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「台湾が1年とまれば50兆円の被害」膨張する台湾リスクを防ぐ日本勢の秘密兵器

産業、通信、防衛のすべてで「半導体」が重要に

4月16日にワシントンで開かれた日米首脳会談。主な合意事項のひとつに「日米間での半導体のサプライチェーンの維持・強化」があった。その念頭にあるのは中国の台頭だ。

2021年4搈12日、ホワイトハウスで、世界の半導体主要企業など19社の経営陣とのオンライン協議に臨むバイデン米大統領(左)=アメリカ・ワシントン2021年4月12日、ホワイトハウスで、世界の半導体主要企業など19社の経営陣とのオンライン協議に臨むバイデン米大統領(左)=アメリカ・ワシントン - 写真=時事通信フォト

米中の対立が先鋭化する中で「産業のコメ」である半導体の開発や調達を巡る問題は産業面にとどまらない。通信や防衛といった国防分野でも、その性能を左右するのは半導体だ。その半導体を中国からの調達に依存したり、日本や米国で開発した半導体技術が安易に中国に流出したりするようなことがあれば、産業分野だけではなく軍事面でも劣勢となる。

こんな危機感から、日米両首脳は新型コロナウイルスの変異ウイルスが猛威を振るうなかでも、直に接することで親密さをアピールし、中国を牽制した。

台湾を巡る案件も半導体とは切っても切れない問題をはらむ。「台湾の半導体受託生産会社が1年間生産をストップすると、世界の電子産業は4900億ドル(50兆円)の減収に見舞われる」(米半導体工業会)と言われる。仮に中国が軍事力で台湾を包囲した場合、日米の半導体産業さらには、その半導体を使うIT、通信、さらには自動車業界も生産停止を余儀なくされてしまうからだ。

台湾に集中することの地政学リスクと災害リスク

バイデン米政権は半導体のサプライチェーン強化へ産業界との連携を強化。4月12日には半導体メーカーなど19社の経営者らと安定調達の方策を議論した。背景には、膨らみ続ける台湾への依存リスクがある。会議にはインテルなど米国勢のほか、台湾積体電路製造(TSMC)、韓国サムスン電子の幹部が参加。半導体不足で減産を強いられる米自動車大手も加わった。

台湾の調査会社によると受託製造でTSMCなど台湾勢のシェアは64%にも達する。アップルなど多くの米IT(情報技術)大手が顧客だ。日本勢も例外ではなく、ルネサスエレクトロニクスは製造の約3割を台湾勢など受託製造企業に頼る。半導体産業は国際分業をてこに成長してきた。その過程でアジアの特定地域への生産集中が進んでしまった。

ボストン・コンサルティング・グループによると2020年の世界の生産能力の43%を台湾と韓国が占めた。米国のシェアは12%と中国(15%)を下回る。生産集中で効率性は高まったが、地政学リスクや災害リスクは見過ごされた。

現に半導体の供給不足は日本にも及んでいる。自動車産業では世界的な半導体不足からトヨタ自動車や日産自動車、ホンダなど、軒並み生産停止の状況に追い込まれている。

自動車向けの半導体は、供給が後回しにされてしまう

TSMCは2021年の設備投資計画を7%上方修正し、過去最高の300億ドル(約3兆3000億円)にすると発表したが、会見に臨んだ魏哲家・最高経営責任者(CEO)によれば「供給不足の解消時期はスマートフォン向けなどの先端品が22年、自動車向けなどの一般品が23年になる」という。

自動車向けの半導体は価格が安いため、利幅の大きい5G向けなどの先端品より供給が後回しにされてしまう。日本車メーカーはこうした対外依存脱却のためにルネサスからの調達を強化しているが、不幸にも火災事故の発生で供給が止まってしまった。

日本の自動車業界は裾野が広いため、半導体不足で生産が止まると、そのほかの部品メーカーだけにとどまらず、鉄鋼や樹脂などの化学メーカー、販売店などにも影響がでる。こうした業界の雇用にも響いてくるため、経済産業省も対策を講じ始めた。

手袋を着用して持つマイクロチップ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gorodenkoff

日本はTSMCなどにまだ勝てる可能性はあるのか

雇用だけではない。自動運転やコネクテッドなど次世代車の性能は半導体の質に依存する。ライバルに打ち勝ち、差別化のカギとなるのは半導体やそれを操るソフトウエアになる。アップルやアマゾンなどGAFAが自動車に参入してくる中で、最強と言われるトヨタと言えども、高性能の半導体がなければ、GAFAには太刀打ちできない。

自動車業界だけでなく、ファナックや東京エレクトロニクスなど世界に冠たる工作機械の精密制御などにも高度な半導体が必要になってくる。膨大な情報処理能力を瞬時にさばける性能をもった半導体なしには日本のモノ作りもおぼつかない。

それでは、日本はTSMCなどにまだ勝てる可能性はあるのか。同社は世界で最先端となる回路線幅が3ナノ(ナノは10億分の1)メートルに続き、2ナノの世界最先端品の工場の建設に着手した。来年発売予定のiPhoneに搭載する3ナノ品の約半分はアップルが買い占めた。TSMCはさらにその先をいく。韓国サムスン電子といえども、水をあけられ始めている。

こうしたなか、1980年代に半導体で世界を席巻した日本が、復活を目指すために開発を急いでいるのが「光半導体」。その中核となるのがNTTだ。

NTT澤田社長「半導体の世界でゲームチェンジができる」

スマホに加え、人工知能(AI)やIoTが普及するにつれ、データ通信量は加速的に増えていく。データを高速処理するためには半導体のなかで電気信号を運ぶための大量の電力と、装置を一定規模に抑えるために半導体の微細加工技術が必要となる。

脱炭素の流れが加速する中で、安価に電力を供給できる石炭火力やガス火力は世界から締め出されつつある。原子力発電への抵抗も根強い。また、自動車やスマホ、パソコンなどは一定の大きさの中に半導体を埋め込まなければならない。そのためには半導体の微細化は不可欠となる。

しかし、半導体の微細化を進めれば進めるほど、電気が熱を持ってしまうため、回路がショートする可能性は高まってしまう。「消費電力と微細加工の限界をどう乗り越えるか」というのが、次世代半導体開発で避けて通れない課題となっている。

この解決策としてNTTが掲げるのが、半導体のなかでデータを運搬する役割を果たす電気を光に置き換える「光半導体」だ。光は熱を持たず、電気より高速のため、ルーター、サーバーなどにも展開すれば、「半導体の世界でゲームチェンジができる」(澤田純・NTT社長)という。

NTTが「IOWN」と名付けるこの光デバイス構想にはソニーのほか、スマホの半導体競争でクアルコムに敗れた米インテルもコアメンバーとして名を連ねている。米マイクロソフトなども参加し、来る「6G」の 世界での覇者を目指している。

中国も日本メーカーの技術は喉から手が出るほど欲しい

英投資ファンドCVCによる買収に絡み、主導した車谷暢昭社長兼CEOが退任するなど経営が混乱する東芝の半導体子会社や、ルネサスを買収しようとする米系海外投資ファンドの動きが相次いで表面化している。米中分断で不足する半導体の価格は高騰し、それが半導体メーカーの株価を押し上げ、巨額な投資リターンを得られるとの読みからだ。

しかし、アップルなどスマホメーカーや大手の通信機器メーカーのさまざまな要求を一手に引き受け、協力を得ながら地力をつけたTSMCを覆すのは容易ではない。

シリコンバレーにある台湾半導体製造会社(TSMC)本社※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sundry Photography

ただ、TSMCにしても、サムスン電子にしても半導体を生産する半導体製造装置の世界では、まだ日本は世界と戦える立場にある。米半導体製造装置大手のアプライドマテリアルズは日立製作所系の「KOKUSAI ELECTRIC」の買収をしかけるなど、日本の技術には注目している。

結局、この買収案は中国政府が独禁法上認めず、破談となったが、このことは逆に中国も日本の半導体製造装置メーカーの技術を喉から手が出るほど欲しがっていることの証左だ。この分野はNTTが目指す「光半導体」の製造などにも生かせるはずだ。

「データ爆発」の時代、半導体は産業のあらゆる分野で高い性能を求められている。その性能の良しあしがすべてを握る時代に、日本は国を挙げて次代の半導体戦略を打ち出す必要がある。

(プレジデントオンライン編集部)

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