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2012年 冬休みに読みたい。食の安心・安全について考える10冊 その2

その1の続き

放射能関連で中心にまとめたその1に続き、その2ではそれ以外のテーマのものでセレクトしました。

選考基準:おおむね2012年中に発行された書籍で食の安心・安全など食の分野をテーマとしてあつかっているものです。

なお、内容紹介については全てamazonの各書籍のページの内容紹介から引用しています。

飼い喰い――三匹の豚とわたし 内澤 旬子 リンク先を見る

飼い喰い――三匹の豚とわたし

内容紹介

自分で豚を飼って、つぶして、食べてみたい――。世界各地の屠畜現場を取材してきた著者が抱いた、どうしても「肉になる前」が知りたいという欲望。廃屋を借りて豚小屋建設、受精から立ち会った三匹を育て、食べる会を開くまで、「軒先豚飼い」を通じて現代の大規模養豚、畜産の本質に迫る、前人未踏の体験ルポ。

内容(「BOOK」データベースより)

世界各地の屠畜現場を取材してきたイラストルポライターが抱いた、どうしても「肉になる前」が知りたいという欲望。見切り発車で廃屋を借り豚小屋建設、受精から立ち会った中ヨーク、三元豚、デュロック三種の豚を育て、屠畜し、ついに食べる会を開くに至る。一年に及ぶ「軒先豚飼い」を通じて現代の大規模養豚、畜産の本質に迫る、前人未踏の体験ルポ。


前作、世界屠畜紀行で世界の屠畜の様子を確認する旅をした筆者。今回は実際に豚を育てて肉にするまでを自ら体験します。生鮮食料のうち、青果は家庭菜園などで小規模ながらも体感することはできます。鮮魚も釣果を食べることができます。しかし、精肉は消費者にとってもっとも見えにくいものだとおもいます。本作で筆者の体験を読むことで、それが疑似体験できますし、養豚にまつわる周辺の諸事情、飼料や病気への対応なども丁寧に描かれており一冊でここまで網羅するのかと驚きの充実度合です。

昨今、フード・インクを始めとして、食料生産の裏側的な作品がいろいろと公開されています。それら、ある意味「告発」ありきの作品などと比べて、そうした思想がスタートではない本作は読み手側に考えるきっかけを与えてくれる、お勧めできる一作です。

なお、2010年に紹介した雑食動物のジレンマとの比較も面白いかもしれません。

獣医さん走る―家畜防疫の最前線 吉川 泰弘 リンク先を見る

獣医さん走る―家畜防疫の最前線

これは表紙とタイトルに騙されました(良い意味で)。最近は口蹄疫への対応などを通じて徐々に知られてきているかもしれませんが、食品安全や公衆衛生において、獣医は非常に重要な位置を占めます。私も、この仕事についてから保健所職員に獣医が多いことを知り、「そういえば動物のお医者さんの菱沼さんは公衆衛生の研究室だったな~」などと思った覚えがあります。本書は、外観の印象とは異なり、獣医の仕事をシリアスに紹介しています。

獣医が公衆衛生にとって重要なのは感染症の多くが人畜共通感染症であること、そして移動手段の発達により感染症にとって国境(地理的な距離)がどんどん意味をなさなくなっているため、まさにOne World One Health としての対応が求められていることにあります。世界の公衆衛生の中心で活躍する獣医師。本書は、まさに獣医を目指す方々に読んでいただきたい一冊です。

また、本書が問いかけるもう一つの重要な点は、「管理レベルを引き下げることの重要性」です。何か問題が生じたとき、当然管理レベルを引き上げて対応を強化しことに当たります。しかし、問題が沈静化したら、どこかのタイミングで管理レベルをもとに戻す必要が生じます。しかし、それは以外と難しいものです。今まさにBSEについて管理の見直しが行われようとしています。また、放射性物質の対策も、いずれ徐々に緩めていく必要が生じてくる日も来るでしょう。如何に適正なレベルで管理を行うか、本書を通じてその事も考えていただきたいと思います。

世界で一番詳しいウナギの話 塚本勝巳 リンク先を見る

世界で一番詳しいウナギの話 (飛鳥新社ポピュラーサイエンス)

内容紹介

40年間、太平洋でウナギを追い続けたウナギ博士。その研究の集大成! !

◎天然卵発見秘話

◎稚魚の餌はマリンスノー

◎完全養殖に足りないもの

◎来年以降の資源量変動予測

◎ウナギを絶滅させないために

◎養殖業者に朗報! 幻の絶品「アオウナギ」の作り方

…など、「世界で一番詳しい」ウナギの知識が得られる一冊。

知的興奮を得られる、上質のサイエンスアドベンチャーです。

内容(「BOOK」データベースより)

世界初!マリアナ海嶺で天然卵の採集に成功!アリストテレスから2400年、ウナギ誕生の『謎』が遂に解明される―。知的興奮を得られる上質のサイエンスアドベンチャー。


今年は鰻に例年以上の注目が集まりました。1つは、資源枯渇による価格高騰であらためて将来にわたって鰻を食べ続けるにはどうすればよいかという問題がつきつけられたこと。もう1つはこれまで謎であった鰻の産卵地点がついに解明されたことです。本書は長年にわたる鰻の産卵地点解明の研究を追ったものです。この研究はあくまで基礎研究であり、産卵地点がわかったからといって即鰻の養殖の問題点が解決するようなたぐいのものではありません。しかし、その根気のいる地道な研究を、本書は非常にエキサイティングに描いています。それは、まさに鰻をめぐる冒険とも呼べるでしょう。

食品偽装との闘い ミスターJAS10年の告白 リンク先を見る

食品偽装との闘い ミスターJAS10年の告白

内容紹介

2001年に雪印食品の産地偽装が発覚し、“パンドラの箱"が開かれてから、ミートホープ、事故米、ウナギ偽装へと続いてきた食品偽装摘発の緊迫の舞台裏を、元農水省『食品表示Gメン』トップ自らが激白。省内の葛藤、内部告発、裏社会の恐喝、そして個人の苦悩……。そこには、食の信頼を取り戻すために、命を削る闘いがあった!

内容(「BOOK」データベースより)

食品偽装摘発の緊迫の舞台裏を、元農水省『食品表示Gメン』トップ自らが激白。省内の葛藤、内部告発、裏社会の恐喝、そして個人の苦悩…そこには、食の信頼を取り戻すために、命を削る闘いがあった。雪印、ミートホープから事故米、ウナギ偽装まで、食品表示Gメン2000名の元リーダーが初めて明かす偽装摘発10年の舞台裏。


健康には影響しないけれど、もっとも食に対する信頼を損ねているのは、もしかしたら産地偽装かもしれません。著者は、農林水産省において偽装対策の最前線に立って活躍していた、まさにこの問題の第1人者です。雪印食品による牛肉産地偽装事件に始まり、ミートホープ、白い恋人、ウナギ、事故米と話題になった偽装事件に、どう対応したのか。加工食品の原料原産地表示拡大が一部で騒がれている今、偽装について考えるための一冊です。

おもしろサイエンス 食品保存の科学 リンク先を見る

おもしろサイエンス 食品保存の科学 (B&Tブックス)

老舗うなぎ屋さんのタレは、なぜ何十年も“つぎ足し、つぎ足し”で腐らないのか?食品保存の秘密を科学の視点から解き明かす。


流通や冷蔵・冷凍技術が発達した今日、私たちは昔の人ほど食料の確保に悩む必要がなくなりました。そのためか、日持ちする食品に対するある種の偏見のようなものを感じます。それは、「日持ちする食品は食品添加物が大量に使われているのではないか、危険なのではないか」といったものです。しかし、そもそも食品を保存する手段は食品添加物に限りません。本書は食品の保存について科学的に考察し、その謎にせまります。

学校の食育の場で使っても面白そうなお勧め本です。

以上、今年の10冊でした。なんだかんだでもう足掛け4年、40冊も紹介してきたことになります。毎回、来年10冊紹介できるかな?と思うのですが、なんとかなるものですね。ただ、それでも書店ではトンデモ本に隠れて目立たないことも多いですが。

参考にこれまでの今年の10冊エントリへのリンクを貼っておきます。

それでは、良い冬休みを!

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