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ガバナンスなき学校法人は課税せよ

広義の「公益法人」には、公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、宗教法人などがあり、その公益性に鑑み、法人税や固定資産税の免税など、様々な優遇税制が用意されており、いわば、国民の税金を投入(租税支出=tax expenditure)しながら、公益活動を社会的に皆で支えていると言えよう。

2年ほど前に、私が自民党行革推進本部長に就任直後、スポーツ団体や学校法人における不祥事が連発した。行革本部に「公益法人改革チーム」(牧原秀樹主査)を設置し、外部の弁護士の協力も得ながら、抜本改革について議論を深めた。

議論の過程で知って驚いたのは、文科省が説明に使った学校法人のガバナンス構造を示すポンチ絵だ。通常、公益法人の評議員会は理事会の上に位置し、理事の任免権を持ちながら、理事会を監視、監督する役割を果たすものだが、学校法人の場合は、何と、理事会の下、ポンチ絵の最下部に評議員会が位置していた。

文科省の説明は、学校法人における評議員会は、理事会の諮問機関だという。たしかに私立学校法では、理事長は重要事項について評議員会の意見を聴かなければならないほか、役員に対し意見を述べ、又は諮問に答えるなどと規定されるにとどまる。評議員の中には、学校の職員(使用人)や卒業生も含む、とも規定されている。となると、一体誰が学校経営を担う理事、理事会を監視、監督するのだろうか。

さらに、理事の任期についても、他の公益法人の場合、「上限2年」と法定されており、再任は禁止されていないが、2年ごとに評議員のチェックを経ることとなっている。それならば健全だ。しかし、学校法人は理事任期の定めはなく、寄付行為の定め方次第では何年でもチェックなしで勤め続けられる。

社会福祉法人については、財務省が内部留保に課税する可能性に触れたことがガバナンスに関する議論に火をつけ、私が厚労大臣の時にガバナンスを含めた抜本改革を行ったが、その際、一定規模以上の社会福祉法人には会計監査人を置き、会計監査を義務付けた。ところが、学校法人は、規模に関係なく会計監査が法定義務化されておらず(補助金投入があった場合には、その分だけの監査あり)、公益財団法人などとの平仄が全く取れていない。

一昨年の夏、牧原改革チームの提言を受け、私が当時の柴山文科大臣との間で直接折衝のうえ、改革実行に向け、「骨太の方針2019」に、「公益法人としての学校法人制度についても、社会福祉法人制度改革や公益社団・財団法人制度の改革を十分踏まえ、同等のガバナンス機能が発揮できる制度改正のため、速やかに検討を行う」と明記することで合意し、閣議決定するに至った。その際、「ほぼ同等」との文科省提案の「ほぼ」は、柴山大臣との直接折衝で削除され、公益法人間のガバナンスの統一性が取れることが約束された。

ところが、その改革内容を議論するための文科省内の「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」が先週19日(金)に、「学校法人のガバナンスの発揮に向けた今後の取り組みの基本的な方向性について」との報告書をまとめた。その内容たるや、明らかに閣議決定に抵触する項目が多々あり、多くの善意の学校法人が真っ当なガバナンスの下で優れた教育の「中身」で勝負をされている一方で、緩いガバナンスを望む、ごく一部の人々の為なのだろうか、とても「他の公益法人と同等のガバナンス機能を発揮できる制度改正」には全くなっていない「方向性」なるものが出てきた。まさに、「骨太の方針」の「骨抜き」だ。

例えば、「評議員と理事や使用人(従業員)との兼職禁止規定」を他の公益法人法制のようには設けておらず、理事の任免は評議員会マターに変更する一方で、従業員を含む評議員会が理事長の解任を決めるという。また、監督する側の評議員が監督される側の理事を兼職できる、という利益相反そのものも許される。

また、理事の任期を他の公益法人のように上限「2年」で再任を妨げず、としないがため、寄付行為の規定次第で長期にわたり理事長を続けることも可能のままだ。会計監査に関しても、「義務付ける方向で検討」と含みを残した曖昧な表現に止まっている。また、他の公益法人の場合、理事のうちに、理事の近親者のみならず、理事と特殊の関係がある者が一定数、一定割合以上含まれてはならない旨の規定があるが、今回の報告書では、そのような定めもなく、利益相反のある者や特殊の関係がある者が経営をゆがめることは十分可能なままだ。

その他項目を含め、今回の報告書と他の公益法人ガバナンスと比較した、「他の公益法人等では法定されているにもかかわらず、学校法人については法定されていない主な事項」を是非見て頂きたい。(注)余りに多くの点で、学校法人のガバナンスは尻抜けだ。

学校は、国や地域の将来の担い手を育む最も大事な場所。その経営のガバナンスがここまで機能せず、利益相反や、特定の利益のために偏った経営が行われることを十分許容してしまう、「他の公益法人と同等のガバナンス機能を発揮」はとてもできない今回の文科省の取りまとめは、到底容認できない。

加えて、今後大学設置・学校法人審議会学校法人分科会の下に新たな会議体を設けて詳細を詰める、と文科省は言うが、この分科会委員の構成を見て、わが目を疑った。14人の委員のうち、11人までもが学校法人の当事者だ。学校法人のガバナンス、とりわけ経営権を有する理事、理事会への統制の在り方を検討するに当たって、このようなものの決め方を文科省がするのはいかがなものかと愕然とし、これでは日本の教育に希望が全く持てないと思った。

このような委員構成の分科会での了承を取る、という事であるならば、今回取り纏めた報告書と大差ない結果が出るのは火を見るよりも明らかだ。議論の場の設定から再考を促す。

このような利益相反だらけで、自己都合が通るガバナンス構造で学校経営をする中で、「ガバナンスとは、コンプライアンスとは、利益相反排除とは」を教育現場で教えても、学生から、「だったら、まず自分たちの経営をきちんとしたガバナンスにしてから教えるべきだ」と言われてしまう。

また、この事は、国民の税金の使い方と一体の問題である事も念押ししたい。

このところ、教育現場の関係者の集まりで、多額の使途不明金が大きな問題となっているが、法律による内部統制の仕組みが不十分なため普段からこのようなガバナンス不在の経営が許され、それが当たり前で習慣化していれば、つい誘惑にかられる経営者もいるかも知れない、と思うのは、私だけではないのではないか。

既に、萩生田大臣にはこの問題の所在をお伝えし、この機をとらえて、他の公益法人と同様に一気に改革を推し進め、若者、子ども達に堂々とガバナンス、コンプライアンス、利益相反回避の重要性等を教え、健全な学校法人の下で健全な社会を作ることの大切さを教育現場で徹底して頂くようお願いしている。

(注1)「公益法人としての学校法人ガバナンスの問題点」

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