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日米共同声明言及で東アジア安保の焦点となった中国の核心的利益「台湾」海峡 - 野嶋剛

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4月13日に行われた新型揚陸艦の進水式でスピーチをする蔡英文総統(C)EPA=時事

菅義偉首相の訪米に伴う日米首脳会談の共同声明で、半世紀ぶりに「台湾」への言及が行われた。歴史的な転換である。緊張した台湾海峡情勢のなかで、日米を「巻き込んだ」ことによって一定の後ろ盾を得たことに、台湾では安堵が広がっている。

 今回の共同声明は、台湾問題について米国や日本の関与をとことん嫌い、「内政問題」と位置付けようと努力してきた中国の試みがセットバック(後退)したことを意味しており、台湾問題の位置付けがアップグレードされて「全球化(グローバル化)」した、というのが台湾側の受け止めだ。

 今回、共同文書での文言は「日米両国は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」というものだ。米国の重点は「台湾海峡の平和と安定の重要性」にあり、日本側は「両岸問題の平和的解決」を加えることで中国に配慮したと言われる。

 しかし「平和的解決」が入ろうが入るまいが、中国にとってはこうした前例破りは「深刻な現状変更」と認識されるだろうし、台湾は「現状のブレークスルー」と受け止め、政治的な波及を生むことは避けられない。

台湾メディアは一様に肯定的

 台湾の蔡英文政権や世論も、総じて、今回の日米首脳会談には歓迎の意を示している。何しろ、日本では詳しくは報じられていないが、昨年の後半以降、台湾は連日のように中国軍機による防空識別圏を越えた台湾近海への威嚇的接近に悩まされ、1996年の台湾海峡危機以来と言われる緊迫に包まれていたからだ。

 蔡英文総統自身は現時点でコメントを出しておらず、外交部のコメントのみにとどめているのは、中国をこれ以上刺激しないという配慮から来ている。

 台湾のメディアはそれぞれ明確な政治的立場を持っているが、受け止めは一様に肯定的だ。民進党支持色が強い「自由時報」は「台湾は自由世界の抜け穴となってはいけない」と題する社説を掲載し、「抗中(中国への抵抗)は米日連合陣営の共同目標になり、この形勢下で台湾はますます重要になる」との見方を示した。自由世界vs.中国という対決構図を期待する立場である。

 一方で、対中関係を重視する国民党を支持し、日本へは普段から厳しい論調を取っている「聯合報」は「菅義偉は恐中症(対中恐怖症)から抜け出そうとしている」として、珍しく好意的に日本の動きを社説で論じた。

 同紙は、今後菅首相がインド、フィリピンなどにも訪問を予定していることを引き合いに、「これまで日本は嫌々米国の演出に迎合してきたが、今回は中国に対して積極的な牽制に転じている」と驚きの視線を投げかけた。

日米は何にコミットするのか

 少なくとも、1970年代の台湾の国連脱退、日台断交、米台断交などで形成された国際関係の構図は、これまで固い岩盤のように思われてきたが、そこに深いヒビが入ったことは間違いない。今後日米それぞれが従来の台湾政策の見直しを始めることになる。
台湾問題を「核心的利益」と位置付ける習近平政権は、米中関係、日中関係、中台関係

 見直しの作業を迫られるだろう。ただ、注意が必要なのは共同声明では、「台湾」ではなく、「台湾海峡」や「両岸」という言葉が使われているという点である。

 両岸というのは、台湾海峡を挟んだ両岸を指す。つまり、台湾海峡を挟んで、大陸側の中華人民共和国と、台湾側の中華民国という対立構図が基本的にあることを意味している。日米でコミットするのは「台湾防衛」ではなく「台湾海峡の安定」ということを念頭に置くことが、今回の共同声明を考えるうえでのポイントであると言えるだろう。

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