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コミュニティの形成に失敗したファッション系Q&Aサイト

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Buyosphere」は「オンラインでのショッピングのあり方を変える」という野心的な目標をもって、2011年に開設されたファッション系アグリケーション・サイトである。

「本物の人間からのファッションの提案」を売りに利用者の獲得を狙い、当初は一定の注目を集めていたのだが、現在、かなり厳しい状況に置かれているようだ。

以下では、このサイトの現状をレポートし、苦戦の原因を考察してみる。

創設者はアルファブロガーのタラ・ハント氏

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Buyosphereの創設の中心は「アルファブロガーにして、ウェブを使ったマーケティングの第一人者」として知られる、カナダ出身のタラ・ハント氏。

彼女はツイッターでフォローする必要のある54人テクノロジーの世界を変えた11人の女性といったリストに名を連ねている。

2010年には、ツイッターを始めとしたソーシャルメディアに関する書籍『ツイッターノミクス』の出版に合わせて来日し、トークイベントを開いた。

ハント氏はソーシャルメディアの使い手として知名度を上げ、一定のファンを築いてから、オンライン・ビジネスに乗り出したのだ。

しかし、彼女は今年10月、自らのスタートアップの状況をブログで次のように報告した。

「昨年11月に集めた半年分の資金は5月には底を突いた。それまでの1年半、自力でサイトを運営しようと奮闘してきたため、私たちは貯金を使い果たしてしまい、配偶者やパートナーにも借金をさせている」

Buyosphereは今年の1月に、32万5,000ドルの投資を受けたと報告されているが、それでも業績は好転しなかった。創設者の3人はBuyosphereの運営だけに専念することはできなくなり、外部の仕事にも就くことに決めたという。

ソーシャルで得たファンを顧客に転換することに失敗

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上はBuyosphereの訪問者数を示す折れ線グラフである(出典はVenturebeat.comの「Tara Hunt and Buyosphere: Sometimes the startup magic just doesn't happen」)。

1月に投資を受けた後、サイトをリニューアルし、一時的に訪問者数が増加したこともあるが、毎月の訪問者数は数千人に過ぎず、同サイトのFacebookで「いいね!」をクリックしているユーザーの数も12月18日現在で960人に留まっている。

タラ・ハント氏はセレブとまではいかないが、一般人に比べれば、遥かに知名度があり、人脈も広い。ファンもいる。そのアドバンテージが集客につながっていないのだ。

内情の苦しさは、クリスマスが近づいてもなお「2012年秋用のレインコート」の画像をトップページに掲げ続けているサイトの様子からも窺える。

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しかも、これらの商品を紹介しているキュレーター役のKim Vallee氏はBuyosphereの創設者の1人の奥さんではないか。コンテンツの上でも、身内が頼りというわけだ。

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「ファッション版Quora」を目指していたのだが・・・

Buyosphereは「検索エンジンではなく、ユーザーによるキュレーションを通してユニークなコンテンツを作っていくファッション・アドバイス・コミュニティ」と自らを定義している。

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ページ上部にある検索ボックスの横には「or Ask(または質問する)」と表示されており、商品を検索するだけでなく、ファッションに関する質問を投稿できるようにしている。

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例えば、「レトロ調の洗練されたスタイル」が好みというMandyさんは、12月4日に「100ドル以内の黒のブーツを探しています」という投稿をしている。
この質問には、上のように2件の回答がついている。回答者は外部のECサイトの商品画像を貼り付け、その商品を販売しているECサイトをリンクすることで回答する。

ハント氏は自分のサイトを米国で人気のQ&Aサイトに喩えて、「ファッション版Quora」と呼んでいるが、外部サイトの画像をリンクして共有する形式はPinterestから影響されたものだろう。

人気沸騰のQuoraとPinterestを合体させたら、人気沸騰のファッション・サイトが出来上がりそうだが、そうなっていない。

上記のMandyさんの質問のページは、投稿から10日以上経っても、開かれたのはわずか13回だし、質問と回答を集めたページでは、回答が1件もついていない質問も見かける(以下の画像の赤枠)。

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低迷の原因

ファッションの分野に限らず、Q&Aサイトを成功させるには、面白い質問と優れた回答がセットで必要だ。

Quoraが人気になったのは、シリコンバレーの著名人が何人も参加して、競い合うように専門知識や意見を披露していたからだ。「著名な専門家が回答しているならば、信頼できる」と噂が広がり、会員が増加していった。

以前、当ブログで紹介した、商品のレコメンデーションやキュレーションを行っているファッション系ECサイトの、BeachmintShoeDozzleの場合も、ファッション・センスが優れているという評判の有名人を看板にすることで、集客に成功している。

Buyospereが失敗した理由は?

Buyospereに足りないものの一つは権威ある回答者だ。顧客がファッションに関して質問をしたくなるような回答者がいないのだ。

実は、タラ・ハント氏自身は、ソーシャルメディアを駆使して、自分の名前を売ることに成功した人であるのだが、彼女が実践してきたパーソナル・ブランディングは、特にファッションの分野との関連はあまりない。ファッションについての相談をしたくなる人物ではないのだ。

ターゲットとすべき女性ユーザーの関心をそそる顔に欠けているので、ユーザーが集まらず、質問を投稿しても、有益な回答も返って来ない。これではコミュニティが形成できないのも仕方がない。

「人間が回答するファッション系Q&Aサイト」という、サイトの唯一化につながるはずのコンセプトが実現できず、中途半端な状態が続いているのだ。このような悪循環を断ち切って、集客力を劇的に増加させるには、業界の著名人をサイトの看板として担ぎ出すのが恐らく一番手っ取り早いだろう。だが、それだけの予算は残っていなさそうだ。

ハント氏はまだあきらめないと宣言しているので、今後の大逆転に期待しよう。

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