや)さん(14)は自宅を出たきり、行方不明となった。そして2021年3月、爽彩さんの遺体が見つかった。いったい、何をすれば、爽彩さんの命を救えたのか。そして、今からでもできることは何なのか――。

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 多くのいじめや学校の不適切指導を取材してきた経験から、この痛ましい事件について検証してみたい。

何のための「いじめ基本方針」なのか

 爽彩さんがいじめを受け始めたのは2019年4月中旬ごろだったという。子どもたちの溜まり場になっていた児童公園で2学年上のA子と知り合い、また、ソーシャルゲーム「荒野行動」で知り合ったA子の友人・B男とも、この公園で出会った。さらに、別の中学校に通うC男とも知り合い、そうした関係の中でいじめが始まっている。この段階で、いじめの実態に気がついた周囲の大人たちはいない。


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 4月には一度、爽彩さんの母親が担任にいじめに関する相談をしていた。その後、5月に2回、6月に1回、それぞれ相談をした。しかしながら、担任は真剣に受け止めようとしていない。担任は「あの子たちはおバカだからイジメなどないですよ」「今日は彼氏とデートなので、相談は明日でもいいですか?」と発言したという。担任としては、まだ中学に入学したばかりのため、保護者が過剰に心配したと判断したのかもしれない。だとしても、いじめの有無は確認できずとも、訴えがあったことは、学校内で設置されたいじめ対策組織で共有しなければならなかった。

「旭川市いじめ防止基本方針」(2019年2月)によると、各学校でも個別に「学校いじめ防止基本方針」を作ることになっている。それによって「個々の教職員による対応ではなく組織として一貫した対応」が必要とされている。そして、いじめの学校対応を明示することで、児童生徒および保護者に「安心感を与えるとともに、いじめの加害行為の抑止につながる」とされている。市内の各中学ともに、ホームページに方針が掲載されている。いじめ対策組織で方針を協議すべきであった。

 学校でのいじめ問題を取材すると、学校側が「いじめ」か「いじり」か「悪ふざけ」かの違いにこだわるあまり、いじめの認知が遅れるケースが少なくない。その認知の遅れは、いじめに関するアンケートに取り方や解釈によることもある。

アンケートは記名式だったのか、無記名だったのか

 爽彩さんが通っていた中学校の校長は、文春オンライン取材班の取材に対して、5月のいじめアンケートでは「あるという結果はあがっていないです」と回答した。このアンケートはどんなものだったのだろうか。記名式だったのか。それとも無記名だったのか。それによっても、子どもたちの回答は変わってくる。一般的ないじめアンケート内容では、これまでのいじめ事件でも詳細がわかっていないケースが多い。

 あるいじめ自殺事件では、毎年行われるいじめアンケートからいじめに関することが浮かび上がらなかった。しかし、自殺後のアンケートでは無記名で行われ、いじめの可能性がある内容が書かれていた。別のいじめ不登校では、生徒が担任に向けて手紙や作文を書き、いじめを訴える内容を記したり、中には「死にたい」と訴えたものもあった。

 文部科学省「国立教育政策研究所」の生徒指導・進路指導研究センターが発行する「生徒指導リーフ」(2015年3月)は、「いじめアンケート」について解説している。それによると、いじめの調査には「無記名式アンケート」を実施することになっている。「記名式アンケート」では「手遅れ」になり、現在進行中であればあるほど、「記名式」には回答しにくいためだ。

 4月の段階で母親が相談をしているが、この点を踏まえたアンケートだったのかどうかも気になる。それとも、毎年行われる一般的なアンケートだったのか。子どもは学校に対して、いじめについて隠す心情があると、白紙か、簡素な回答が多くなる傾向がある。どんなアンケートだったのだろうか。アンケートの回答に「いじめ」という言葉がなくても、「いじめがない」とは言えない。いじめの加害行為は、個別の行為によって判断されなければならない。「これがいじめ」という定型をイメージすると危険である。

「中学校から『いじめはない』との報告を受けていた」

 また、旭川市教委は「当時通っていた中学校から『いじめはない』との報告を受けていた」としている。詳細な調査が行われていない。市教委が調査前から「いじめはない」と判断した類似の例としては、茨城県取手市の中学生が自殺したときの対応がある。学校側が「いじめはなかった」と説明。いじめを隠したまま、アンケートを行ったが、市教委は「いじめによる自殺ではない」「重大事態ではない」と決議した。その上で、調査委を設置していたが、文科省の指導を受けて、調査委が解散となった。

 さらに6月になって、爽彩さんは川に飛び込んでいる。それによって警察も動いている。「いじめ防止対策推進法」では、「生命、心身又は財産に重大な被害」があった場合、それがいじめを原因としていれば「重大事態」となる。文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(2017年3月)では、「事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのではなく、『疑い』が生じた段階で調査を開始しなければならない」としている。

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