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焦点:上がる住宅価格とコロナ後の経済、問われる中銀の判断


[ロンドン 21日 ロイター] - 世界中の住宅価格は何年にもわたって上昇しており、新型コロナウイルスのパンデミック期間中さえその流れは止まっていない。そこで各国・地域の中央銀行は、厄介な問題に直面せざるを得なくなっている。つまり中銀に何か対応すべき措置があるとすれば、実際にそれを行う必要があるのかということだ。

オーストラリアからスウェーデンまでさまざまな場所で起きている住宅価格高騰は、資産効果をもたらすとして政府からしばしば温かい目で見守られてきた。だが、歴史を振り返ると、バブルが制御不能になるリスクや、何百万人もが手頃な価格で住宅を買えなくなるという膨大な社会的コストが発生する可能性もはらんでいる。

皮肉なことに、低金利やマイナス金利が生み出した緩和マネーが住宅価格を押し上げているのに、金融政策の重要な決定要素の1つである消費者物価指数(CPI)を中銀が算定する際に、住宅価格はほとんど反映されない。

確かに家賃もしくは住宅修繕といった「住居費」は、ウエートにこそ差があるものの、各国のCPIに含まれる。米国はCPIの40%強、ユーロ圏では6.5%といった具合だ。しかし、住宅価格自体は「蚊帳の外」に置かれ、住宅価格の上昇スパイラルが加速するとともに、もはやCPIに取り込まない方針は通用しないとの声が多くなっている。

数年のうちに世界的に再び急激なインフレ局面が到来するとの予測を記した「人口動態大逆転(The Great Demographic Reversal)」を共同で執筆したマノージ・プラダーン氏は「われわれが実際、物価動向を適切に織り込んでいるかどうかという議論は、今後どんどん増えていく。住宅価格が多大な関心を集め始めるだろう」と述べた。

ナイト・フランク指数に基づく世界の住宅価格は、過去10年間で60%上昇。コロナ禍で世界経済が窒息した昨年でさえ価格上昇率は平均5.6%、一部地域では20─30%に達した。

住宅価格上昇を長らくけん引してきたのは低金利だが、持ち家推進のための既存の政府補助金や、最近ではパンデミックに伴う痛手の救済目的で打ち出された住宅課税の一時凍結なども影響を及ぼしている。

これらの一時的な支援策は、やがて撤廃されるだろう。ただ、どの国の政府も、複数の住宅所有禁止や建築規制緩和といった住宅価格の持続的な抑制効果を持つ措置は政治的な抵抗が強いため、実行に及び腰だ。

そのため中銀に何ができるかという疑問が浮上してくる。

<無視できない存在感>

こうした観点で先駆けとなったのは、ニュージーランド政府だ。今年2月、準備銀行(中央銀行)に対して金利動向が住宅価格に及ぼす影響を検討するよう指示した。同国の住宅価格は昨年23%上昇した。

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も先週、生活費上昇において住宅が果たす役割を測定することが、今年まとめる予定の金融政策戦略見直し計画の重要なポイントの1つとして登場していると指摘した。

現実の物価上昇率がCPIで示される数値より高いとすれば、中銀ないし政府の政策は本来そうあるべき状況よりも緩和的になってしまう。プラダーン氏は「住宅価格がCPI経由でインフレを警告してくれないなら、経済は過熱する公算がより大きくなり、やがて全体的な物価圧力に見舞われる」と解説する。

現時点で、貸し家の家賃価格は抑え込まれている。それはパンデミックによる困窮か、あるいは低金利と在宅勤務が住宅購入を促進していることが原因だ。

モルガン・スタンレーのチーフ・クロス資産ストラテジスト、アンドリュー・シーツ氏は、これは誤解を招くシグナルを発するのではないかと懸念する。「賃貸市場は軟化する一方、住宅市場は堅調になる中で、(家賃の低調さが)ディスインフレ要因として出現しかねない」と話した。

もちろんCPIから住宅価格を除外することについて、強く肯定する意見も存在する。住宅費はほとんどの人にとって継続的な費用ではなく一生に一度の買い物だが、中銀の目的は継続的費用の推移を把握することだからだ。

CPIに住宅価格を取り込むのは、その極端な変動の大きさから実際問題として無理だとの見方も多い。

それでも維持管理や修繕といった住宅所有に絡む費用を含むCPIへの採用を検討する中銀は、今後増えていくかもしれない。今でも米連邦準備理事会(FRB)、日銀、ニュージーランド準備銀行、オーストラリア準備銀行が利用しているCPIには、いわゆる住宅所有関連費の項目が存在する。だが、イングランド銀行(BOE)が採用するCPIにはそれがないし、ECBが政策判断に使う主要CPIも織り込んでいない。

ECBは住宅所有関連費を取り込むのに賛成しているものの、ユーロ圏19カ国から適時にデータを集める必要や域内の住宅所有格差が、実際の作業を難しくするだろう。

エコノミストはこうした費用がユーロ圏のCPIに反映された場合、上昇率は0.2─0.3ポイント上振れするとみている。つまりECBが掲げながら、ずっと達成できていない2%弱という物価目標に近づくという面で、これは重要な意味がある。

<中銀関与の危険性>

とはいえパンデミックがもたらした不確実性を踏まえると、CPIに住宅価格を取り込むという政策転換は、最終的に危険な賭けになるかもしれない。

折しも長い間眠っていたインフレが覚醒しようかという現在の局面で住宅価格を含めれば、CPIは大きく上振れし、経済がまだパンデミックの傷をいやしている段階で、中銀に引き締め姿勢に動くことを迫る圧力が強まってしまう。

一方、INGバンクなどの一部市場関係者は、パンデミックに伴って導入された支援策が巻き戻されていけば、幾つかの例外はあるにしても住宅価格は落ち着いていくのではないかと予想している。

3月末のニュージーランドがそうだったように、有権者の怒りが他の国の政府を突き動かし、課税強化を通じて不動産投資を抑える可能性もある。

中銀が住宅市場の対応にまで乗り出すことに反対する人々は、金融引き締めが住宅供給を妨げ、問題を悪化させる恐れがあると警鐘を鳴らす。

ジョージ・ワシントン大学のダニー・ライプツィガー教授は、キャピタルゲイン税率引き上げや住宅供給増加など、中銀の守備範囲外の規制や政策によって、住宅市場の過熱をより効果的に冷やすことができると強調。「ECBが家賃や住宅所有関連費をCPIに加えたとしても、問題だとは全く思わない。だが、ベルリンもしくはマドリードの住宅価格について私が心配したとして、ECBに善処をお願いするのは正しい方法ではない」と明言した。

(Sujata Rao記者)

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