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2012年衆議院総選挙に見出す「ネット選挙」に関する新たな論点

最近いくつかネット選挙について議論を書いてきたが、2012年の衆議院総選挙において、ネット選挙運動に関して、いくつかの興味深い論点を見出すことができる。3つの側面から記してみたい。

1.候補者ではない国会議員や首長

まだきちんとした分析はできていないが、衆議院選挙に自ら立候補した候補者たちの多くはおそらく「念のため」ソーシャルメディアの更新を自粛していた。しかし、候補者ではない参議院の国会議員や政党の代表を務める地方自治体の首長らのなかにはソーシャルメディアの更新を続ける国会議員は少なくなかった。あまり知られていないが、公職選挙法が選挙運動におけるメディアの利用を制限しているのは候補者だけではない。支援者を始めとする有権者全般に対しても規制もかけている。2012年12月5日には当時の藤村官房長官がソーシャルメディアを通じた選挙運動ともとれる動向に言及したりもした。

「橋下氏ツイッター「公選法抵触の恐れ」 官房長官が指摘」『朝日新聞デジタル』
http://www.asahi.com/politics/update/1205/TKY201212050519.html

2.有権者

ソーシャルメディアは日常の出来事に気軽に言及し、共有するというのが一般的な利用の仕方だ。本来これらの行為は公職選挙法に照らすと、厳密にはかなりグレーゾーンに入っている。だが政治や公職選挙法について意識することの少ない多くの有権者にとっては、選挙運動も日常的な出来事にすぎない。マスメディアで見かける著名な国会議員の応援演説を見ると、写真を撮影し、ソーシャルメディアにアップし、撮影した動画を動画共有サイトにアップした。

たとえば、下記のURLはYouTubeで「野田首相 応援演説」で検索したものだが、有権者たちが(その大半はおそらく選挙運動や公職選挙法を意識せずにアップしたであろう)多くの応援演説の動画を見つけることができる。

http://www.youtube.com/results?search_query=%E9%87%8E%E7%94%B0%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%80%80%E5%BF%9C%E6%8F%B4%E6%BC%94%E8%AA%AC&oq=%E9%87%8E%E7%94%B0%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%80%80%E5%BF%9C%E6%8F%B4%E6%BC%94%E8%AA%AC&gs_l=youtube.3...4952.8621.0.8931.28.25.1.0.0.3.238.3021.9j12j4.25.0...0.0...1ac.1j4.4j5wJi9Rg2U

3.マスメディアやIT企業によるソーシャルリスニングの萌芽と事後的なビッグデータの分析


今回興味深かったのは、朝日新聞が「ビリオメディア」という特集を組んで、選挙期間のTwitterにおけるつぶやきの推移を政党ごと、政策ごとの2つのアプローチで可視化して公開した。

『朝日新聞 ビリオメディア』
http://www.asahi.com/special/billiomedia/twitter_bunseki.html#kijiList


途中データ集計にミスがあったり、データ量を円状に可視化する際に、おそらくスコアを面積ではなく半径に比例させていたため過剰にスコアの差が可視化されてしまうなどの(朝日新聞か分析を担当した企業かどちらかはわからない)ミスも散見されたものの、朝日新聞が日本のマスメディアで、アメリカ大統領選でも話題になった、「ソーシャルメディアのビッグデータの動向に耳を傾ける」という「ソーシャル・リスニング」に選挙と並行して取り組んだことはデータジャーナリズムの観点から見ると、とても先駆的なものだったといえる。

また選挙のあとになってから、IT企業などもいくつかのソーシャルメディア上の大量データの分析を公開した。

『衆議院議員選挙とYahoo!検索の驚くべき関係 - "Yahoo!ビッグデータ" -』
http://searchblog.yahoo.co.jp/2012/12/yahoobigdata_senkyo.html

『衆議院選挙2012「ソーシャルメディア分析」』

『日本の課題となる政策別口コミ数』
http://www.nttcoms.com/sp/121226/index.html
『第46回衆議院議員選挙 小選挙区当選者データ分析』(ただし、単純集計のみ)


さて、ここまで見てみると、候補者自身によるネット選挙運動を除く、その他の主要なステイクホルダーがインターネット・メディアをすでに利用し始めたことがわかる。

2001年にPCの利用率が50%をこえ、2006年にインターネットの私的利用経験が50%を越えたことが知られている。ソーシャルメディアのユーザー数は調査により違いはあるが、主要サービスで2000万人近いと言われている。

公職選挙法はその目的を以下のように定めているが、現状では公職選挙法がインターネットについて何も規定していないがゆえに、情報化著しい現状において、公職選挙法の目的に寄与できていない可能性が高い。
第一条 この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。
いよいよ、公職選挙法の改正が射程に入ってくるわけだが、先日も記したようにそれではどのように改正するべきなのだろうか。他のメディアとの整合性をどのようにすべきなのだろうか。

目的の改正をしないままに、公平で均質な政治空間に寄与するような改正を行うのか、それとも理念や目的を改正し、政治の透明化や政治と国民の距離を近づけること、政治家の政策立案競争を促進することを主眼においたものにするのか。筆者は後者こそが必要と考えるが、どうだろうか。来夏の参議院選挙に向けて、公職選挙法の改正は今度こそ年始の政治日程に乗ってくる可能性が高い。論点の設定と議論が必要だろう。

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