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2012年 冬休みに読みたい。食の安心・安全について考える10冊 その1

今年も、このエントリをあげる時期がやってまいりました。書店でもなかなかスペースをとってもらえない食に関する良い書籍を独断と偏見でご紹介します。

選考基準:おおむね2012年中に発行された書籍で食の安心・安全など食の分野をテーマとしてあつかっているものです。

なお、内容紹介については全てamazonの各書籍のページの内容紹介から引用しています。


お母さんのための「食の安全」教室  松永和紀
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お母さんのための「食の安全」教室

内容(「BOOK」データベースより)

あふれる情報の“ウソ、ホント”をどう見極める?放射線も、食品添加物も、遺伝子組換えも、「なんとなくイヤ…」ではもうすまない。現代の「食」の基礎知識。


おなじみサイエンスライター松永和紀さんの最新刊。雑誌「栄養と料理」の連載記事が単行本化されたものです。扱うジャンルは、今一番関心が高いと言える放射性物質を始めとして、食中毒や食品添加物、BSE、遺伝子組換えなど消費者の関心の高いものはほぼ網羅しています。加えて、誤飲による窒息なども取り上げられていて、まさに「食品にまつわるリスク」のほとんどをカバーしてます。タイトルのとおりお母さんが食品安全について手に取る最初の1冊としてお勧めできる内容です(もちろん、お父さんにもお勧めですが、あえて違うものをあげるならば、昨年紹介した「無添加はかえって危ない ―誤解だらけの食品安全、正しく知れば怖くない」有路昌彦著を挙げましょう)。

松永さんは食品安全を専門とするライターとして1~2年おきに本を出していますが、本書のように食品安全全般に関するものは実は久しぶりで、「食卓の安全学」以来ではないかと思います。そのころと比べて一番の変化は放射性物質に関する記述が加わったことでしょうか。そして、その放射性物質に関する章が始めに記されているのも、時代を感じてしまいます。

なお、参考文献や著者がタイトルに込めた想いなどが、ご自身が主催されている消費者団体、Foocomのサイトにて公開されています。そちらも併せて読むことをお勧めします。

http://www.foocom.net/special/8416/


やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識 田崎晴明
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やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識

内容説明

安全か危険かではなく、

何がわかっていて何がわかっていないかを、

じっくりと、ていねいに。

中学生以上のすべての人へ。


「この本は、「安全だよ。安心してください」と言うために書いたのではな

いし、「危険だ。心配しなくてはいけない!」と言うために書いたのでもな

い。

ただ、放射線や原子力について知っておいたほうがいい(とぼくが判断し

た)基礎知識を説明し、それから、「放射線はどれくらい体に悪いのか」と

いうことについて何がわかっているかを丁寧に解説した。

そして、よくわからないことについては、「わからない」とはっきり書い

た。何がどのくらい「わからない」のかをみんなが知って、その上で、これ

からどうするかを自分で考えていくのが一番だと信じているからだ。」

「あの日」から普通ではない時間を過ごしてきたすべての人へ──敬意と感

謝と言葉にできない思いをこめて。(著者)

内容(「BOOK」データベースより)

安全か危険かではなく、何がわかっていて何がわかっていないかを、じっくりと、ていねいに。中学生以上のすべての人へ。


松永さんの本が食品安全全般について書かれた入門書とするならば、現在最も消費者の関心が高いとも言える放射性物質についての入門書としては、現時点で本書をおいて他にないでしょう。紹介のためにいろいろ書いても野暮になるので、本書をもっとも良く表していると思う部分を前書きから引用します。

あと、もう一つ大事なこと。

この本は、「安全だよ。安心してください」と言うために書いたのではないし、「危険だ。心配しなくてはいけない!」と言うために書いたのでもない。

ただ、放射線や原子力について知っておいた方がいい(とぼくが判断した)基礎知識を説明し、それから、「放射線はどれくらい体に悪いのか」ということについて何がわかっているかを丁寧に解説した。

そして、よくわからないことについては、「わからない」とはっきり書いた。 みんなが、何がどのくらい「わからない」のかを知って、その上で、これからどうするかを自分で考えていくのが一番だと信じているからだ。


なお、本書と同じものは著者のHPで、現在も公開されています。

著者HP やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識 http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/radbookbasic/


リスクと向きあう 福島原発事故以後
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リスクと向きあう 福島原発事故以後

内容紹介

放射線のリスクは、どのように考えればいいのか。公害と戦いリスク論に至った著者の半生を辿り、福島の問題を解決する糸口を探る。

内容(「BOOK」データベースより)

放射能のリスク、福島と日本のこれからを考える。リスクとリスクがぶつかったとき、どう選択すればよいのか。読売新聞好評連載「時代の証言者」大幅加筆の上、収録。


福島第一原子力発電所の事故によって環境中に放出された放射性物質、そのリスクをどう評価し対応するのか。私は本書の日本におけるリスク研究の第一人者である著者がどう考えるのかにとても関心がありました。そして、その期待に十二分に応えてくれる内容でした。

本書には著者の生い立ちや、家族の闘病、震災時の対応など私的な部分も記されています。特に読売新聞の連載をまとめた生い立ちの部分は本書の半分以上を占め、ある意味そちらの書籍化にあわせて放射能の部分を追加でもりこんだと見えなくもありません。しかし、実はこの部分が本書の価値につながっているのではないかと感じます。それはリスクに対峙した際のひとりの人間としての中西先生の姿が見えることで、ある意味数字ばかりで冷徹にも感じられる時もあるリスク研究において、研究者側も人として葛藤していると言う面がかいま見えること。また、放射性物質への対応を考える上で、過去のリスク管理の歴史を踏まえることができることです。


スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか
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スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか

内容説明

スウェーデン農業大学+防衛研究所+食品庁+農業庁+放射線安全庁による共同プロジェクト文書の翻訳版。

スウェーデンは放射能から国民をどのように守っているのか?

いま参考になる放射能対策マニュアル、待望の翻訳!

内容(「BOOK」データベースより)

スウェーデン防衛研究所を中心に防衛大学、農業庁、スウェーデン農業大学、食品庁、放射線安全庁の協力のもとで作成された「プロジェクト・どのように放射能汚染から食料を守るか」(1997~2000年)の成果。


日本における放射性物質への対応において、チェルノブイリ原子力発電所の事故対応から得られたデータは非常に重要です。そして、チェルノブイリの事故に対してスウェーデンがどのような対応を行ったか、それがコンパクトにまとめられているのが本書の特徴です。現在、日本でおこなわれている放射性物質対策は生産者など一部に多大な負担を強いるものになっています。それは妥当なのか、25年前に同様の問題に直面したスウェーデンは何に配慮して対応を行ったのか。本書の記述と現在の日本を比較することで適正な対応の落とし所が見えてくるかもしれません。

なお、個人的にはスウェーデンはこういうバランスの取り方がとても上手な国なのではないかと感じています。それは本書に取り上げられている放射性物質対策の他、トランス脂肪酸対策において隣国デンマークが非常に厳しい管理を行う一方でスウェーデンは企業の自主的な努力を促すことで、ほぼ同等の成果をあげていることなどからです(逆にデンマークは規制が好きで、先日も脂肪税などを導入していました)。


みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年 五十嵐泰正
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みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年

  • 作者: 五十嵐泰正,「安全・安心の柏産柏消」円卓会議
  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2012/12/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • クリック: 9回
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内容紹介

◇ホットスポットで築かれた〈信頼〉◇

◇熟議と協働により再生される地産地消◇

東京の東側におけるカルチャーの発信地であり、ベッドタウンとしても発展を続けてきた千葉県柏市。

その暮らしやすさの背景にあったのが「地産地消」でした。しかし、放射能汚染により「地」と「産」と「消」の信頼は分断されました。

しかし柏の住民と生産者、流通業者と飲食店主の四者は、自ら安心と信頼 を再構築する道を選びます。

「『安全・安心の柏産柏消』円卓会議」では、利害の異なる人たちが熟議により「安全」のルールをつくり、協働により「安心」を発信しつづけています。

一緒に土壌を測定し、野菜を測定し、売り場とリンクしたホームページで情報公開を行う……お題目で終わりがちな「地産地消」を危機のさなかから実現した柏の一年間を、ドキュメントや関係者のインタビューなどで克明に再現。

「食」「安全」「地域」「熟議」……普遍的な問題へのひとつの答えを、柏が全国に向けて投げかけます。

出版社からのコメント

貴重な試みの、貴重な記録。

消費者や生産者が対話を重ね協働した取り組みは福島にも数々あったが、記録されていない。

各地でそれぞれの記録が編まれていくきっかけに、この本はなるのではないか。

ベクミル・高松さんとのご縁で、一瞬でも柏の取り組みと接点を持てたことを嬉しく思っています。

早野龍五さん(東京大学大学院理学系研究科教授)


原子力発電所から遠く離れているにもかかわらず、ホットスポットとして注目を集めてしまった。千葉県柏市。そこでどのような対応が行われたのか、あるいは可能なのか。その試みと記録をつづったのが本書です。リスク管理は「科学に問うことはできるが、科学( だけ)では答えることのできない」いわゆるトランスサイエンスに係る領域です。地元の食品に対する信頼が失われたなかで、それを再構築するためにはどうすればよいのか。一つの答えがここにあります。

「トランスサイエンスの時代」を読んだことがある方には、本書で紹介された取組み、たとえば放射性物質測定の手法を学ぶ課程や、My農家をつくっていく課程が、サイエンスショップやコンセンサス会議の実例(しかも結果として結実している)であることがわかると思います。また、汚染の少ない野菜の生産のために行った活動は、まさに放射性物質版のGAP(適正農業規範)を作り上げる課程ととらえることもできます。

これからの農業と社会のかかわり方についてあらためて考えさせられる一冊でした。


その2に続く

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