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【読書感想】ニッポン 未完の民主主義-世界が驚く、日本の知られざる無意識と弱点

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ニッポン 未完の民主主義-世界が驚く、日本の知られざる無意識と弱点 (中公新書ラクレ 725)
作者:池上 彰,佐藤 優
発売日: 2021/04/07
メディア: 新書






Kindle版もあります。

ニッポン 未完の民主主義 世界が驚く、日本の知られざる無意識と弱点 (中公新書ラクレ)
作者:池上彰,佐藤優
発売日: 2021/04/09
メディア: Kindle版

首相交代は「禅譲」、コロナ禍の責任を専門家に押し付け、日本学術会議の会員任命拒否の説明は支離滅裂……。大丈夫か、この国は。これじゃまるで、〝未開国〟。それもそのはず。なぜなら、戦後、ニッポンの民主主義は、世界の潮流をよそに独自の生態系に「進化」してきたのだから……。なぜ、検察を正義と誤認するのか。なぜ、「右」から「左」まで天皇制を自明のものとするるのか。世界も驚く日本型民主主義の不思議を徹底分析。

 書店で見かけるたびに、「これ、もう読んだかな……」と確認しないといけないくらい、さまざまなテーマで、さまざまな出版社から上梓されている、池上彰さんと佐藤優さんの対談本のひとつです。
 今回のテーマは「民主主義」。
 
 1970年代生まれの僕は、日本の「戦後教育」「平和教育」を子どもの頃に受けてきた世代(いわゆる「団塊ジュニア」の最初のほう)です。アメリカとソ連の冷戦から、ベルリンの壁が崩れ、ソ連が解体され、中国が「経済大国化」していくまでを、リアルタイムで見てきました。

 半世紀くらい生きてきて、「民主主義」「資本主義」の勝利(というか、いまの人間には「共産主義」をうまく運用するのは困難であること)を認めざるをえなかったのです。

 しかしながら、世界各国での排外主義の台頭や新型コロナウイルス対策において、中国のような専制的な国のほうが、「強権的な対策による封じ込め」に成功しているのをみていると、「専制国家のほうが効率良くものごとを進めていくことができ、危機にも対応しやすいのではないか」という気もしてきたんですよね。

 じゃあ、中国に移住しろ、と言われたら、「やっぱり僕は日本のほうが良い」のですけど。
 ただ、20世紀後半であれば、中国の人でも「日本のほうがいい」と答えるのではないかと思うのですが、現在では、中国でも、「やっぱり中国のほうが良い」という人が増えたはずです。

 なんのかんの言っても、経済的な成長で「豊かになった」というのは、人々の「満足度」に大きく影響しているのではないかと。

 池上彰さんと佐藤優さんは、新型コロナ禍での「民主主義の危機」について、こんな話をされています。

池上彰:今現在、民主主義が危機に直面しているという認識は、私も持っています。佐藤さんは、特にどのようなところにそれを感じるのですか?

佐藤優:端的に言えば、2020年以降、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、いくつもの対策が講じられました。それらの決定過程などを目の当たりにして、あらためて深刻さを思い知らされたのです。
 私が最も違和感を覚えるのは、感染拡大のさ中、「専門家」と称する人たちにが、何ら疑問を抱かれることなく、政治の前面に出てくるようになったことです。

池上:確かに、医療関係などの専門家がメディアに登場してこの問題について語るのは、「普通のこと」になりました。政府レベルでは、当初は医療関係者のみで構成される「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が設置され、七月には経済学者や労組代表、シンクタンクやメディア関係者、県知事なども加わる「分科会」に「改組」され、現在に至ります。佐藤さんは「違和感」とおっしゃいましたが、国民の間には、「もっと専門家の意見を聞くべきだ」という声もあります。

佐藤:政治家がさまざまな課題に関して専門家のアドバイスを受けること自体、もちろん重要です。しかし、緊急の事態だからといって、本来の民主的な手立て、経路をバイパスして、何でも専門家の言うがまま意思決定が行われるとなると、話は別です。
 問題は、専門家組織内の議論は、国会でのオープンなそれと異なり、ブラックボックス化しやすいということです。専門家集団の発言力が高まるほど、政治のブラックボックス化が進み、代表制民主主義が相対的に軽視されることになるのです。

池上:実際、「専門家会議」や「分科会」では、議事録の有無やその公表をめぐって揉めました。メディアが情報公開請求で専門家会議の議事録を入手してみたら、大半が墨で消されたいわゆる「ノリ弁」だった。

佐藤:私は、いたずらに危機を煽っているつもりはありません。実は専門家の重用というのは、ファシズムやスターリズムの特徴でもあるのです。ナチス・ドイツは、専門家を最大限利用して、政策を遂行しました。

池上:当時のドイツ国民の多くも、そのことにあまり違和感を覚えてはいなかったのでしょう。

佐藤:一方、民主主義の下で行われるのは、あえて言えば「素人の政治」だから、トランプ前大統領のような人物が出てくることもあるわけです。その「素人性」と「専門性」の折り合いをどうつけていくのか、どこで線を引くのかというのも、民主主義を考えるうえでは非常に大事なところのはずなのです。しかし、現実には、そんな議論は全部飛び越えて、事が進んでいる。

 民主主義の原理原則に忠実であろうとすればするほど、「素人の政治」になってしまうのです。
 でも、「専門家じゃないなら黙っていろ!」というのがどんな場合にも通用するのであれば、権力者は「専門家はこう言っている」というのを盾にして、独断で物事を進めていくことができるようになる。実際は、「専門家」にも、いろんな立場、考え方の人がいますから、権力者にとって都合の良い「専門家」の意見を採用すればいいわけです。

 民主主義と「ポピュリズム」との関係について、この対談のなかで、佐藤さんは、こう述べています。

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