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坂本龍一さん、どうして音楽家なのに脱原発なんですか?:前篇

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メッセージを伝えるために、フェス全体をデザインする

坂本:3.11以前に、1、2回だけど、いわゆる反原発の市民運動の集会にもいったことがあってね、でもそれはぜんぜん雰囲気が違うんだよね。オシャレでもないし、全体の色もグレートーンというか、ふつうの人が入っていきにくい空気があった。もちろんそれはそれで大切な活動なわけだけど。

NO NUKES フェスはそういうのとはちょっと違って、官邸前抗議に近い雰囲気かもしれないよね。誰でも気軽に来られる感じで、若い人もすごく多くて、カラフルな感じ。

もんじゅ:NO NUKESのお客さんって、ふつうにフェスに来る人達の感じでしたよね。ふつうにチケット買って、ふつうに会いたいアーティストがいて、音楽を聴きにきた、という。だけど「原発はイヤだ」っていうメッセージTシャツを、フェスのスタイルのファッションに取り入れている。すごく自然にそうなってるんだけど、それってみたことのない風景で、新鮮でした。

最初にこれ(持参した「NO NUKES 2012」のトートバッグを取り出す)を見て、わー、こんなに「NO NUKES」って大きく入っててだいじょうぶなのかな、なんて思ったんです。だけど会場ではみんなこのロゴが大きく入ったTシャツを着て、すごく楽しそうにしてた。

NO NUKES 2012会場の様子

坂本:デザインってほんとに大事なんですよね。ああいったフェスでも、言葉はもちろんだけど、フォントとか、ロゴとか、レイアウトとか、映像の編集のしかたとか、そういうひとつひとつのすべてが重要なんだと思う。たとえば会場に吊るした大きなバナーだって、すごくこだわってつくったもん。

フェス全体でメッセージを発しているわけだから、思想や言葉が正しければいいっていうやり方じゃもうダメなんですよね。「自分たちは正しいことをいってるんだから、見え方なんかどうでもいいだろう」って開き直っちゃダメだと思う。見え方とか表現の仕方を疎かにしてしまったら、伝わらない。


新しいことを始めたら、かならず批判は出てくるよね

もんじゅ:ときどき、ボクがツイッターをやったり、本を出したり、フジロックに出たりしている一連の活動を、どこかの広告代理店がやってると思ってる人がいるんです。その誤解じたいはすごくおもしろいなぁって思うんですが(笑)。

でもほんとに、これまで「原発は安全」とか「原発はクリーン」とかいうウソを、電力会社さんや文科省さんはまさに広告代理店を通して啓蒙してきたわけで、じゃあやっぱりその広告代理店的な手法っていうのはそれなりに効果があるんだと思うんです。

「原発をやめよう」っていうメッセージを伝えて浸透させていくには、そういった「明るい」とか「わかりやすい」「かわいい」「とにかく何度も繰り返す」とかいった手法じたいは否定せずに、脱原発側もどんどん使っていけばいいと思うんです。それは、どうやってメッセージを伝えるかという方法論だから。わかりにくいよりは、わかりやすいほうがいいし。かっこわるいよりは、デザインがいいほうがいいし。

坂本:原発にかぎらずなんでもそうだけど、新しいテーマに取り組むと誤解や批判は生まれるよね。

1994年に自分の出すCDのパッケージをすべて紙ジャケットに替えたときも、何年もバッシングを受けつづけたの。「プラスチックのほうがいい」ってね。人間って保守的な生き物だから、急に新しいものに変わると嫌みたい。明らかに紙ジャケのほうがいいのにさ(笑)。

もんじゅ:えーっ。初回限定で紙ジャケのCDもあったりしますよね。紙ジャケのほうがうれしいのかなって思ってましたが。

坂本:いや、94年当時はまだ少なかったんだよね。

もんじゅ:そっかぁ……。紙ジャケに変えられたのはなぜなんでしょう。

坂本:それはもちろん、環境への負荷を考えてね。プラスチックはなるべく使わずに、紙に替えていこうとしました。それで、僕は2000年ごろから環境問題について発言しはじめたんだけど、やっぱりそのときはすごいバッシングがきたわけ。まぁ気にせずにやってたんだけども。

たまに、着られないTシャツも送られてきます

坂本:あとさ、やっぱり表現手法には気を遣わなくちゃね。どんなことでも、クリエイティビティをアートの域にまで高めて出すっていうことが絶対に必要だと思う。デザインっていうのはほんとうに大切だから。

もんじゅ:ボクの活動をならべていうのはおこがましいんですけど、ボクのウェブサイトやグッズもひとりのデザイナーさんが統一してやってくれていて。そのおかげって大きいなあって思ってます。

たまたま関わってくれてる編集者さんとかも音楽が好きな人が多かったから、グッズをつくるときも「ふつうに使えるものじゃないと意味ないよね」っていうのはありました。「原発はイヤだ」って口に出すのはすごく大変かもしれないけど、Tシャツを着たりバッジをつけるっていう行為は自然にできるから、グッズを通して「NO NUKES」っていっていくのもささやかだけどひとつの方法だと思ってます。

ところで、今日の坂本さんが着ているのは、なんのTシャツでしょうか。「NO NUKES, MORE TREES」って書いてありますよね。

「ストップ・ロッカショ」でつくったTシャツ

坂本:あ、これは「ストップ・ロッカショ」でつくったTシャツでね、これがあとから「more trees」をつくるきっかけになったの。

もんじゅ:活動よりも、メッセージがさきにあったんですか?

坂本:そうそう。さきに言葉があった(笑)。最初に「NO NUKES, MORE TREES」ってキャッチコピーが浮かんだんだよね。「ストップ・ロッカショ」の活動だから、青森の六ケ所村に木を植えにいこうとしてたのね。そこに土地を買って、植林しようって考えてたんだけど。

もんじゅ:ああ、それで「NO NUKES, MORE TREES」なんですね。

坂本:そう。それが、いざ六ヶ所村にいってみたら、木がたくさんあった(笑)。

もんじゅ:ああ、原発があるところはたいていすごく自然がゆたかですよね。なるべく人のいないところを探して建てちゃうから……。


「NUKES」はわかりにくくても、「TREES」はパッと伝わった

坂本:それで当時はね、「NUKEって何?」「原発のこと……!?」みたいな感じだったんだよね。なかなか伝わらない。だけど「MORE TREES」のほうはさ、だれが見ても「いいよね!」「そうだよね!」ってなるわけ。

もんじゅ:わかりやすいし、共感してもらえるわけですね。

坂本:で、まぁ、六ヶ所村は自然がすごく豊かで「なんだ、木はもうたくさんあるじゃん」っていうことで、他の場所で森をつくっていこうってことで「more trees」って活動を始めたんですよ。それでこのTシャツも、デザイナー50人がこのおなじキャッチコピーでデザインをしたもののうちの1枚。これは瀧本幹也さんっていう写真家のデザインなんだけども。

Tシャツってひとつのメディアだから、みんないろんなメッセージを刷り込んで配ったりしてるけど、中にはメッセージがストレート過ぎてちょっと着られないかなっていうものもあるよね。

もんじゅ:しっかりしたメッセージやコンセプトがあるうえで、よいデザインできちんとパッケージされてることが大切ですよね。受け取ったほうもうれしいし、じっくり考えることができると思います。

坂本:そうそう。それで、Tシャツっていうのはやっぱり着られないとメディアにならないわけだし、どうせ着るならかっこいいほうがいいじゃない? そんなわけで、桑原茂一君がいろんなデザイナーに発注してTシャツをつくる、っていうのをずっとやってるの。

もんじゅ:じゃあ、この「NO NUKES, MORE TREES」は、ずっとおなじメッセージで、いろんなデザインのTシャツをつくってるわけですか。

坂本:うん。2006年からかな。きのうじつは「more trees」発足5周年のパーティーだったんだよね。2007年の7月に法人をつくったから、ちょうど5年。

もんじゅ:ほんとに環境問題っていうのがライフワークになっているんですね。

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