記事
  • WEDGE Infinity

SDGsな暮らしはスニーカーから?ナイキの試み - 土方細秩子(ジャーナリスト)

(Massimo Giachetti/gettyimages)

スニーカー販売大手であるスポーツ用品メーカー、ナイキが大胆な試みを開始する。「ナイキ・リファービッシュド」と名付けられた、ユーズドの製品をクリーニングして店舗で販売しよう、というものだ。

ナイキは言うまでもなくこれまでエアー・ジョーダンを始め、様々なスニーカーのヒット商品を生み出してきた。中にはプレミアがついて高値で取引され、ユーズドであっても定価より高く売れているものもある。つまり人気モデルであればユーズドでも十分に商品価値がある。

今回の試みはナイキ独自の環境政策、「Move to Zero」(CO2排出ゼロへ)の一環だ。4月13日から米国内の15店舗で開始となった。ナイキでは使用していないスニーカーを店舗に返却するよう顧客に呼びかけており、集められたスニーカーはナイキ社内で徹底的に洗浄される。

商品としては、洗浄後の状態によって「新品同様」「やや使用感あり」「見た目にやや難あり」の3つのグレードが設定される。これ以下のものは寄付あるいはリサイクルに回されるという。ナイキでは「使わないものを他の人に使用してもらうことで、スニーカー全体の寿命を伸ばし、廃棄を減らす」という目的を掲げている。

ただし販売に回される商品は購入から60日以内に何らかの理由で返却されたものに限られ、はき古しのものは主にリサイクルとなる。購入したがサイズが合わなかった、履いてみたら足に合わなかった、など特にオンライン販売では返品されることが多い。こうした靴はこれまで廃棄処分となったりアウトレット販売となっていたが、独自基準の洗浄、場合によっては修理を行うことで、店頭販売に回す、という道が拓けたのだ。

電化製品ではこうしたリファービッシュはごく普通で、大手電化製品販売店のベストバイなどではリファービッシュやオープンボックス、というカテゴリーで返品されたり初期不具合が見つかり修理されたものを定価よりも安く販売している。

もちろん衣料品でもアウトレットでは売れ残りや軽い傷のあるものなどを販売しているし、こうしたB級品を専門に扱う店もある。しかし今回、ナイキという大手ブランドがリファービッシュと説明した上で店舗販売に踏み切った、というのはやはり大きなニュースだろう。

日本でもメルカリのようなアプリを使ってセカンドハンド製品を売買する動きが活発だが、米国ではセカンドハンド製品の市場は2024年には640億ドルに達する、という見込みもある。ThredUpというレポートによると、この数字はいわゆるファストファッション全体の売上を上回る、という。

フォーエバー21の経営破綻が話題になったように、今のジェネレーションZと呼ばれる若者世代は「安かろう悪かろう」という製品に懐疑的だ。エコ志向が強いとされる層でもあり、こうした大量生産大量販売で消費されていくファストファッションがゴミの増大に関係している、ということに批判的なのだ。この世代では4割以上がセカンドハンド製品を購入したことがある、と答えており、ジェネレーションZよりひとつ上の世代であるミレニアル世代でも3割がセカンドハンド製品を購入している。

変化続けるリテール市場

これからの消費者向けグッズメーカー、とりわけアパレルは、質がよくサスティナブルな素材を使い、企業が率先してリサイクルなどに取り組む姿勢を見せることが大事になる、と指摘するウォールストリートのアナリストもいる。薄利多売方式のファストファッションはこうした顧客の志向の変化により苦境に立たされる可能性が高いのだという。

元々米国はやや極端な社会で、現在では本皮製品というのは絶滅寸前だ。バッグにしろ車のシートにしろ、植物から作った、あるいはリサイクル素材を用いた高級合成皮革が主流であり、本皮は動物愛護の観点から推奨されない製品になりつつある。

ナイキのように元々価格が高めで、しかしデザインや素材にこだわりがあり、製品のリサイクルにも熱心な企業がリセール品を扱う、というのは社会の流れに即したものだ。今後同様にハイブランドがグレード落ちのリセールあるいはレンタルにどんどん乗り出す可能性は非常に高い。

顧客にとってはナイキ製品を安く手に入れるチャンスであり、企業としては環境に優しいブランドイメージにもプラスとなる。リセール市場の今後の伸びに期待が寄せられている。

あわせて読みたい

「ナイキ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    質疑から逃げた立民は論外だが、自民党も改憲やる気なし。不誠実な憲法審査会の結末

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月07日 10:21

  2. 2

    病床ひっ迫で入院厳しく…「来た時点で肺が真っ白」 大阪の医師が警鐘「第3波以前とは全く別の病気という印象」

    ABEMA TIMES

    05月07日 08:12

  3. 3

    「首相も都知事もリアルな社会人の生活を理解してない」 "間引き運転"で露呈した政治家たちの「わかってない」感

    キャリコネニュース

    05月07日 09:14

  4. 4

    原宿の竹下通りが「地方都市のシャッター商店街化」の衝撃

    内藤忍

    05月06日 16:17

  5. 5

    格差問題の必然性

    ヒロ

    05月07日 11:19

  6. 6

    出口治明さんが語る「35年ローン」で家を買ってはいけない理由

    幻冬舎plus

    05月07日 09:04

  7. 7

    「日本を食い物にする」無責任IOCに批判殺到…世界からも続々

    女性自身

    05月07日 13:46

  8. 8

    朝ごはんの器で1日が変わる コロナ禍で“食”を見つめ直すきっかけに

    羽柴観子

    05月07日 08:40

  9. 9

    菅政権の中途半端なコロナ対応

    大串博志

    05月07日 08:28

  10. 10

    今も裁判で「三女アーチャリー」として…松本麗華氏を25年間も縛り続けるオウム真理教

    松本麗華

    05月06日 15:25

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。