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ワクチン後進国

  ワクチン接種は新型コロナウイルス対策の「切り札」です。第1に、個人を感染や重症化から守ります。第2に、国民の約7割が接種すれば「集団免疫」の効果が得られ、パンデミックを収束させられます。そして、従来の経済活動を取り戻すことができます。

 政府は2月17日から医師や看護師などの医療従事者への優先接種を始めました。しかし、約480万人の接種が終わらないまま、4月12日から高齢者約3,600万人の接種が始まりました。当初のスケジュールとズレており、ワクチンを打ち終わっていない医療従事者が高齢者の接種を行う状況が生じています。

 高齢者のワクチン接種が進めば、重症者や死者は減少するでしょう。そうなれば、病床の逼迫状況も改善されます。河野担当大臣は高齢者分のワクチンは6月末までに確保できると発表していますので、最速でも高齢者の接種完了は7月までかかるということです。

 しかも国は配送量の確保までで、いつ接種できるかどうかは事実上自治体任せとなっています。その上、国から自治体へ伝えられる配送時期と個数が曖昧で、準備もままならないと聞いています。少なくとも、7月の時点では、16~65歳の一般国民の大半は接種していないと想定されます。政府は当初「6月末までに全国民に提供できるワクチン確保を目指す」としていましたが、確保も接種も大幅に遅延しているといわざるをえません。

 ワクチン接種のスピードは、国によって大きく違います。最も接種が進んでいるイスラエルでは、人口の6割以上が1回以上接種しています。先進7か国では英国が40%超でトップ。現在30%台の米国はそれを猛追し、7月末までに国民のほとんどが接種を終える見通しです。日本の接種率は1%にも届かず、世界で100位ぐらいです。先進国の中では断トツに出遅れています。

 世界では今後、ワクチン接種が海外渡航の条件となるのではないでしょうか。日本の接種が進んでいなければ、各国はオリンピック・パラリンピックに選手団を派遣するでしょうか。

 ワクチン接種は、コロナ禍における景気を大きく左右します。接種が進めば感染リスクは低下するので、人々は感染を恐れずに飲食や観光に行くでしょう。サービス需要が回復し、対人接触型の雇用も回復するでしょう。急スピードでワクチンが普及している米国の個人消費は、急回復が予想されます。一方、接種が遅れる日本は、消費回復も鈍いままでしょう。

 本来ならば、変異株が蔓延してしまう前に、国民全体にワクチンを打ちきるスピード感が重要でした。しかし、すでに変異株が流入し、大阪などで新規感染者が急増するなど、第4波の懸念が高まっています。国・地方が密に連携し、ワクチン接種をより急がねばなりません。

 そもそもワクチン開発で、日本は欧米をはじめ、中国やロシア、インドにも遅れをとったことが致命的でした。その厳しい総括も不可避です。

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