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坂本龍一さん、どうして音楽家なのに脱原発なんですか?:前篇

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「エコ」は「エゴ」――自分のためにやっているだけ

もんじゅ:震災以降、ご自身のネームバリューというんでしょうか、「坂本龍一であること」を使っていこうという意識に、よりアクセルがかかっているように感じるんですが、意識の変化ってありますか?

坂本:うーん、僕が自分自身の名前を使おうと思ったのは、2000年頃かな。それはやっぱり環境問題がきっかけで。

もんじゅ:その環境問題への熱意というのは、どこからきているんでしょう。

坂本:僕の基本的な考え方っていうのは、僕はすごいエゴイストなんですよ、自分がよければいいんです。自分と自分の愛する家族がよければいい(笑)。

だけど、環境っていうのは、たとえどんなビリオネアだったとしてもさ、みんなとおなじ空気を吸わなきゃいけないわけだし、水も食べ物もみんな共有してるわけだし、ひとりで地球をなんとかしようとがんばってもうまくいかないわけで。

環境問題にとりくもうと思ったら、みんなに気がついてもらわないといけないから、こういうエコ活動みたいなものを始めたんだよね。だから、僕の「エコ」は「エゴ」なんだってずっといってるんだけど。

もんじゅ:いま坂本さんが「エコ」は「エゴ」だっておっしゃったけど、「自分が出発点だ」っていうのはすごく強いことだと思うんです。

「原発ってあぶないんじゃない?」っていうのは頭の中にはあったけど、多くの人たちは事故が起こるまではなにもいわなかったし、知ろうともしなかったと思うんです。ボクだってよくわかってなかった。

それが、2011年3月の恐怖感っていうのは、とてつもないものだったんですよね。官邸前に10万人とか20万人とかいわれる人が集まったっていうのは、歴史的なことだと思うんですが、あれは自分の肌で感じた恐怖感があるからだと思うんです。自分の感覚が出発点だから、リアルだし強いんじゃないかなぁと。

坂本:そうそう。いくら世のため人のためといっても、やっぱり自分自身と自分の家族っていうのは大切だと思うんだよね。だから、僕はエゴでいいと思うの。自分を滅して、なにかのためにやる必要なんてぜんぜんないと思ってるから。

「これは自分のためにやっているんだ」と開き直ってる。みんなもそう思ったほうがいいと思うな。


アクションにはいろんな段階がある。自分にできることを

もんじゅ:原発について「イヤだな」とか「できればなくしたい」って思う人はたくさんいると思うんです。それが、昔ながらのというか、ものすごくハードコアに反原発運動をやっている人をさきに見ちゃうと、「わたしにはあそこまではムリ」とか「自分には関係ない」って考えちゃうんじゃないかなって。

自分を滅して活動する、みたいのはハードルが高すぎるから、いまある自分の暮らしにつけくわえてなにかアクションできるのがいいな、と思います。

坂本:うん。たとえばクリックしてウェブ署名をするだけでもいいかもしれないし、友達ひとりにメールするだけでもいいかもしれない。アクティビズムというのはほんとうにいろんな段階があるからさ、いろいろ気になりだすと、たとえばお化粧もしちゃいけないのかなとか、もう生活がどうなっちゃうんだろうって感じるようなことさえあるかもしれない。

もんじゅ:そうですよね。原発問題にかぎらず、エシカルに、ということをストイックに考えだすと、あのお店では買い物できない、これは食べられない、とかってどんどんハードルが上がっていっちゃう。

坂本:アクションにはさ、グリーンピース(国際的な環境保護団体)みたいにパラシュートで原発に飛び降りるようなものから、メール1通書くというものまであるわけでね。おなじ人間がいつもおなじことをやる必要もないし、自分の体調とか忙しさにあわせて、「今日はこのぐらいにしておこうかな」とかでもまったくかまわないわけ。

規範というものに日本人って弱いのかな。「こうしなきゃいけない!」みたいに思いがちだよね。でもほんと、自分にできることをやればいいだけなんだよ。だって、自分のためなんだもん。

長く取り組むためには、ときどきデジタルデトックスも必要

もんじゅ:「脱原発のためになにをすればいいの?」「自分にはなにができるのかな?」みたいなことは、ツイッターでほんとうにたくさん質問されました。もちろん、正解はボクにもわからないんですが。

坂本:まあ、なにをするかはけっきょくは自分で考えるしかないよね。

もんじゅ:たとえばニュースにキャッチアップするのをあきらめないっていうのも、できることの1つなんじゃないかな、と思います。原発問題ってけっこう用語もむずかしいし、話題についていくのが大変なときもあると思うんですが、ニュースを見て感じたことを家族や友達と話しあうだけでも、そこから原発について話しやすい空気が少しはできていくかもしれないですよね。

あとは原発問題に限らず、最近はみんなSNSにつねにふれている環境で、もう情報につかれちゃうわけですよね。それで、「デジタルデトックス」という言葉がつくられるほど。とくに原発問題は情報量も多いし、きもちがしんどくなることもあるテーマだから、長くつづけていくためにもときどき意識的に情報を遮断するのもだいじな気がします。でなきゃ、気持ちが持たなくなっちゃうから。

坂本:僕もそう思うな。SNSのせいで読書量がめっきり減っちゃったしね。まあ、そんなふうに時間を使っているのは自分自身なので、責めるべきはSNSじゃなくて自分なんだけど……。気がつくとFacebookを見ちゃってる。

もんじゅ:坂本さんのFacebookの投稿、ものすごく多いですもんね。

坂本:あれはさ、リミットレスで情報があるでしょ。

もんじゅ:そう。どこまでも辿っていけちゃうという……。

坂本:まるで終わらない本を読んでいる感じですよね。あ! そう考えると、リアルな本っていうのは終わりがあるからいいんだな。うん、いいことに気がついた。

もんじゅ:ふふふ。実際に、おなじテキストを読むなら紙のほうが集中できるっていう実験結果もあるみたいです。

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