- 2021年04月15日 19:01
超高齢社会における問題の本質は世代を問わない「孤独・孤立」 - 「賢人論。」第136回(中編)太田直樹氏
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太田直樹氏はボストンコンサルティングを退社し、2015年1月から2017年8月まで、総務大臣補佐官として地方活性化やIT、AIの社会実装に辣腕を振るってきた。地方が抱えるさまざまな問題の解決に取り組んでこられた太田氏に、超高齢化社会を生き抜くためのヒントについて語っていただいた。
取材・文/盛田栄一 撮影/丸山剛史
健康寿命を延ばすカギは「社会参加」にある
みんなの介護 新型コロナがいつ終息するのか先が見えない中で、持続的な超高齢社会を築いていかなければなりません。デジタル技術は、この問題を解決する切り札になり得るでしょうか。
太田 私は介護の専門家ではありませんが、介護業界の方とお話しする機会は比較的多いと思います。そんなとき、よく耳にするのが「健康寿命をどう延ばすか」というお話です。健康寿命を延ばすには「食事」と「運動」、それから「社会参加」の三つが重要で、最初の二つに関するノウハウは解明されてきました。ですが、高齢者の「社会参加」については、どのように取り組んだら効果的なのかがまだよくわかっていません。
予防医学の研究者である石川善樹さんは、「友だちの少ない高齢者は早死にする」と言っています。他者との交流が少ないことのほうが、喫煙よりも死亡リスクを高めるとされています。社会参加の効果については、すでに証明されているのです。
重要であることはわかっているのですが、高齢者の社会参加を促すのは簡単なことではありません。独居高齢者は年々増えていて、地方ではそういう人の移動手段がなかなか見つからないし、都市部ではそもそも、そういう人とコミュニティとの接点がありません。
みんなの介護 都市部では隣近所と交流を持たない高齢者が増えているようです。
太田 私は最近、超高齢社会の問題の本質は、「孤独化・孤立化」にあるのではないかと考えるようになりました。つまり、年齢とともに人間の体が弱っていくことよりも、社会から切り離されていくことのほうがより深刻だと考えるようになったのです。
現代社会において、孤独なのは高齢者ばかりではありません。わが国では人と人との関係が年々希薄になってきていて、従来のコミュニティも機能しなくなってきています。だとすれば、超高齢社会の問題は、中高年や若者も巻き込んで考えていくべきです。
日本人は他者との関係性の中に幸福を見出す
みんなの介護 あらゆる世代を巻き込んで取り組むとは、具体的にどういうことでしょうか。
太田 私の知人に、坂倉杏介さんという場づくりの名人がいます。東京都市大学に研究室を持つ社会学者で、2008年に東京都港区との連携事業で、「芝の家」というサードプレイスをつくって話題になりました。
芝の家は「地域をつなぐ!交流の場づくりプロジェクト」の拠点になっていて、ご近所から年間1万人もの人が訪れ、今でも賑わっています。その内訳は高齢者が15%、小中学生が30%。古民家で、いろいろな世代の人がごちゃまぜになるのが良いのだと思います。高齢者は子どもや若者との交流で楽しみや生きがいを見出し、子どもたちも高齢者と接することでレジリアンス(回復力・抵抗力)が上がることが確認されています。
みんなの介護 つまり、高齢者の問題は高齢者だけでは解決しない、ということですね。
太田 そのとおりです。私が一緒にプロジェクトをやっているドミニク・チェンさんという、「ウェルビーイング(well-being)」の研究者がいます。ウェルビーイングとは、精神的・身体的・社会的に充足した状態を指し、「幸福」と言い換えることもできるでしょう。
ドミニクさんが参加している研究プロジェクトによれば、欧米人のウェルビーイングを感じる対象は自分へ向いているのに対して、私たち日本人のウェルビーイングは、「周りにいる人が幸せなら自分も幸せ」と利他的なのだそうです。
だとすれば、超高齢社会で発生する諸問題についても、人と人との関係性の中から答えを見つけていったほうが良いのではないでしょうか。



