- 2021年04月23日 16:02 (配信日時 04月21日 09:15)
「歴史ある不動産が外資に売られて残念」その発想が日本経済を低迷させている
1/2日本のビルが次々と外資に買われている。この流れにリスクはないのか。金融アナリストの高橋克英氏は「陰謀論や嫌悪感には根拠がない。日本企業がうまく活用できないのならば、外資に手を入れてもらったほうがいい。ニセコの復活はその象徴例だ」という――。
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安全・安定・割安なニッポン
日本のビルが外資に買われている。1990年代バブル崩壊や2008年のリーマン・ショック後のデジャブのようだ。日本企業の短期的経営と逆張り不在経営による不動産放出が続く一方、世界的な混乱と金融緩和のなか、安全で安定、そして何より割安なニッポンが、外資系企業やファンドを引きつけているのだ。
つまり、日系企業にとっては、「コロナで大変でリストラに撤退」だが、外資系にとっては、「千載一遇の買い場到来」なのだ。
一方で、「日本のビルが外国資本に買い占められる」と懸念の声も上がる。実際はどうなのだろうか。「外資が冷酷なら、日系は残酷」ともいえる実態もある。現在の状況を整理するとともに、ニセコの事例を紹介しよう。
神戸北野ホテル、エイベックス本社ビルも外資に
日本の企業が、コロナ禍による業績悪化や先行き不透明を理由に、本社ビル、ホテルなど保有不動産を外資に売却する動きが続いている。
今年3月、コロナ禍で鉄道やホテルが不振の近鉄グループホールディングスは、都ホテル京都八条やホテル近鉄ユニバーサル・シティ、神戸北野ホテルなど8つのホテルを米国の大手投資ファンドのブラックストーン・グループに売却すると発表した。8つのホテルの売却額は非公表ながら簿価423億円(昨年3月末)を上回るとみられる。
コロナ禍で主力のライブ事業などが低迷するエイベックスは、昨年末、3年前に開業したばかりの東京・南青山にある地上18階建ての本社「エイベックスビル」を719億円で売却した。譲渡先は非公表ながら、日本経済新聞などの報道によると、カナダの大手不動産ファンドベントール・グリーンオーク(BGO)だという。同じくBGOは、今年3月には、三菱地所から名古屋の大型オフィスビル「広小路クロスタワー」を400億円規模で買収したと報道されている。
これら外資系ファンドは、買収後、リニューアルなどで各物件の価値を上げて集客力や収益性を高め、最終的には、より高値で売却することでキャピタルゲインを狙うことになる。
実際、大手不動産サービス会社のジョーンズラングラサール(JLL)のレポート「Global Real Estate Perspective February 2021」によれば、2020年の首都圏へのオフィスやホテルなど不動産投資額は、約2兆4千億円となり、パリ、ロンドンに次ぐ、世界3位だったという。日本全体の投資額(約4兆6千億円)のうち、海外投資家比率は34%に上り、リーマン・ショック前の2007年以来の高水準となっているのだ。
背景にある「世界的なカネ余り」
コロナショックにより、日本だけでなく米国、欧州の政府と中央銀行により、史上最大規模の金融緩和策と財政出動策がとられた。コロナ禍から、国民の生命はもちろんのこと、「雇用と事業と生活」を守るためにはあらゆる手段を尽くすとの意思表示である。FRBは2023年末までゼロ金利政策を続けると表明している。
このため、世界中でおカネが市中に流れ込むことになり、カネ余り状態となり、世界的にも規模が大きく流動性もある株式市場だけでなく、ミドルリスク・ミドルリターンで相対的に高い利回りが見込める不動産市場にもおカネが流れ込むことになった。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/utah778ただし、コロナ禍下であり、米中対立など地政学リスクも高まっている。このため、株式においても、新興国より日米など先進国の株式、不動産においても、新興国や地方都市よりブランド力ある先進国の都市やリゾート地の不動産にお金が流れているのだ。こうしたグローバルなおカネの流れのなかで、ロンドンやパリ、ハワイなどと同様に、日本では、東京や大阪のビルやホテル、ニセコの土地などが買われているのだ。
政治的に安定し、市場規模も大きい日本は魅力的
特に、米中対立の激化や、中国による香港やウイグルでの弾圧、ミャンマーでの軍事クーデターを目のあたりにした香港やシンガポールなど世界各地の華僑や欧米投資家の間では、地政学リスクへの不安が高まっている。その結果、政治的に安定し市場規模も大きい日本の魅力度が上がっているのだ。ドルやユーロ建て資産が大半を占める華僑や欧米などの海外投資家において、保有資産の分散、通貨の分散という観点からも、円建ての資産を日本の不動産で持つメリットが生まれているのだ。
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