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ドコモとiPhone(今年の企業総括その1)

そろそろ今年を振り返る時期がやってまいりました。拙ブログのカラーを考えて今年の企業ネタの中で多く取り上げたテーマは何の話であったのか、ザッと調べてみたら一番登場回数が多そうだったのはソニー。次が東京電力、そしてNTTドコモがベスト3でした。年末に際して、これら個人的に関心の高い3社の今年の総括をしておきたいと思います。まずは第三位、NTTドコモから。

ドコモネタを多く取り上げてきた理由は、アップルのiPhoneを取り扱う可能性はあるのかないのか、今だにそれを取り扱えない理由は何なのか、といった世間一般が抱いているであろう疑問点を探ってみようというものでした。さまざまな観点からいろいろなことを書いて来ましたが、この問題に関して今年の年末段階での私なりの考えを復習してまとめておきたいと思います。

iPhoneを今だに取り扱えない理由は、以下の3点に集約されるでしょう。
①アップルのiPhone販売ノルマとドコモ既存サービス維持の問題。
②電波行政における外国企業製品シェアの問題
③絶不調家電大手メーカー擁護の問題

①は幅広くいろいろなところで言われ書かれている問題です。簡潔にまとめるなら、ドコモがiPhone取り扱いたいならiPhone向けの特別な料金体系を組み、ドコモの携帯電話総販売量の50%以上をiPhoneで確保せよという条件がアップル側から提示されていると言われています。これはノルマの大きさもさることながら、一律の料金体系を崩すことはドコモの基本戦略や収益構造を著しく歪め、収益面のマイナスは販売店手数料の大幅な見直しを迫られて、販売代理店との関係をも見直しせざるを得ない状況に追い込まれることを意味しています。

それと既存サービス維持の問題。過去に膨大な投資を掛けてきたお財布ケータイやDCMXなどの付随サービスがiPhoneでは取り扱いができないことをはじめ、iPhone上ではその他ドコモの既存サービスにも様々な制約が発生することも予測されています。そんなiPhoneがノルマにより全販売台数の50%以上を占めることになるなら、コンテンツ・ビジネスを今後収益源の大きな柱として考えているドコモにとっては、通信キャリアにおける「巨人」の座を揺るがしかねない状況にもなりうるのです。

②の話は、総務省が牛耳る電波行政において、アメリカの巨大企業が通信機器を通じて支配しうる状況を作り出すことをよしとしていないのではないかという観点です。以前にこの話を書いたときに、「サムスンやLGなど韓国企業の製品をドコモは扱っており、アメリカはダメと言う論旨はおかしい」といった趣旨のご指摘を複数いただきました。

この点に関して言うなら、サムスン、LGが現状どんなにがんばってもドコモだけでなくau、ソフトバンクも含めた、国内全携帯販売台数の50%を超えるシェアをとるなどということはありえない訳ですが、ドコモが同社シェア50%以上のノルマの下iPhoneの取り扱いを開始したなら、アップル製品が国内全携帯電話販売数の50%を超える可能性も出てくるわけです。アップルだからとかアメリカだからではではなく、海外の特定企業の製品が民間通信機器として50%以上のシェアを持つことは、有事対策という観点からみても総務相が好ましいことではないと考えて当然ではないのかと思うのです。

③の話は先月の拙エントリで取り上げ、各種メディアでも幅広く紹介されるなど、多くの反響を頂戴した視点です。かいつまんで復習すれば、ドコモがiPhoneを扱い販売シェアの50%というノルマを飲むなら、既存の国内携帯メーカーの大半は携帯製造分野からの撤退を余儀なくされるであろうということ。具体的には、富士通はかろうじて生き残ったとして、NEC、パナソニック、シャープ、ソニーは撤退せざるを得ないのではないかなと。

そうなれば各社に与えるダメージは甚大であり、出口が見えない赤字にあえぐ一部メーカーは息の根を止められかねず、わが国の景気回復にも大きく暗い影を落とすことになるのではないのかと思うのです。NTTグループの筆頭株主である日本国財務大臣が、そのような国家的リスクのある策を不況下の現段階ではよしとしないのではないかと、そんな話であります。それと、ドコモが二人三脚で携帯のガラパゴス的ビジネスモデルを作ってきた大手家電各社に、現状で引導を渡すような仕打ちができるのかと言う点からもこれは難しいのではないかと思えるのです。

こうやって見てくると、考えれば考えるほど現段階でドコモがiPhoneを扱う可能性は極めて低いと思えます。来年に向けてドコモが望んでいることは、iPhoneの早期取り扱いではなくiPhoneの早期自発的地位低下ではないのかなとも。iPhoneに関して致命的な不具合などに起因する“神風”を待つ心境であるのかもしれません。

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