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被災地で甦った戦火の記憶。「熊本に凱旋」日本離れた今も諦めずに…ハリルホジッチ氏単独インタビュー

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無念の途中解任から3年。

指揮官の胸には、今なお複雑な思いが残る。
日本メディアのインタビュー取材には、応じてこなかった。

なぜ今、閉ざしていた口を開くのか。
そこには、巨大地震から5年を迎える熊本への特別な思いがあった。

提供:アスリートプラス

「ああ、ここだと逆光か。じゃあ、どこでやるのがいいんだ」

そう言って、パソコンを手に部屋から部屋へと歩き回っている。
回線はつながったまま。だから、ウェブカメラ越しに家の中を案内されているようだった。

現地時間13日午後3時。フランス・パリの自宅。
サッカーモロッコ代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチさんが、オンラインでの取材に応じてくれた。

2018年。ワールドカップを前に、突如として日本代表監督を解任された。
マネジメント事務所によると、その際の会見を最後に、日本のメディアによる単独インタビュー取材に応じたことはないという。

解任を受け、記者会見を開くハリルホジッチさん=2018年4月(共同通信)

それが今回、特別に取材を受けてくれた。
それはやはり「熊本について語る」という内容だったからだろう。

モロッコから帰国したばかり。
すぐにフランス国内でプレーするモロッコ代表選手たちとの面談に取り掛かっていく予定だった。その多忙な代表監督のスケジュールに、急きょこの取材対応をねじ込んでくれた。

Zoomでの映りを少しでも良くするために―。
そう言って家の中を歩き回ったのも、この機会を大事に思ってくれているからだろう。

提供:アスリートプラス

被災地で蘇った「記憶」


「胸が痛みました。想像を絶するほどの破壊がされていたことに驚いた」

取材の詳細を伝えるまでもなく、5年前のことを振り返りだす。
2016年、熊本地震。最大震度7の激震が2度も襲った被災地を、ハリルホジッチさんは早々に訪問した。

宇城市。宇土市。甲佐町。そして益城町。
強行スケジュールで、県内を見て回った。気になる場所を通ると「ここも見たい」と言って、ハンドルを切らせた。

「益城町などは、完全に崩壊状態だった。避難所にもおじゃまをして、多くの方のお話を聞くこともできたが、その言葉には心が痛んだ。一言一言が重かった。私を見つめる視線も忘れられない」

提供:アスリートプラス

もっと、何か自分にできることはないか。
甲佐町では、日本サッカー協会のスタッフやJリーグのロアッソ熊本の選手たちを集め、サッカー教室を開催させた。オブザーバーの予定だったが、ほどなくスーツ姿でボールを蹴り出した。

なぜ、そこまで被災者に共感し、懸命に動いたのか。
ハリルホジッチさんは明かす。

「破壊された街並みを見て、ユーゴ内戦当時の記憶がフラッシュバックしました」

「あなたたちと同じ気持ちだ」


1992年。
現役を引退し、故郷に戻っていたハリルホジッチさんの自宅周辺に、ユーゴ内戦の戦火が及んだ。

宗教や民族が違うという理由で、昨日までの「ご近所さん」が銃を向けてきた。
その中で負傷もした。自宅も崩壊。フランスへの移住を余儀なくされた。

「内戦で、私はすべてを失いました。その悲しい思い出がよみがえった」

その記憶と、熊本の被災地の光景が重なった。
それでもハリルホジッチさんは目を背けず、被災者と向き合った。

自らも被災しながら復興支援に奔走する元日本代表FW・巻誠一郎にボールを託す=2016年5月(撮影:塩畑大輔)

「あなたたちと同じ気持ちだと伝えたかった。私も家が壊れ、恐怖も味わったから。その分、被災した方々のお話を聞いて、本当に胸は痛みましたが」

内戦を体験している自分だからこそ、という思いが芽生えた。
だから、熊本の人々に対して、ひとつの宣言をした。

「熊本の皆さんのために、我々は必ずワールドカップに出場する。そして成果を上げて、熊本に戻ってきます」

「約束のW杯」目前でまさかの…


そこまで振り返ったところで、ハリルホジッチさんは表情を曇らせた。

「運命が違う方向に動いて、約束をすべて守ることができなかったのは、今でもとても残念です」

ハリルホジッチさんはワールドカップ予選を戦った。
ベンチ前に立つスーツ姿の胸には常に、被災地訪問の合間にもらった「くまモン」のピンバッジがあった。熊本とともに戦っているつもりだった。

2017年8月。日本代表はワールドカップロシア大会への出場を決めた。
だが翌年の4月、本大会を目前に、ハリルホジッチさんは代表監督を解任された。

ワールドカップ出場決定後の監督解任。
日本代表では初めての例だった。

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