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「平時」の日本、「有事」のイギリス 明暗分けたコロナ対策

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[ロンドン発]ボリス・ジョンソン英首相は4月20日、「イギリスは新型コロナウイルスとの戦いで前進していることは疑いの余地がありません。(正常化に向けた4段階)ロードマップを進めています。3300万人が1回目のワクチン接種を受けました(日本の1回目接種は110万人)」と胸を張った。

「しかし、わが国の科学的知見の大部分は今年のある時期にもう一つの山がやって来るという見解を持っています。このため秋に3回目の接種を行い、防御を強化します。今日、新しい抗ウイルス薬タスクフォースを立ち上げました。早ければ秋にも安全かつ迅速に利用できるようにします」

「検査で陽性になった場合、感染がより重篤な病気に進行するリスクを大幅に減らせるタブレットを自宅で服用できる可能性があります。陽性になった人と一緒に暮らしている場合は、自分も感染して発症するのを防ぐため数日間服用できる錠剤ができているかもしれません」

イギリスのボリス・ジョンソン首相(Getty Images)

イギリスは大規模ランダム化比較試験を行い、ステロイド系抗炎症薬デキサメタゾンや世界初のインターロイキン6(IL-6)阻害剤として大阪大学と中外製薬によって共同開発されたアクテムラが重症患者の死亡リスクをそれぞれ3分の1、4分の1も減らすことを突き止めた。

次なる目標として掲げられたのが抗ウイルス薬だ。有力候補は「富士フイルム富山化学が開発した新型インフルエンザの治療薬アビガン。モノクローナル抗体(1種類のB細胞が作る抗体のコピー)ではカシリビマブまたはイムデビマブ」(英グラスゴー大学のジャネット・スコット講師)。

「臨床試験が最も進むのがインフルエンザ治療のために開発されたモルヌピラビル。米ファイザーのプロテアーゼ阻害剤はアメリカで第1相試験中。モノクローナル抗体は展開が難しいが、介護施設や個人宅に近い輸液センターで投与できる」(英キングス・カレッジ・ロンドンのペニー・ワード客員教授)という。

※写真はイメージです(Getty Images)

英のコロナ対策は重層的

科学者の英知を結集したイギリスの対コロナ戦略は重層的だ。

(1)非医薬品介入
ロックダウン(都市封鎖)に象徴される行動制限。2メートルの感染防止距離、マスク着用、換気、手洗い励行

(2)全員検査
自分でもできて30分で結果が分かる迅速検査キットの実施を全市民に呼びかける。感染の広がりをできるだけ正確に分析し、疫学数理モデルで流行を予測

(3)ゲノム解析
PCR検査で陽性と判定された検体の5~10%のゲノムを解析してウイルスの変異と感染拡大をリアルタイムで検出

(4)ワクチン開発
エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発に取り組んできた英オックスフォード大学ジェンナー研究所はわずか300日で新型コロナウイルスワクチンの開発に成功。ジョンソン首相は「300日を100日に短縮する」と宣言

(5)ワクチンの集団予防接種
早期にワクチン候補を大量に青田買いするとともに国内の緊急使用の承認プロセスを迅速化。ワクチン接種と自然感染による集団免疫の獲得でパンデミックの終息を目指す

(6)大規模ランダム化比較試験
すべての市民に原則無償で医療を提供するNHS(国民医療サービス)を通じて大規模なランダム化比較試験を実施。急性呼吸器不全症候群(ARDS)の治療薬である抗炎症制剤としてステロイド薬デキサメタゾンや関節リウマチ薬アクテムラの効果を確かめた。さらに抗ウイルス薬の臨床試験にも着手

(7)アプリを使った接触追跡
英政府はNHSの年間予算の45%に相当する370億ポンド(約5兆5300億円)の資金を投入してテスト&トレース(検査と接触追跡)のシステムを開発。しかし入院患者の3分の2を発見できなかった。ドイツでも接触追跡アプリは感染が拡大すると75%の症例は追跡できなかった

菅義偉首相(共同通信社)

緊急事態宣言を繰り返す日本

東京五輪・パラリンピック開催をG7(先進7カ国)オンライン会議や日米首脳会談で誓った菅義偉首相は4月25日から5月11日まで東京、大阪、兵庫、京都の4都府県を対象に緊急事態宣言を出す方針だ。宣言が出されるのはこれで3回目になる。

野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏はコラムの中で、緊急事態宣言が関東圏や関西圏で1カ月発令された場合、個人消費は関東圏で約1兆4240億円、関西圏で約5080億円の計約1兆9320億円減ると試算。実質GDP(国内総生産)は計0.35%押し下げられ、失業者は約7万6600人増加する。

厚生労働省によると、日本の感染者は累計で54万2049人、死者は9761人と欧米に比べて被害が一桁も二桁も少ない(4月22日時点)。しかし約4カ月に及ぶ都市封鎖とワクチンの集団接種で感染が激減したイギリスの入院患者は2004人まで減ったのに対して、日本は4万4048人に達している。

人工呼吸を装着する患者はイギリスで300人、日本の重症患者は805人。死者15万人超と欧州最悪の被害を出した“劣等生”イギリスは先に述べたように包括的な対策で未曾有のコロナ危機から抜け出しつつある。5月に統一地方選を控えるジョンソン首相の支持率も急回復している。

緊急事態宣言で行動制限をいくら厳しくしても時間稼ぎにしかならない。日本は新型コロナウイルスの感染力がそれほど強くなかった昨年春の成功体験に引きずられ過ぎている。だから行動制限を緩めては感染の拡大を招き、医療現場が悲鳴を上げてはまた宣言というモグラ叩きを繰り返している。


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