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おいおい、本気かよ! - 鈴木耕

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 ブラックジョークばかりの世の中になったか。それともぼくの頭がおかしくなったのか。4月1日(エイプリルフール)ならいざ知らず、最近のニュースには「おいおい、本気かよ!」的冗談みたいなものが多すぎる。

1. ウチワ会食

 兵庫県の井戸敏三知事が、会食中はウチワで口元を隠しましょうという「ウチワ会食」の呼びかけをした。4月9日の記者会見での発言だ。

 それを聞いたとき、むろん他愛のないジョークで、コロナ禍でギスギスした雰囲気を和らげよう、という意味なのだろうと、ぼくは思った。ところがこれが大まじめなのだから驚いた。なんとそのために32万本のウチワを発注、神戸、尼崎、西宮、芦屋にある1万6千店の飲食店に配るという。

 「おいおい、本気かよ!」

 平安時代の貴族たちが「おーほっほほ、麿(まろ)は満足でごじゃる」などと、扇子で口元を隠しながら話すのを、昔の映画で見たことがあるけれど、まさかそれが現代に甦るとは思わなかったなあ。だけど、ウチワで口元を隠しながら話しても、唾の飛沫は脇からどんどん飛ぶだろう。どう考えたって、ウチワじゃ防げまい。

 32万本のウチワにいくらのカネがかかるか知らないが、もう少しまともなことにカネを使うべきじゃないかと、ぼくは思う。「マスク会食」ってやつも、そうとうおかしな要請だと思うけれど、この「ウチワ会食」に至っては、冗談にもなるまい。

2. 子ども庁

 菅首相は、間近に迫った衆院選の目玉政策のひとつとして、「子ども庁」を創設する方向だという。まあ、菅首相得意の「組織いじり」に過ぎない。この人、何かといえば「官庁の縦割り主義を打破して政策の一元化を図る」などと言って組織をいじくりまわし、名目だけの大臣を作り出す。

 コロナに関しては、担当は西村康稔経済再生相、ワクチン担当に河野太郎行政改革担当相、それに田村憲久厚労相も絡む。何が政策の一元化だ。ただやたらと「担当」を増やしてゴチャゴチャにしているだけではないか。

 また内閣特命相として男女共同参画担当なのが、橋本聖子氏から代わった丸川珠代氏。しかしこんな名目だけの担当大臣が、いったい何をしたか? 要するに、女性大臣が少ないから適当に作っただけ。これが菅首相得意の「組織いじり」の実態だ。

 「子ども庁」に関していえば、例えば幼稚園は文科省、保育園は厚労省、認定こども園は内閣府の担当となっているが、それを「こども庁」に一元化して、政策の執行を円滑化するのだという。まあ、それはそれで結構だ。しかし、なぜ新官庁を作らなければならないのか。そんなふうに管轄が分かれているならば、それを文科省(厚労省でもいいが)に束ねさせればいいではないか。新たな官庁を作るのは、また新たな予算と人員と、そして利権を生むだけの結果に終わるだろう。

 しかもここからが「おいおい、本気かよ!」なのである。

 衆院選に間に合わせるために、早々に「こども庁創設協議会」というようなものを自民党内に設置するという。そのトップを聞いてぼくは腰を抜かした。なんと、二階俊博自民党幹事長が協議会の座長になる。おいおい、本気かよ!

 二階氏は御年82歳であらせられる。後期高齢者(ぼくもうそうだが)が、「子ども庁」に口を挟む余地なんかないだろうよ。

 ぼくはこの「子ども庁」なるものにそもそも反対だけれど、一歩譲って創設するとしたって、男でも女でも、もっと若い人材はいないのか、と思う。二階氏が出てくると、またもやあの悪名高かった「GoToトラベル」のように、何か利権が絡んでいるのではないかと邪推したくもなってしまうのである。

3. 汚染水放出・その1

 これこそ最大級の、「おいおい、本気かよ!」である。

 福島第一原発事故で発生した汚染水の処理が大きな問題になっている。それに関し、菅首相は、処理済み汚染水の海洋放出を決めた。むろん、漁業関係者は絶対反対の立場を崩していない。7日に首相と会った岸宏全漁連会長は、会談直後に記者団に対し「絶対反対」を何度も繰り返した。現地福島の人たちの反対も根強い。にもかかわらず、13日、菅政権は強引にも海洋放出を決めた。

 ALPSという放射性物質除去装置があり、これによりトリチウム(三重水素)以外の放射性物質は取り除けるというのだが、実際は処理後にもかなりの放射性物質が混じっている。その量は定かではないが、混入は東電も認めている。

 トリチウムは残念ながらALPSでは除去できない。つまり処理水とは言いながら、汚染度は低減されるが完全除去ではないのだ。その「汚染処理水」は、これまで海洋放出できず、原発敷地内のタンクに溜めて保管してきた。そのタンクが、2023年3月ごろには満杯となることから、もはや保管は限界だとして政府は海洋放出に踏み切ったわけだ。

 これに対し、例えば原子力市民委員会(民間研究者たちの組織)は、「海洋放出以外の現実的代替案はある」として、モルタル固化案や大型タンク案などを提案している。さらに、原子力市民委員会座長の大島堅一氏はこんなツイートをしていた。

ALPS処理水の置き場について、政府の審議会で拡張の可能性について検討するよう意見が出たあと、政府は地権者への打診を一切行っていませんでした。行政文書開示請求の際、資源エネ庁は該当箇所を黒塗りにしていましたが、環境省は黒塗りしていなかったので、このことがわかりました。

 つまり、資源エネ庁は隠そうとして黒塗りしたが、環境省はそこまで気が回らなかった。そのため、現状の保管タンク設置場所以外にも土地を探すべきという意見を聞かぬふりして、土地の地権者に打診すらしていなかったということがバレてしまった。その上で、タンク設置場所が満杯だから海洋放出するというのだ。

 はっきり言おう。原発周辺には、汚染で住めなくなった土地、耕せなくなった広大な土地がある。この先、数十年(もしくは数百年)にわたって放棄しなければならない土地だ。そこの地権者と話し合って、タンク設置用の土地を取得することは可能なはずだ。ところが政府と東電は、その交渉すらしていないという。事故が終わっていないことの象徴のように見えるタンクをさっさと片付けてしまいたい、そのための海洋放出だ。

 「おいおい、本気かよ!」

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