- 2021年04月23日 15:47 (配信日時 04月23日 09:15)
会社が"善意"で社員のクビを切る「45歳のお荷物」を退場させる新しいリストラの手法
1/2コロナ禍で人事部社員が注目しているのが、「セカンドキャリア支援制度」だ。キャリア開発研修などを通じ、45歳以上の社員が退職して独立起業や他社への就職といった“転進”を支援する名目の早期退職優遇制度だ。ジャーナリストの溝上憲文氏は「臨時で実施する希望退職者制度と異なり、この新リストラ策を常時実施しようと布石を打つ企業が増えている」という――。
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善意の「セカンドキャリア研修」で退職に誘導する手口
コロナ禍の中、会社と社員の関係がどんどん変わっている。先日、人事関係者が集まるあるセミナーで大手メーカーの人事部長がこんな意味深な発言をした。
「自己裁量を与えることで社員の自立を促し、労働時間に縛られない働き方改革はコロナ前からの課題でした。それが、コロナでテレワークが普及し、仕事の管理や成果を含めて自律的に高い競争力を発揮できる人材の重要性がより浮き彫りになりました。同時に企業の存続と発展を目指すには、ビジネスの変化に応じて必要な人材をいかに外部から集められるかが重要になってくる。その障害となる年功賃金や終身雇用の排除はもちろん、労働移動は避けられないだろう」
人事部長が言いたいのは、要は、会社が生き残るには成果重視の賃金体系に移行し、貢献度の高い人材を優遇し、優秀な人材を外部から調達するようにするということ。
それは、終身雇用をやめて「労働移動」、つまりリストラによる人材の入れ替えを常態化するということだ。驚いたのは、人事部長の発言に思いのほか、賛同者が多かったことだ。
コロナ禍で始まったテレワークや時差通勤、フレックスタイム制など自由度の高い働き方はおそらくアフターコロナでも続くだろう。これを歓迎する社員も多い。
しかし、自由度の高い働き方の代償として、成果による報酬格差と会社からの“退出”を余儀なくされるケースも出てくる。
「早期退職優遇制度」を「セカンドキャリア支援制度」と名称変更
社員退出の方策として、セミナーの参加者からは政府に対して、「解雇規制の緩和」や「解雇の金銭解決制度の早期実現」の声があがったが、現実的な方策として誰もが納得したのは大手サービス業の人事部長の以下の発言だった。
「当社は常設の『早期退職優遇制度』を導入している。これは45歳以上の社員が退職して独立起業や他社への就職を支援する制度ですが、これまで手を挙げる人は少なかった。そのため、『セカンドキャリア支援制度』という名称に変更した。45歳の節目にキャリア研修を実施し、今までのキャリアを振り返るとともに、今後どう生きていくかを問い直す機会を与え、今の会社では実力が発揮できそうにない社員にはセカンドキャリア支援制度を利用し“転進”を勧める。支援の仕組みは、退職金割増金に加えて、退職前の1年間は就業しながら独立準備や再就職活動を認めるほか、新たに副業を認めて、週2日程度他社で働くことを通じて次のキャリアに向けた準備ができるようにしている」
「希望退職者募集」は一時的だが「セカンドキャリア支援制度」は常時
転進とはうまいネーミングだが、キャリア研修と「セカンドキャリア支援制度」をセットにしたリストラ制度であることは間違いない。
似たような制度に「希望退職者募集」があるが、コロナ禍のリストラ策として現在、多くの上場企業が実施している最中だ。希望退職者募集とは、業績悪化などの際に期間と人数を限定して退職を促す臨時的なプログラムであるのに対して、セカンドキャリア支援制度(早期退職優遇制度)は、時期・人数や会社の経営状況に関係なく、社員自らの意思で退職する人を優遇する常設された制度という違いがある。
希望退職者募集は数百人、場合によっては数千人単位で一挙に実施されるが、優秀人材の流出だけではなく、残された社員の負荷の増大やモチベーション低下といったデメリットもある。その点、早期退職優遇制度は毎年一定人数に限定されるのでデメリットは少ない。
しかも「キャリア開発」という研修を通じて退職に誘導するなどやり方も巧みだ。実際に50歳社員を対象にキャリア研修を実施している消費財メーカーの人事担当者はこう語る。
「20~40代にやってきた職務や経験を書いて振り返ってもらったうえで、今後、会社に対してどういう形で貢献していくのかを具体的に発表してもらう。それに対して外部の講師から『あなたのスキルや経験では貢献するのは難しい』とか『本当に会社に貢献したいのであれば、今まで以上に努力して新たなスキルを学び直す必要があるが、あなたにそれができるでしょうか』といった厳しい指摘が飛ぶ。研修を通じて自信を失い、打ちひしがれる人も出ますが、研修後に人事から『まだ若いですし、そろそろ外で活躍することを含めて考えてはどうですか、早期退職優遇制度もありますよ』とやんわりと言うと、しばらく考えて制度を利用したいと言ってくる」
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もちろんすべての企業がキャリア開発研修をリストラのツールに使っているわけではない。キャリア研修を手がけるインストラクターはこう語る。
「大手企業の中には、中高年社員をもう一回鍛え直して、長く働いてもらうためにキャリア研修を実施するところもあれば、研修を使って辞めさせたいという企業に分かれる。実際に人事から『どうやったら辞めてもらえますか』という相談を受けることがありますが、そうした企業からの講師依頼は断るようにしています。しかし、経営者や人事のニーズに応じて、引き受ける人材サービス会社や同業のインストラクターも少なくない」
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