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  • 2021年04月26日 14:54 (配信日時 04月25日 11:25)

秋吉 健のArcaic Singularity:業界を襲う半導体供給不足!異常事態「商品がどこにも売っていない」はなぜ引き起こされたのかを解説【コラム】

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テクノロジー業界の半導体不足について考えてみた!

先日、新しいPCを購入しました。秋葉原にある某PCショップが展開するショップブランドのゲーミングPCだったのですが、欲しいスペックにBTOでカスタマイズしたところ総額で50万円にもなってしまい、目が飛び出そうになりました(結局それでも買った)。

とんでもない価格になっているのは内蔵ストレージ(SSD)を大量に積んでいるためで、一般的な構成価格で言えば35万円程度なのですが、それでも過去に例を見ないほど部品価格が高騰している印象です。昨年の秋頃であれば、30万円以下で組めていたような構成でしょう。

最も価格高騰を感じさせるのはGPU(グラフィックボードもしくはグラボ)です。TVや新聞でも「マイニング」という言葉を目にすることが増えたかと思いますが、仮想通貨の人気がマイニング需要を爆発させ、市場からグラボが枯渇したのです。

しかしながら、これはグラボに限った話ではありません。CPUやチップセット、メモリーなど、あらゆる半導体部品が枯渇や供給不足の危機に直面しているのです。そしてその影響はPC業界のみならず、自動車業界やスマートフォン(スマホ)業界にも暗い影を落とし続けています。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回は半導体業界を覆う慢性的な供給不足とPC市場やスマホ市場などへの影響について考察します。

筆者は超小型のキューブPCでハイエンドゲーミング環境を作るのが好きな変人である

■風が吹くとグラボが無くなる

まずは冒頭で紹介したグラボの枯渇について、もう少し詳細に解説しましょう。

事の発端は、2020年11月頃から始まった仮想通貨の高騰です。それまでも何度か価格の乱高下を繰り返し、仮想通貨長者を生み出すなどして話題となっていたビットコインなどの仮想通貨が、昨年11月を境に突然価格が急上昇し始めたのです。

その背景にはコロナ禍による投資マネーのダブつきがあります。浮いた資金の投資先として目をつけられた仮想通貨はそのまま価格の上昇を続け、2月22日には1BTCが約600万円にも達しました。2020年10月時点から計算すれば、わずか3ヶ月で時価が5倍以上に膨れ上がった計算になります。そしてこの流れは他の仮想通貨でも同様でした。

その後は乱高下を繰り返しつつも価格は緩やかに上昇し、現在は世界の情勢不安などから若干の下げ時期に入っていますが、それでも半年前より数倍の価値を維持しています。

完全にバブル状態となっており、いつ弾けてもおかしくない状況だ(bitflyerより引用

この加熱しすぎた仮想通貨ブームが、グラボの枯渇を引き起こしました。仮想通貨のマイニング(取引を承認する作業)には、膨大な演算能力が必要です。その演算のためにグラフィックボードが必要とされ、世界中のマイナー(マイニングを行う人々)によって買い占められたのです。

その需要増は、恐らく一般の人々が想像しているものを遥かに超えるレベルです。世界では「マイニング工場」と呼ばれる場所まで作られ、何百~何千というマイニング専用マシンによって仮想通貨の承認作業と報酬の授受が行われています。

これによって、世界中のPC市場からあらゆるグラボが枯渇し、最新モデルのみならず、数世代前の型落ち品や、中古のグラボまでが大高騰する事態となりました。

「価格.com」で検索してもハイエンドグラボはほぼ全てが全ショップで売り切れており、価格が付けられない超異常事態だ

■半導体業界を襲った七転八倒

枯渇しているのはグラボだけではありません。CPUやチップセット市場に目を向けてみれば、PC向けもスマホ向けも各社が在庫と契約の争奪戦を繰り広げている状況です。

CPUが慢性的な供給不足に陥った背景は、GPUよりも若干複雑です。そもそもの発端は、Intelが製造プロセスの微細化に失敗し、4~5年も技術的な遅れを取ったことから「需要の大渋滞」を引き起こしてしまったことです。

CPUやチップセットの製造需要は、その製造プロセスによっていくつかの層に分けられています。最新の製造プロセスはPC用CPU向けとして、1世代前の製造プロセスは組み込み機器用チップセット向けとして、などです。

ところが、Intel CPUの製造プロセスが微細化されない状況が数年に渡って続いたために同じ製造プロセスの製造ラインへ需要が集中し、各業界や産業による「製造ラインの奪い合い」が始まってしまったのです。

製造プロセス微細化の停滞が世界中の産業に大ダメージを与えてしまった

この半導体の供給不足状態は2~3年前より始まっており、出口の見えない状況にIntelなども増産や生産ラインの増加(工場の新設)などで応急処置的に対処してきましたが、ここに追い打ちをかけるようなトラブルが相次ぎます。

2021年2月にはアメリカ・テキサス州を大寒波が襲い、停電や給水停止の影響で韓国のサムスン、ドイツのInfineon Technologies、オランダのNXP Semiconductorsなどの半導体工場がまとめて稼働停止を余儀なくされました。

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