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「今年の漢字」はいつから現実逃避のアイコンになったのか?

 2012年、“今年の漢字”に選ばれたのは「」だった。

 2011年は「」。

 これらが、それぞれの年の事実の一部分を示していることは否定しない。2012年のオリンピックで金メダルがたくさん取れたのは事実だし、2011年の大震災で絆が改めて意識されたのも事実ではある。

 しかし実際には、2012年において「金」は足りないものであり、2011年において「絆」も足りないものだった。大震災後、多くの地域共同体は危機に瀕しているし、震災後にみられた種々の議論は、合意形成よりも唯我独尊を押しつけあうような、なかば中傷合戦のような様相を呈していて、度量のある身振りと政治が心がけられた人は少数に過ぎなかった。

 そんな現状のなかで、「金」だの「絆」だのといった、全体としては枯渇気味もいいところな要素を指し示す漢字が、二年連続で選ばれているのである。願望か、あるいは現実逃避か――いや、現実逃避というのも願望のひとつであるから、2011年、2012年の今年の漢字は願望ベースで選ばれたと考えて差し支え無いだろう。

 ちなみに2010年は「」、2009年は「」だった。2010年は記録的猛暑だったし、2009年は民主党の新政権が発足し新制度があれこれスタートした年だった。これらは現実社会の全体像とさほど矛盾しない。

 また過去には2007年の「」や2004年の「」、1997年の「」のように、その年の社会問題をストレートに反映した漢字が選ばれることもある。そのような今年の漢字には、社会風刺的なニュアンスが込められていた。

 しかし、2011年、2012年に関する限り、「今年の漢字」は現実社会の全体像の素描も、社会風刺も、放棄してしまっている。「見たい現実だけ見て」「見たくない現実からは目を逸らす」ためのシンボル、願望としての今年の漢字。

 なんとなく、選ぶ側の配慮もわからなくもない。厳しい現実を直視すること・風刺することには、或る程度の精神的余裕が必要になる。しかしそのような精神的余裕は、地震で打ちのめされ、種々の問題に右往左往する人々にはもはや残されていないのではないか。少なくとも、今年の漢字を選考する立場の人達は、そういったマクロな心理的事情を計算に入れながら、「金」なり「絆」なりといった漢字を選んだのではないか。

 仮にそういった選考上の計算が本当にあったとして、大衆におもねったと怒るべきなのか、国民感情に配慮したと褒めるべきなのかはわからない。が、とにかくも、体よく現実の上澄みを掬いとりつつ、現実認知を遠ざけるような効能を孕んだご都合主義なアイコンが、二年連続で今年の漢字として選ばれた。2013年の今年の漢字はどういう基準で選ばれるだろうか?それほど悪い意味でもなく、なおかつ現実直視や現実風刺のニュアンスが込められた漢字が選ばれていて欲しい、ものだが。

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