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【121カ月目の汚染水はいま】「海洋放出への賛否言う立場に無い」に怒り噴出 県民への説明責任果たさぬまま、福島県知事が経産省に〝容認詣で〟

福島県民の8割もの支持を得ると、ここまでおごりたかぶるものだろうか。福島県の内堀雅雄知事は最後まで海洋放出の賛否を表明せず、県民への説明責任も果たさないまま〝容認〟に向かって動き出した。15日夕には経産省で梶山弘志大臣と面談。原発汚染水の海洋放出を前提とした5項目の対策を要望したが、午前に福島県庁内で行われた会議は非公開。会見でも答えをはぐらかしたうえに「福島県自身が容認する、容認しないと言う立場にあるとは考えておりません」とまで言い放つ始末。民意不在の〝なし崩し容認〟に、県民から怒りの声が噴出している。



【無視された市町村議会の意見書】

 驚きの発言は、午前11時すぎから行われた内堀知事の会見(約8分間)で飛び出した。

 朝日新聞記者が「海洋放出自体に賛成とか反対とか、県としての立場を教えてください」と質したのに対し、次のように言い放ったのだ。

 「まず福島県自身が容認する、容認しないと言う立場にあるとは考えておりません。ただいずれにしても今回、私どもがこの後最終的に整理をして経済産業大臣に御意見を伝えますが、そのプロセスの中でわれわれがどういう考え方、どういう立場で今回の意見を訴えていくのかという事をていねいに御説明したいと思います」

 梶山経産大臣が福島県庁を訪れ、海洋放出方針決定を内堀知事に伝えたのが13日昼。その際、内堀知事は「この処理水の問題は、福島県の復興にとって重く、また困難な課題であります。県としてこの基本方針について今後精査を行い、改めて福島県としての意見を述べさせていただきます」としか答えず、県としての賛否を示さなかった。自民党など、県議会4会派から申し入れを受けても「内容を精査する」の一点張り。それから2日。原発事故被災県のリーダーが口にしたのは何と「賛否を示す立場に無い」だった。

 河北新報記者に「知事の意見を聴かせてください」と求められても「私自身の意見は、まさに県庁の組織として整理を行い、そこに対して特に今日の夕方、経済産業大臣に対しては福島県知事としての想いも込めたお話をさせていただきます」と意味不明の答え。

 筆者は知事がなぜ態度表明をしないのか、県内7割の市町村議会から出された形容放出に否定的な意見書は無視されるのか問うたが、煮え切らない態度は変わらなかった。

 「福島県内においては海洋放出に反対される意見、タンク保管継続を求める意見、風評を懸念する意見、あるいは一方で、このままタンク保管を継続されると特に地元自治体の復興やふるさとへの住民の帰還を阻害する。こういった事を心配する意見など様々なご意見があります。こういったものを国自身がこれまでの期間、様々な形で聴きながら今回の決定をされたと受け止めております」







結局、内堀知事は海洋放出への賛否を明らかにしなかった。この日の会見でも自分の言葉で県民に語りかける事をせず、県職員が前日に用意した文面を読み上げた。「第2回原子力関係部局長会議」も取材者を締め出し非公開。県職員が廊下で見張る中、海洋放出容認は〝密室〟で決められた

【メディア締め出し密室会議】

 そもそも、国と話をする前に県民に自らの考えを示すのが筋だろう。内堀知事に続いて囲み取材に応じた県原子力安全対策課の伊藤繁課長にそれを質したが「今回の趣旨は一昨日、国が決定致しました処理水の処分に関する基本方針、これに対しての福島県としての意見を述べるという事になりますので、まずは真っ先に担当大臣である梶山大臣にお伝えをするという事になります」と話すばかり。

 別の記者も「夕方、梶山大臣に対して賛否など態度を示すのか示さないのか、どう考えているんですか?」と詰め寄ったが、伊藤課長は「先ほど知事がおっしゃったとおりだと思います。われわれ事務方ではちょっと…」と答えるのが精一杯だった。

 知事会見に先立ち、午前10時50分から開かれた「第2回原子力関係部局長会議」は取材者を締め出し、密室で行われた。冒頭1分足らずで退室を命じられ、部局長からどんな意見が出たのか、誰が何を発言したのか全く分からない。扉の前には県職員が〝門番〟のように立つ警戒ぶりで、配られた資料にも内堀知事が経産大臣に提出する内容は無かった。

 県政記者クラブは広報課を通じ、会議を公開するよう申し入れていた。それでも県は2回とも非公開を貫いた。毎日新聞記者が「海洋放出に反対する方の中には、結論ありきだったんじゃないかという声をたくさん聴きました。県としての検討過程をクローズにしているというのは疑念を増幅させるだけの対応のように思えます。どうして公開という選択肢が無かったのでしょうか」と内堀知事に質問したが、知事の答えは、ここでも当を得なかった。

 「今、この関係部局長会議を一昨日、経済産業大臣からのご意見をいただいたうえで行っているところであります。で、今日も様々な議論を行っておりますが、やはり県として意見全体として取りまとめるうえで、これまで、様々な原子力関係の意見を整理する際には一定程度クローズで行い、そのうえでその結果をオープンにするという形をとっているところであり、それと同様の対応を行っているところであります」

 主権者不在の密室県政。これが、地元メディアの世論調査で8割もの支持を得ている首長の真の姿なのだ。







内堀知事が梶山経産大臣に手渡した「申し入れ」。海洋放出を前提にしているうえに、これまで県議会などで答弁してきた内容と大差ない5項目に「何のための2日間だったのか」と批判の声があがっている

【「容認以外の何物でも無い」】

 2日も時間をかけ、密室で話し合われた末に経産大臣に提出された「福島第一原子力発電所における処理水の処分に係る申し入れについて」。午後5時すぎに記者クラブだけに配布されホームページでも公表されたが、内容はこれまで内堀知事が口にしてきた事の域を出なかった。海洋放出への賛否に全く言及せず、次の5項目について申し入れただけだった。

 ①関係者に対する説明と理解

 ②浄化処理の確実な実施

 ③正確な情報発信

 ④万全な風評対策と将来に向けた事業者支援

 ⑤処理技術の継続的な検討

  2日間の会議で「各部局から様々な意見が出され」、「こうした意見を取りまとめた」結果が、賛否表明無しの5項目申し入れ。「国の基本方針など拒否して欲しい」という県民からの申し入れは完全に無視され、軸足は海洋放出後の〝風評被害〟対策に置かれている。これら5項目はあくまでも海洋放出する事が前提の「対策」だから、結局は内堀知事は国の基本方針を容認している事になる。しかし、それを県民に向けて説明する事もしない。

 市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」のメンバーで、原発汚染水の陸上保管継続を訴え続けている水藤周三さん(福島市在住)は「わざわざこんな内容の無いものを東京まで行って大臣に手渡してきたのですね。しかも、会見では『容認するかしないか言う立場ではない』。その発言自体が容認以外の何物でも無いですよね。なぜ国や東電の責任は口にするのに、自分は自治体の首長としての責任で物を言わないのでしょうか。知事が逃げ回っている間に、外堀ばかりかついに内堀まで埋められてしまいました」と呆れた様子でコメントを寄せた。

 岩渕友参院議員(共産党、喜多方市出身)も「海洋放出決定に県民から怒りの声があがる中で、反対の立場で政府にはっきり物を言ってほしいというのが、県民の思いではないでしょうか。知事にこそ県民の思いを代弁して欲しいと思います」と語る。

 内堀知事の「物言わぬ姿勢」は示された。それでも福島県民は支持し続けるのだろうか。

(了)

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